第十一部「会いたい思い」
朝──。
積木は早足で学校へと向かった。
昨日は小野寺先生の事を考えたり
集合写真みたりでなかなか眠れなかったのだ。
睡眠時間、五時間─。やっばいかなぁ…。
クラスの平均睡眠時間って何時間なんだろ。
積木はそんなくだらない事を考えながらも
遅刻しないため、早足で学校へ向かった。
「おっはよー積木っ。遅かったねー。」
フゥ…ホンット此処来るたびに溜息がでる。
また仮面を被らなくちゃならないのか…。
「おはよー裕美架!昨日ちょっと寝坊しちゃって…。」
積木は指定鞄を机に置きながら笑った。
積木はチラッと教室の左側に位置する黒板をみた。
今日は国語は無いか──。
昨日の夜何回も時間割を確認して嘆いたので、
それくらいわかっていたが、
モウ一度確認すると昨日よりショックだった。
国語、やりたかったなぁ──。
小野寺先生に会いたかった。
積木は姉の月見が昨日言っていた事がグルグルと頭に回った。
小野寺先生が一番好きなクラスって、三年一組だろうな──。
恐らく一番嫌いなのが此処、二年一組…。
最低最悪。積木は馬鹿騒ぎしている啓祐たちを強く睨んだ。
ハァァ…、また始まったよ、脱線。
今は二時間目の家庭科。
佐武先生はコノクラスでは中の上くらいの人気で、
結構皆と話す。
だからその分脱線が多い。
マジうざい…。脱線させんなよ糞先公が…。
つまんない…。
あーあ…国語やりたいなぁ…。
国語なら脱線しないのに…。
国語、やりたいやりたいやりたい──。
積木は家庭科のノートに国語、と書き、まるで囲んだ。
今日は国語が無いなんて…、明日はあるけど…。
つーか大事な教科なんだから毎日やれよなぁ…。
積木がクラスでのストレスをふっとばすのは国語しかない。
小野寺先生の顔を見ていたい──。
積木はもう、自分が小野寺先生を求めていることに気づいていた。
それも昨日の夜に。
いや実際は、もっと前からかもしれない。
確実に気づいたときは恥かしく思ったけど、もう自分の中では認めつつある。
年齢何歳違うんだ、とツッコミたかったけど、積木はもともと
自分より年上がタイプだってわかっていたから仕様が無い。
少なくとも年齢三十上にしか目が向かないのだ。
同学年なんて絶対百パー無理。
家庭科が終わり、数学に入った。
暇──。また話の脱線に入った。
もとから大嫌いな数学なのに、コレ以上嫌いにさせんでくれ、
前ちゃん…。積木はノートに絵を書きながら思った。
あーあ…国語やりたい………。
こんな馬鹿共と数学勉強してどうなるのさ…。
それだったら小野寺先生に一人で国語をずっと教わっていたほうが良いよ…。
そういや小野寺先生って、生徒数少ない学校にいたんだっけ…。
いいなぁ…。人数少ないと話しやすくなるからいいよね…。
私も人数の少ない学校が良かったな…。
小野寺先生が居ないと意味ないけど。
「大好き」──。
積木は数学のノートにそう書いた。
誰に当てたかは言うまでも無い。
ヤバイ…。考えるだけでも恥かしい…。
小野寺先生と話がしたいなぁ…。
どんな人なんだろ、先生って。
そーいや…奥さんいるんだっけ…。
最初の授業のとき、いるって言ってたような…。
どんな奥さんなんだろ…。
優しいのかな──。
ご飯とか作ってあげるんだろうな…。
話したりも…。
小野寺先生も、アノ笑顔で……。
うん、ムカツク。
わかってる、これが嫉妬だって。
嫉妬って醜い感情っていわれるけど、
本当にそうなのかなぁ…。
小野寺先生、今何処で授業してるんだろう……。
─積木が空き時間に考えることは小野寺先生の事ばかりだった─
年齢の差や奥さんもいて…、生徒と先生で…
叶わない恋だってわかってるけど、好きになったんだから仕様が無い。
これが積木の儚い初恋だった──。