第十六章「やっぱりライバル?」
「そっか……。」月見も以前の積木と同じように、
表情が固まっていた。辛い沈黙が流れる。
しかし、その沈黙を破ったのは他でもない、月見だった。
「やっぱ姉妹だねー…。」
月見は積木の顔を見ずに、独り言の様に言った。
怒っているのだろうか……。
「…なんでわかったの?先生のコト、私が好きだって…。」
積木は静かに訊いた。また暫くの沈黙。
「うーん…やっぱさっきの態度、かな…。煩く言っていた口語辞典
忘れてくし、怒ってたし……。」
月見は顔を見せないまま言った。
「ごめんね……。」積木は申し訳ない気がしてきて、謝った。
「積木が謝ることじゃないよ…。」月見は静かに言う。
─暫くの沈黙─
「ライバルだね。」突然顔を上げて月見が言う。
は?また意味がわからない言葉が聞こえた。
「何が?」
「何がって…恋のよ。」月見は微笑しながら言う。
積木はまた固まった。というより言っていることがよくわからなかった。
「ちょっと…また固まっちゃった…。何アンタ、もしかして
私が手を引くとでも思ってたの?」月見は笑いながら訊く。
積木はイエス、という答えが頭に浮かんだ。
だって普通そうだろう。普通の姉なら私の事を気遣って、
私はもう三年だし……どうせ卒業するんだからいいや。
とか言ってくれるだろう。それなのにこの姉は…。
積木は呆れながらも笑った。
「何笑ってんのよー、気持ち悪い。」月見はそう言いながらも一緒に笑う。
──ライバル──か……。
私のライバルは先生の奥さんだけかと思ってたけど
他にもツワモノ(?)が居たんだ…。
積木はそう思ったけど、さっきの苛立ちは消えていた。
「ライバル……、ちょっといいかも…。」
積木はベッドに顔を伏せながら一人呟いた。