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第十八章「接近」

放課後──。一階技術室。

積木はしおり作成に追われていた。


積木の学年は、七月に宿泊研修へ行くのだ。

それのしおり作成、所謂しおり班が積木、啓祐、加奈(隣のクラスだが

手伝いに来ている)、方淑の四人だ。

方淑は今年、中国から親の仕事の都合で転校してきた子だ。


方淑は同じ班だけあり、積木とも良く話す。
















       ─…終わり…─

かなり大雑把な出来だったが大体は終わり、帰ることにした。


しかし、方淑の構想表を小野寺先生に持っていき、

作文の説明を、方淑が受けないとならないのだ。

ソノ説明を方淑が聞きにいくのに、積木も加奈もついていくのだ。

(勿論、積木は自分から誘いに乗った。)









  ─職員室─

いつも小野寺先生が座っている机に先生は居ない。

積木と加奈は、小野寺先生の隣の机の前ちゃんに訊いてみた。

「前田先生、小野寺先生いませんか?」

「いるよ、今来るから。」前ちゃんはわざわざ顔をあげ、笑顔で言った。


加奈が笑い返す。


前ちゃんと暫く談笑していると、小野寺先生が手に一年生用の

ワークブックを持って、職員室に入ってきた。



「先生、燐(方淑の苗字)さんの作文のコトなんですが。」

積木はゆっくりと言う。


やはり緊張する…。


加奈がにやにや笑っている。

加奈、私が先生の事好きだって知ってるな…まぁ冗談で、だろうけど。



「ああ、そうだったね。じゃあ会議室まで行こうか。」

小野寺先生は、ワークブックを置きながら言う。


「先生、会議室は、今しおり作成の班が使っていますので…。」

積木は緊張しながら言う。

「そうなのか…、じゃあ近くの技術室まで行こう。」



技術室…今は多分誰も使っていないからいいか。

積木は加奈を職員室においていき、(前ちゃんとの話が続いている)

方淑と先生と三人で技術室へと向かった。





先生は手っ取り早く電気をつけ、方淑を椅子に座るよう促す。

「うーん……。」

小野寺先生は、方淑の構想表を見ながら唸る。


積木は前みたからわかる。「世界平和について」だ。

しかし、コレを中国語で書くのは難しいだろう。


「河嶋さんのも難しいけど…、燐さんのも難しいな…。」

先生は積木のほうを笑いながら見て、言う。

褒められているのかどうかわからない言い方に、

積木も人懐っこい笑みを見せる。心臓はバクバク(?)状態…。

「河嶋さん、そういや<小説を書きたい人の本>という本を読んでいたね。

小説家になりたいのか?」

「ええ…まぁ。」

積木は恥かしくて一瞬あった目を逸らし、頷いた。




そこで加奈が入ってくる。

加奈は積木の肩に抱きつき、方淑の構想表を見る。




「よし…、うーん、燐さん、これじゃあちょっと難しいだろうから、

別の事を書いてみたらどうかな?例えば…日本に来た感想とか?」

先生は方淑のほうに向き直って言う。








それからは方淑への説明が続く。

小野寺先生は、方淑一人だけに話しかけず、積木と加奈の事にも

笑いながら話しかけてきた。積木はだんだん、緊張感がなくなり、

(そこに加奈と方淑がいたからもあるだろう)普通とまではいかないが、

前よりはヨク話せるようになった。






作文の説明が終わると、先生は方淑に将来、どうしたいかを聞く。

方淑は英語が凄いでき、発音も英語の先生に負けないくらい良い。

近くの国、韓国の言葉も大体は話せる。

つまり、英語、日本、韓国、中国の四つの言葉を話せるのだ。

そのうえ、大学へ行ったらフランス語を学びたい、という。

小野寺先生もフランス語が少しはできるらしく、色々教えていた。

積木はそんな二人の会話が羨ましがりながらも、じっくりと聞いていた。





          …三十分後…

「よし、そろそろ帰るか。作文は夏休み明けの提出でいいから。」

先生は技術室の鍵を閉めながら方淑に言う。



「先生、正座、なんですか?」方淑はギクシャクした日本語で小野寺先生に

訊く。何故か方淑は、知り合った人に、絶対に正座を訊く。


「えー、正座かぁ…言ったら笑うから嫌だ。」先生は苦笑しながら言う。

「教えてくださいよ。」積木も加奈も訊く。

先生の正座、是非知りたい。

「…八月二十四、乙女座だよ…。」


三人とも笑う。加奈が、この顔で乙女座とは…と笑いながら言うのを

積木は横腹を殴って止める。


「乙女座のA型さ。」小野寺先生は恥かしそうに血液型を付け加える。

A型、か…。私はO型だから、同じOだったら良かったけど…まぁO型とA型は

あうらしいから良いか。(と言ってもO型は誰とでも合うのだが)




「ああ、鍵は私が戻るついでに返しておくよ。」先生はそういって、

積木の手の中にある、技術室の鍵を見た。積木は礼を述べ、ゆっくりと渡す。


一瞬、二人の手が重なる。暖かい手…積木は恥かしくなり、そのまま歩き出す。

「河嶋さん、小説書いたら見せてくれよ。斉藤さんはワークブックも漢字ノートも

作文も出してないから早くしなさい。」

小野寺先生は職員室の前まで来ると、積木と加奈を交互に見ながら言った。

積木は照れ、ハイ、と小さく頷き、加奈はえー、等と口走る。

「えーって…ちゃんと出せよ…。じゃあ、気をつけて帰れよ。」

小野寺先生は苦笑交じりに加奈を見、それから笑顔で手を上げ、

さよならを言う。



なんか良いなぁ…、こういうの。当然ながら積木も思う。








誕生日と正座と血液型がわかった、か……。

積木は加奈と方淑と別れてからの帰り道を歩きながら思った。


あとは年齢よねぇ……。今度また話せる機会があったら訊こう。





仲良く話せて良かったな……。お姉ちゃんの言うとおり面白いし、

話しやすいよね。








だが、積木は小野寺先生と話したことで、あることに気づかされた。


     ──もう、告白は絶対できない──

結構親しく話せたのだ。前までの全然話してない状態なら良いが、

今はもうだめだ。

これから告白なんて、恥かしくてできない。

それが悲しいのか、安心なのか、積木は深く溜息を吐いた。

<小説を書きたい人の本>

成美堂出版で本当にあります。

ためになると思いますので、

是非読んでみてくださいw

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