第十四章「思わぬライバル」
「あれぇ…。」
積木が姉の部屋に口語辞典を借りに行ったとき、
姉は机の上で何か探し物をしていた。
「何探してるの?」積木は何となく訊いた。
「うーんとねぇ…っ修学旅行の集合写真。」
姉の月見は探している中、顔を上げずに言った。
えっ……月見は本棚の中から口語辞典を探す手を止めた。
「ふぅーん…集合写真見つからないんだ…。」積木は怪しまれずに言う。
流石に貴方の写真は私のデスクマットの下にあります、なんて言えない。
「うん…大事な写真なのに…。」月見は残念そうに顔を上げた。
悪いことをした、と罪悪感が湧いてきたが、写真を返す気はなかった。
「そっか……でも、お姉ちゃんって写真大事にするほうじゃないジャン?
前、二年の宿泊研修のときの写真、落ちっぱなしだったよ。」
積木は早く忘れさせようと思い、言った。
「あの写真は大事なのよぉ……小野寺先生写ってるし…。」
は?積木は頭にハテナマークが浮かんだ。言った意味が最初
はわからなかった。
……今なんと?
「え…ちょ…なんで小野寺先生写ってるヤツが…?」
積木はからかう様に笑ったつもりだったが、顔がかなり引き攣っていた。
「副担だから一緒にくるんだよ?」月見は机用の椅子に腰掛けながら言った。
「いや…じゃなくて…。お姉ちゃん先生の事好きなの…?」積木は
引き攣った顔のまま言った。自分でも思う、カナリ勇気のある質問だと。
そして、ソレの答えも。
答えが聞きたくない……。
「うん、なんか良くない?小野寺先生。冷静で面白いトコもあって。」
月見はやや恥かしそうに言う。
パニック状態の積木は固まりながら言う。
「でも…先生って奥さんいるんじゃなかったっけ……?年齢の差だって…。」
自分で言ったソノ言葉が自分自身の心に深く刺さり、哀しかった。
「まーそうだけどね……でもなぁ…。」月見も哀しそうに顔を伏せた。
積木は口語辞典を借りるのも忘れ、そのまま無言で、呆然と姉の部屋を出た。
今回はちょっと短めです(σ´・∀・)σиё