騎兵廃止論
さて、東国は陸軍を担当する国家ではあるが、その成り立ちは前にも触れたようにサンクロウ帝国がユニマル公国の攻撃を受けて瓦解し、強制的に編入されたいわば力による統治であった。そのため、不穏分子も多い―
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「東国では、どのような戦いをしてきたのですか?」
この日、リュカはリゼ殿下の御側に仕えていた。久々に、パンチ陸相が尋ねてきて、親子水いらず…と思ったら、リゼはリュカのことを離そうとしないのだ。
「いままでは、こう馬に乗ってだな。ビューンと矢を放つ。矢は軽いのものがいいな。ジャングルに敵が茂んでいるかもしれないから、所々馬を降りて行って密林で戦う。その時には、サバイバルナイフがいい。万が一迷ったら、密林でサバイバルだ。」
「では、平野部で敵に遭遇したら?」
「それは、騎兵がいいな。騎兵を用いて、敵を圧倒する。その点、北国の馬は最強だ。」
「では、この前のような。渓谷では?」
とその時、閣議が召集される時間であった。
「おっと、もうこの時間だ。婿殿、向かうとするか。」
「ええ。そうですね。」とリュカ。
「ええー。もう行っちゃうんですか?」
「これが仕事だから、仕方ないよ。」「そうだ。リュカ殿、今日の閣議は何が議題だ?」
「特に何も入ってませんが…?」
「そうか。」
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しかし、閣議では南国のコーラル宰相が重大な発言をした。「この度、わが国では海外の新兵器である火薬の発明に成功した。」というのだ。「これを機に、砲兵部隊の創設を願いたい。ついては、陸軍にも協力が必要だ。ついては、軍馬によるドクトリンを完全撤廃すべし。」とのことだった。
「いま、軍馬を撤廃せよ、と?」パンチは驚く。
「その通り。時代の趨勢だ。」とコーラルは短く答える。
「お待ちください。」とパンチの隣にいた武官が発言する。その男はよく見ると、北国風の被り物をしている。
「東国の軍馬は、単に軍馬ではありません。北国と東国の協力の結晶の賜物なのです。」
「友情の結晶は美しい。しかし、火薬が実用化されつつある今、軍制の改革は急務だ。」
「火薬ができてすぐに、軍馬が不要になるとはおもえません。」武官はなおも食い下がる。「それに、北国と東国の予算が、削られるのは戴けません。」
「では、せめて、軍馬の改革はいかがかな?火薬に耐えられる重装騎兵への転換をお願いしたい。」とコーラル。
「しかし、東国では、いまだに軽騎兵を用います。それは、森林地帯では使い勝手が良いからです。火器を軽量化すれば、必ずや相性が良くなるはずです。」
「それは、理想論にすぎぬ!」とコーラルは一喝した。
「ですが…」と武官はまたもや食い下がるが、その時パンチが武官の肩を叩いた。「君、やめたまえ。すまない。コーラル宰相、この者にはきつく叱っておく。」
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「しかし、機動力の弱い馬では心もとない。」と、閣議の後で武官がぼやいている。
「君の言う通りだ。しかし、南国は先の戦で少し高揚気分なのだろう。」とパンチ。
これを機にカトゥル帝国では、疑心暗鬼が広まった。「此度の戦争計画の見直しは、南国が軍を完全に掌握するための策略だ。」「いや、違う。北国のチンキムが裏で糸を引いている。」「砲兵導入は、王家が軍の主導を奪うためだ。」というのだ。
また、「軽騎兵こそ東国の魂。」「火器は臆病者の武器だ。」とする反発も強まった。




