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とある朝に



生きていると、本物の天才と出会うことがある。



圧倒的な差を、越えられない壁を、大いなる高みを、見せつけられるときがある。そのとき人間が感じるのは、嫉妬でも、羨望でもなく―――諦めだ。「私はこの人には勝てない」、「私はこうはなれない」、と。まるで今までの意思や自信が嘘だったかのように、夢は崩れ落ちることができるのだ。



そう、夢は簡単に砕ける。簡単に諦められるものを夢とは言わない、と言う人もいるがそんなことはない。外からの抑圧や家庭の事情、「本物」を見てしまう――それだけのことで人は夢を捨てられる。




だが、夢を追う人は美しい。美しいし、眩しいし、眩しすぎて、私は、




私は、








そこまで書くと、みなみはノートパソコンを閉じた。ため息をつき、首をぐるりと回す。


「・・・文章が支離滅裂になっちゃった」


言い訳を呟くことも忘れない。



ふと彼女が窓の外を見ると、そこには澄んだ青い空といつまでも咲かない桜がある。いや、もしかしたら知らないうちに咲いて散ってしまったのかもしれない。


そのついでに襖にかかっているブレザーの制服と、真新しい時計にも目を走らせる。質素な部屋に似合わない、デジタルの電波時計だ。


5/9 Mon AM10:24


みなみは、ご丁寧に日付と曜日、ついでに午前午後まで教えてくれるこの時計が嫌いだった。「:」がチカチカするたびに、彼女がここにいてはいけないことを警告されているように感じた。本来ここにいるべきではないのは、自分が痛いほどわかっている。



佐々木原みなみは不登校だ。




「・・・バイト行くかな」


一人の部屋にまた呟きが響く。みなみは不登校だが、引きこもりではないのだ。

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