第七章「仮面を脱いで…」
春の始業式から、二ヶ月弱経った。
積木の学園生活に、何も問題等は起きなかった。
何時もの様に、人間嫌いな積木は、ソノ顔に仮面を掛けた。
明るく、ノリのいい女の子という仮面をかぶって生活した。
積木が本気で人と接していられるのは、加奈だけだった。
加奈は頭は悪いし、趣味も違うし、性格も違うけど、何故か
加奈だけは馬鹿だとは思わなかった。加奈だけなら普通に接していられる。
加奈のときは、普通に笑いあっている。他の生徒へとは違う。
本当に笑って、加奈のときは、積木はよく笑う女の子だった。
加奈のときだけ仮面をぬぐ。
いや、加奈の時だけじゃないかもしれない。
モウ一つの時間、積木は仮面を脱いでいる。実際に
喋らないし、他の生徒の前では積木は普通だろう。
だけど、自分で気づくのだ。私はコノ人を軽蔑していない、と。
国語の時間だ。
何故だろう?元から国語が好きだったからだろうか。
でも、ニッシー(西岡先生)のときは普通に軽蔑していた。
笑っているふりはしても、ずっと軽蔑していた。
でも、小野寺先生のときだけは違う。何故か、最初はわからなかったが、
時期に薄々気づいてきた。
小野寺先生は、軽蔑の仕様がないからだ。
馬鹿な言動はしない。
生徒に好かれようと必死に冗談を言ったりしない。
彼は、軽蔑の仕様がない。
積木は悔しかった。
自分に軽蔑をしない人間がモウ一人いるなんて…。
加奈のときもそうだった。
初めて小学校で会ったとき、積木は加奈を軽蔑できなかった。
他の生徒となんら変わらないのに。
だから積木は、必死で加奈を軽蔑しようと、ずっとみていた。
だからずっと一緒にいた。
だから友達になった。無二の親友に。加奈になら
なんでも言える。
それと同じに、彼の軽蔑点を探そうと、
国語の時間、ずっと小野寺先生をみていた。
真面目を鏡にしたような小野寺先生を。
生徒にもまだ嫌われていた。真面目だから。
特に、郁美、信二、啓祐が酷かった。
他の生徒は陰で文句を言っていただけだが、
アノ三人は、最低最悪に態度が悪い。
(勿論私語も多い。)
ソノ三人の中で一番態度が悪いのは郁美だ。
郁美は国語の時間だけ、教室の一番後ろに机をずらした。
小野寺先生に近づきたくないから、と言う。
小野寺先生は一回も注意しなかった。
小野寺先生は一回も授業に関係ないことを話さなかった。
でも、詩についてはたくさん語った。
特に、石川啄木が好きらしく、石川啄木については色々教えてくれた。
死んでから詩が売れたこと、元は小説家だったこと、
かなりの不運な人だったこと等を。
凄い博識な人だった。他にも、色々教えてくれた。
全て国語関係だったけど…。
勿論、アノ三人は、ハイハイ、と小さい声で、しかしハッキリと
小野寺先生に聞こえるように言った。
小野寺先生は
頭のいい人で、西岡先生より少し厳しいけど、(怒りはしないが。)
良い人だった。
郁美たちは、アイツ(小野寺先生)は自分が頭良いと
思っている、と言った。
確かにそうだ。積木もソレはわかっていた。
アノ人は多分、内心自分が博識で頭が良い人だと思っているだろう。
見ればわかる。
でも、ソレの何が悪いのだろうか。積木にはわからない。
だって、本当に小野寺先生は博識で頭の良い人だ。
認めなければならない事実だ。
第一、郁美たちだって自分が頭良いと思っているだろう。
勿論積木もそうだ。誰だってそうなんじゃないだろうか。
自分は凄く頭の悪い人だ、なんて思っている人はいないと思う。
ただ小野寺先生は、自分は頭が良いぞ、という
事を普通以上に強調しているのか、もしかしたら
オーラがでているのかもしれない。
そして、小野寺先生はいつもアノ引き攣っているのか
アレが精一杯の笑顔なのかわからない顔をよくした。
本日二回目投稿ですw
何時になったら
積木は○○○への恋へ気づくのやら…(・д・`)