第十三章「作文提出」
積木はその作文を早速書き始めた。
目標:今日までに終わらせる。
それが積木の今日の目標だった。
理由は勿論、小野寺先生に早くに提出し、
注目させるためだ。
作文四枚を学校で終わらせるのは他の生徒には
不可能なことだったかもしれないが、積木はもともと作文を書く才能があった。
一時間目の終わりの中休みも書いた。
数学は始まりの時間の四,五分先生にばれないように書いた。
二時間目の休み時間も、三時間目も、給食時間も……。
恋愛パワーって凄いな、と我ながら関心しながらも
早く仕上げ、提出するため猛スピードで書いた。
クラスの女生徒は、すごーい、今書いてるの?などと
積木の周りにわざわざ集まって言ってきた。
マジでうざい…、積木はクラスの生徒に笑顔をみせながらも、
心の中でそう呟いた。
昼休みの終わりごろ…、よし、作文、いける。
作文が丁度、四枚目にいったとき、啓祐が積木に話しかけてきた。
「ちょ、河嶋、今作文やってんの?」
うっざー、話しかけんなよ。小野寺先生の敵は私の敵なんだから…。
と思いながらも一応顔を上げた。
「そうだよー、すっごいでしょ。」
裕美架がまるで自分のことみたいに笑顔で啓祐に言う。
どうやら裕美架は啓祐に気があるらしい。
「へぇー……。」啓祐は裕美架のほうを見ずに
積木の作文と、ずっと作文を書きあさっている積木をみる。
積木は早く行けコールを心の中で繰り返した。
しかし、ソノ思いには反し、なおも啓祐は積木の作文と顔を交互に見る。
おっし!!終わったぁー!積木は五時間目の家庭科の時間を
利用して終わらせた。
積木は見直しをし、帰り際、加奈に、職員室行っていい?
と訊こうとしたが、やめた。なんか会うのが恥かしくなってきたのだ。
作文に自信はあるが、もしかしたら誤字があるかもしれないし、
明日どうせ二時限目に国語があるからだ。
次の日
一時限目の英語の後の国語。
積木はすぐに作文を提出した。
すると、皆が一斉に積木と先生のほうをみた。
「早ーい!積木ー。」歩夢が積木に言った。皆も驚く。
アンタ達とは違うんだから…といつもは優越感に
つかうのだが、今は小野寺先生がいるという事で
胸が高鳴り、それどころじゃなかった。
「早いなー。」小野寺先生は少し驚いたような顔をし、
作文を受け取った。
ソノ作文が全校で一番早く提出したのだ、と
積木に教えてくれたのは、小野寺先生ではなく、
担任の田宮先生だった。普通は教科担任がその場でいうのだが、
小野寺先生のときは違った。
そこにまた積木は思いが引かれた。
一々生徒に直接言わず、後で生徒の担任に言ってくれたのが、
積木には嬉しかったのだ。