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執着ヤンデレ王太子から逃げられないので、調教することにしました

作者: とととゆゆ
掲載日:2026/02/11

 2年に1度しか顔を合わせないのに、なぜか執着されている。


0歳「まぁロッドったら、ミリアが一緒だと泣き止むのね」

2歳「ロッドは、ミリアにべったりね。だめよ、もう帰るから、こら、離れなさいっ!」

4歳「ミリア、結婚しよう」「ロッドちゃま、結婚は大人じゃないとできないのよ?」

6歳「ミリア、結婚できないけど婚約ならできるよね?」「ロッド様、自分たちでは決められないのよ?」

8歳「ミリア、婚約を前提として付き合ってもらえないかな?」「ロッド様は王太子だから無理よ。私は子爵令嬢だもの」

10歳「ミリア、養子先を探すよ。伯爵か侯爵の養子になれば問題ないだろう?」「私、両親と離れたくないから養子にはなりたくないの」

12歳「ミリア、君の家を子爵から伯爵に陞爵させれば問題よね!」「何の功績もないのに陞爵できるわけないわよ」


 と、そこで唐突に前世を思い出した。

 子爵から伯爵に陞爵し、伯爵令嬢となったミリアが王太子ロッドと結婚する物語。

 私はその主人公、ミリアに転生したんだ……。

「やばい、まずい、どう考えても、逃げないと……!」

 この物語は結婚して終わりではない。続編が存在するのだ。

 王太子ロッドを誘惑して無理やり結婚したミリアを悪女として描いた物語が。

 ミリアの言いなりのロッドを批判する貴族の派閥ができて、国が乱れていく。

 内乱状態となった我が国に帝国軍が侵攻してきてあっという間に滅んでしまうのだ。

 我が国、スルサール王国は400年の歴史がある大陸で最大の国だったというのに。

 続編の主人公はミリアの策略で免罪をかけられ追放されたこの国の元公爵令嬢。いわゆる悪役令嬢側が主役の物語。

 帝国軍にその公爵令嬢が参謀として参加している。

 この国の内情をよく知っている者が敵に回ったこと、この国でやりたい放題だったミリアに恨みを持っていた者が多くいて帝国軍と内通していたこと……。

 あっけなくスルサール王国は400年の歴史に幕を閉じた。もちろん、ミリアもロッドも家族もざまぁにふさわしい最後を迎える。


 いや、なんでこのタイミングで前世を思い出したかと言うと、子爵令嬢だったミリアは王太子ロッドと結婚するために裏で手を回して子爵から伯爵に陞爵させたというのがあったからだよ。

 本来陞爵って、爵位が上がるにはそれなりの皆が納得するだけの功績がなければならない。

 戦乱の時代ならば戦果をあげるのが早い。平和な時代ならば、新しい技術を開発し暮らしを豊かにするとか。

 領地から銀や金の鉱山が見つかるというのもある。あと外交により利益をもたらしたとか。

 小説では、確か……うちの隣の男爵家の領地が立ち行かなくなり爵位返上、領地はうちに吸収合併。そして領地が大きくなったことで子爵では都合が悪いだろうということで伯爵へ陞爵。棚ぼた陞爵だった。

 続編では男爵家は陥れられたと暴かれていた。ミリアが裏で暗躍したことになってたけども。

 真実は私に執着した王太子ロッドが全部裏で手を回していたんじゃないの?

 ねぇ、そうじゃない?

 ヤバイ、マズイ。

「どうしました?ミリアお嬢様。ロッド殿下が帰ってからふさぎ込んでおいでですが、お別れが辛かったのですか?」

 布団にくるまっている私に、侍女のマールが見当違いの声をかけてきた。

「……2年に一度しかお会いできないのは寂しいでしょう。次は14歳ですね」

 そう、2年に一度しか会わないのだ。それは辛いのではなく、幸いだ。

 っていうか、なんで子爵家に王太子が来るかと言うと、王妃様と母が学生時代の親友だからだ。王妃という立場上、母とは普段は手紙のやり取りしかできないものの、2年に一度3日間だけ「湯治」という名目で子爵家に滞在する。息子のロッド殿下を連れて。

 つまり、0歳から12歳の今までロッド殿下と顔を合わせたのはわずか21日。三週間だけだ。

 なぜこんなに執着されているのか。

 これが、物語の強制力?

「でも、15歳になればお嬢様も王都にある学園へ通うようになるんですよ。毎日会えるようになりますよ」

 何も知らないマールが恐ろしいことを言う。

 やばいやばいやばい。

 15歳になったら本格的に小説が始まってしまうじゃないの!

 18歳になるまではミリアが主人公の夢小説。

 18歳からはユメアが悪人側になる断罪小説の始まりよー!いや、断罪小説だって元をただせば15歳の学園生活が原因となるんだから。

 逃げないと。

 破滅だ、破滅。私だけが破滅するだけならいい。

 いや、よくないけど、私がロッドと結婚したら、何か知らないけど国が亡ぶんだよ。

 冗談じゃないよ。

 逃げる。うん、逃げてやる!

 大丈夫。物語はまだ始まっていない。

 と、いうわけで。


「学園に行かなきゃいいのよ。まずはね、それで物語からずれるわよね」

 うんうん。

「ああ、完璧だわ。うふ」

 校舎から見下ろす景色に満足げに頷く。

「今頃、14歳の……2年に一度の3日間が子爵家で行われてるのかなぁ~」

 王妃様の湯治。まぁ、湯治とはいえ、王妃様と母との女子会だけどね。

 だから。

「私が家にいなくたって何にも問題ないよ」

 何でいないんだとロッドが言ったってしらなぁい。湯治に私は不要でしょ?会いに来るわけじゃないんだもん。

 で、子爵家にいない私がどこにいるのかと言うと……。。

「はぁー、帝国の空気はなんでこんなにおいしいのかしら」

 そう。私は今、スルサール王国を亡ぼす予定の帝国にいます。

 留学してきたのよね。帝国の学校は14歳から入学して、17歳で卒業。

 卒業したら帝国の城で働くつもり。文官になれたらラッキーだけど、このさい下女でもなんでもいい。

 滅ぼす側の帝国にいれば安全だと思わない?

 ……ってまぁ、戦争の原因が王国の内乱で、その内乱の原因が私で、私が原因になったのはロッドと結婚したからで。

 その原因がなくなれば内乱も戦争も起きなくて滅ぼす側とか滅ぼさっる側とかも関係ないけどねぇ。

「はぁー、本当、なんで帝国の空気ってこんなにおいしいのかしら!」

 まぁ、理由は明白よ。ストレスから解放されたんだもの。おいしくも感じるわ。

「ミリアの領地は、硫黄の匂いが漂っているからな、空気が美味しく感じるのはそのせいじゃないか?」

 今、私は故郷のスルサール王国を離れ、帝国王都にある貴族が通う学園にいます。入学式を終え、講堂から1年の教室へ移動する途中の廊下の窓から外を眺めていました。

「我が国も王都は同じように、いや、ここ以上に空気は美味しいよ」

 あれ?おかしいな。ここにいるはずがない人の声が聞こえるんだけど……。

「ミリア、でも僕はね、硫黄の匂いが好きなんだ。あの匂いを嗅ぐと君のことを思い出すから。いや思い出すもなにも片時もわすれないんだけど」

 えーっと、耳元でささやくのやめてくれます……。

 諦めて、振り返ると輝かんばかりの笑顔のロッドがいた。

 2年前の12歳の時からは見違えるほど身長が伸び、肩幅も広くなっている。もう子供とは言えない体格。でもまだ大人にはなり切っていない体格。

「硫黄の匂いは、腐った卵の匂いみたいだって言うだろう?だからね、腐った卵を部屋に置いて寝たことがあるんだ」

 は?

 いやいや、何してんの!っていうか、一国の王太子が腐った卵をどこから手に入れたの!

「どうなったと思う?」

 にこりと笑うロッド。

「異臭がすると大騒ぎになったのでは?」

 王宮で腐敗臭なんてあってはならないことでしょう。

「詳しくは教えてあげられないんだけどね……すごい夢を見たんだ」

 夢?

 ロッドがその夢を思い出したのか顔を赤くする。

 あ、なんかやばそう。

「教えるわけにはいかないんだけれど、ミリアが出てきて」

 教えられないなら言わなくていい。絶対ヤバイやつだって、その赤くなってにやけた顏で分かるからっ!

「それはもう幸福な夢で。硫黄の匂いを嗅ぎながら眠っただけであんなことになるなんて……」

「硫黄じゃなくて腐った卵の匂いでしょう?」

「王宮では異臭騒ぎになって、もう二度と腐った卵を手に入れることはできなかったけど、ここならまた手に入るかな……」

 腐った卵を手に入れてどうするんだよっ!

「そうだ、卵を買って腐らせればいいのか!」

 違う、そうじゃない!

「ロッド殿下、お願いですから、帝国に迷惑をかけるようなことはしないでください」

 戦争になったらどうするんですか!せっかく私が国崩壊の運命を防ごうとしてるのに!

「というより殿下はどうしてここに?今頃子爵領で王妃様と湯治をしていらっしゃるのでは?」

「愚問だね」

 ロッドが私のピンクブロンドの髪を一房掴み上げて指に絡めだした。

 愚問……確かにそうだよね。目の前にいるロッドは、帝国の学園の制服を着ている。どう考えても、学園に通うためにここにいるのは間違いない。

 でもね、間違いであってほしいのよ。

「ミリアが留学したから、僕も来ちゃった」

 来ちゃった(ハート)じゃないよ!

「ミリアありがとうね」

 何のお礼?

「うちの国15歳からしか学園がないでしょう?まだあと1年はミリアと毎日会えないんだって思ってたら、14歳から通える帝国の学園に留学するなんて。これで1年前倒しで一緒に学園に通えるね!」

 ね!じゃない。

 私はロッドと一緒に学園に通うために帝国に留学してきたんじゃないのよ?

 ロッドから逃げるために……。

「1年間留学したら、国に戻ってまた1年生からやり直そうね」

 ロッドが私の手を取った。

 いや、一人で帰ってくれます?私は帝国の学園を卒業して帝国で就職して、国には物語が終わる25歳過ぎてから戻るから……。

 と、口に出して言うこともできずにあいまいに笑ってみた。

「もし、帰らないなんて……言うなら」

 ぎくり。

「帝国の学園生活が楽しくて帰りたくないなんて言わないよね?」

 なるほど、そういう理由で帰らないのもありか。お友達と卒業したいの。とか、

「帝国の学園が楽しくなくなれば帰ってくれるのかな?とかいっそ帝国の学園がなくなればいいのにとかいろいろ考えちゃうよ……」

 ロッドのつぶやきに背筋が寒くなる。

 やる気だ……ロッドは、私が国に戻るようにあらゆる手段を使う気だ……!

 学園をつぶすようなことしたら、結局戦争だよ!しかも私が理由でとされちゃうじゃん。

「そう、いろいろ考えたと言えばさ、僕、思ったんだよね」

 金色の髪が窓から吹きこんできた風で揺れる。光を反射してきらきらと輝いている。

 美少年からイケメンへと変わろうとしている整った顔をしたロッド。

 腹黒系の笑みをときどき浮かべるけれど、いつ前も少年のような純粋な心も忘れないという矛盾したキャラクターとして描かれていたロッド。

 まぁ、いわゆるヤンデレだよ。少年のように時には欲望のままに壊れたこともする。そのくせ誰よりも頭が良くて切れもの。

 権力と知力と欲望と。欲望の矛先が向いたのがミリアだった。ミリアを愛するがゆえにちょっと行き過ぎた独占欲があったくらいの気持ちで小説を読んでいたけれど、現実はがちがちの執着じゃん。

「即位すればさ、僕とミリアのこと、誰も口出しできないんじゃないかってさ」

 え?それ……誰の言葉も耳を貸さずに独裁。私のことを排除するようなことを言った臣下は処分。

 不満がたまった貴族たちが派閥を作り内乱……。

「だ、だ、だ、だめよロッド殿下。駄目なんだからね?」

 止めないと。

「何がだめ?即位を早めてもらうように父上にお願いすることが?」

「お、お願いが却下されたらどうするの?」

「んー、どうしよう。父上がいなくなれば自動的に即位が早まるよね!」

 ひぃー、さらりと暗殺計画めいたことを口にしないでよっ!

「だめよ、だめよ、陛下がいらっしゃらなくなったら、仕事を全部ロッド殿下がしなくちゃならなくなるのよ?とても忙しくなってしまうわよ?王太子としての仕事だって十分忙しくしていらっしゃるのに!」

 ロッドがにこりとニコニコ笑顔だ。

「そっか、ミリアと過ごす時間が少なくなるのは困るなぁ。うん。父上にはなるべく長く働いてもらおう」

 ほっと息を吐きだす。

 このままロッドが即位しなければ、内乱も起きなくて続編の未来が変わるのでは?と思ったけれど……。

 確か私とロッドが学園を卒業して結婚した翌年、19歳になるころには陛下は病に倒れ、亡くなりはしないものの政務が行えなくなりロッドが即位したんだ。……それもまた、私が毒を盛ったみたいなことにされてたな。小説では。

 私、そんなことしないよぉ!

 ロッドならしそうだ……とちょっと思ったのは内緒。

 いや、今はまだ何もしてないはずだし、私なら止められるんじゃない?

 私の言葉で……もしかして……ロッドの愚行が止められる?

「だけど、どうしてミリアは僕に内緒で留学を決めたの?」

 逃げるためなのにわざわざ言うわけないでしょ!

「もしかして、僕から逃げるためじゃないよね?」

「……に、逃げるって、ちょっと2年に1度会う日がちょうど入学式で会えなかっただけだよね?他に何も約束とか、してないし?」

 ロッドが首を傾げた。

 ……うん、サラサラな前髪がちょこっと目に落ちる感じとかめちゃくちゃ色気があるな。

「そっか。確かに。当たり前に会えると思っていたから、約束してないや。……じゃあ、約束したら、15歳になったら国に帰って学園に通うんよね」

 約束?したっけ?

「毎日学園で一緒にお昼ご飯食べようねって約束したよね?」

 あ……。

 学園に通ったらあれしようこれしようの話、前世を思い出して呆然としてるときにいろいろロッドがしていたような気がする。

 え?私、一体どれだけの話を右耳から左耳に聞き流し、適当にうんうん返事してたんだろう?

 それが、約束になってるの?

 覚えてないんだけど……。

「と、図書館で、本棚に隠れて二人で内緒話したいって、約束も覚えてる?」

 ロッドが声を潜めた。

「は?」

 なんでわざわざ内緒話をするのに、図書館で本棚に隠れてしないといけないわけ?

「そんな約束してないよね?」

「え?覚えてないの?」

 全部覚えてないです。

「学園が舞台の本に出てきたシーンの真似したいって言ったら、そうねって言ったじゃないか!」

「そうねは約束じゃないわよね?というより、その本がどの本か教えてもらった記憶がないのだけれど、それはあとでこの本もこの本もともって来られたらずるいでしょう?」

 ロッドがうっと言葉に詰まった。記憶にないけれどやはりそうか。本を間に挟んで会話した記憶はないから。架空の本の名前でも出して、学園でやりたい夢を目いっぱい書きこんだ本を作り上げてこれだと言い出すことくらいしそうだもんな……。図星だったのかな。

「う、う……。分かったよ。僕だって、ちゃんと父上が母上の望みをかなえてあげるように、ミリアの願いも聞くよ」

 うん?

「陛下が王妃様の望みをかなえている?」

「うん。ちゃんと2年に一度湯治に行ってるよね?本当は父上は1日たりとも母上と離れたくなくて、ずっと一緒にいようって約束もしたんだけれど。母上のどうしてもという願いで2年に1度は湯治に行ってるんだ。

 え?初耳なんだけど……。陛下も束縛系なの?

「僕が、2年に1度と言わず毎年ミリアに会いに……いや、母上を湯治に行かせてくださいって頼んでも父上はこれ以上母上と離れるくらいなら湯治場がなくなれば……とかもう二度と城から出られないように……とかぶつぶつつぶやきだしたからあきらめたんだ」

 まじもんだ。父息子、代々受け継がれるヤンデレ束縛執着家系……。なにそれ、怖い。知りたくなかった。

 でも、それで国は続いてるってことでしょ?割と平和でよい国だよね。ってことは……ヤンデレ束縛執着陛下相手に王妃様が上手く立ち回っている?

 例え私が結婚しても国が亡ぶとは決まっていない?

 私の罪だとされていたことを一つずつつぶして行けば。まだ物語が始まる15歳まで1年ある。続編開始までは4年もある。

 一つ目の不満は子爵令嬢が王妃になったことだったはずだ。

 ロッドには次々に縁談が舞い込む。当然公爵令嬢や侯爵令嬢といった高位貴族からも。

 相手にされなかった貴族に不満がたまるんだ。そして帝国と通じる。その筆頭がシャーナル公爵家。

 シャーナル公爵家を私の味方につければ潮目が変わる?いっそ、シャーナル公爵家の養女に入って嫁げば……。いや、それはそれで問題が起きそうだな。

 何はともあれ、ロッドから逃げる、結婚を回避する以外にも国を救う方法があるかもしれない……。

 ってことはよ。

「ミリア、僕から逃げたりしないよね?」

 覚悟を決めよう。

 だって、逃げられる気がしないんだもの。

 どんな理由で私に執着しているのか分からないけれど……。地の果てまで追いかけてくるに違いない。

「ロッド殿下、逃げたくなりようなことはしないですよね?」

 学園の廊下。教室に向かう人たち。

 殿下は私の腕を引いて、階段の裏の人目につかない空間に引き込んだ。

「もちろんだよ……だって、僕はミリアに嫌われるようなことはしたくないんだから」

 ぎゅっと抱きしめられた。

「ちょっと、殿下、や、やめてくださいっ!逃げますよ!」

 殿下が私の体をいったん離した。

「逃げるなら……逃げられないように閉じ込めちゃおうかな……」

 ぼそりとつぶやいた後、冗談だよと笑った。

 ふん。冗談じゃないでしょう。だけど、私は逃げないって覚悟を決めた。

「閉じ込めてもいいですけど?」

 驚いたような顔をするロッド。

 指を三つ立てる。

「3日自由を奪われたら、4日目には死ぬわ。それは覚えておいて」

 これが私の覚悟だ。ロッドの暴走を命を懸けて止める。

「え?」

 ロッドの目から涙が落ちた。

「本気よ。閉じ込めたければ閉じ込めればいい。私は逃げも隠れもしない。ただ……ロッド、あなたを捨てて死を選ぶだけ」

「いやだよ、いやだ、ミリアが死ぬなんて……僕は生きていけない……」

 ロッドの私への執着がどれだけのものか分からない。思うようにならなければいっそ殺してしまおうとまで思うほど病んだものなのか。

「なら、一緒に生きて」

 ロッドの頬を両手ではさんで、顔を覗き込んだ。

「ロッド……はぁ、尊い、神、顔面国宝、生まれてきてありがとう、無理、しんどい……」

 はぁ、はぁ、はぁ……。

 思わず漏れた本音。

 ロッドの顏が真っ赤になった。唐突な私の言葉に驚き涙が止まったようだ。

 ぱっと手を離して、逃げるように階段裏から飛び出す。

 ああ、もう!前世で推しだったんだよ、ロッド!

 推しには幸せになってほしいじゃん!ミリアと結婚したら破滅するなら結婚するわけにいかないじゃん!

 それに、推しは推しで、恋愛感情とかとは違うんだから。必要以上に近い距離にいちゃだめなんだから!

 でも、覚悟を決める。

 推しの幸せにのために、誰にも文句を言われない女になって、大手を振って結婚してやる!

 それから、ロッドを後世に名を残すような名君に育ててやるんだから!

 推しの幸せに私自信が邪魔になったらいくらだって排除するし。命がけで推してやるんだからっ!


 入学式のあとのオリエンテーションが終わるとすぐにロッドにつかまった。

 手を握れら……恋人つなぎで。

 推しの手を振り払って逃げ出すこともできずに、そのまま図書室の本棚の陰に連れ込まれた。

 ちょっ、内緒をここでしたいとか言ってたけど……聞いてないって。

 壁ドンしたあとにぎゅっと抱きしめられて耳元で内緒話するとかっ!

「ねぇ、ミリアあの、一緒に生きてって言葉……あれ、プロポーズ?」

「離れて、ロッド様」

 ロッドは私を抱きしめたまま、首筋に唇を押し付けた。

「ちょっ何するのよっ」

 ロッドは私の背に回した手の力を緩めるどころがさらに力を籠める。

「離してって言ってるでしょう!」

「だって、ミリアが言ったんだよね?3日自由を奪われたら、4日目に死ぬって」

 ロッドが顔を離して私の顔を見て笑った。

 近い、近い近いっ!

 体はがっつり密着してるし、鼻の頭がくっつきそうな距離。

 ひぃっ。本当に心臓に悪くて死にそうだから、無理、無理!

「ってことは、2日までは自由を奪って、この手の中に拘束してもいいってことだよね?」

 横向いて、顔面凶器から逃れてるも、がっちり抱きしめられていて体の自由が奪われたままだ。

「死ぬから、離れて」

 ちょっとだけ低い声が出た。

「どうして?約束が違うよ。……そんなこと言うなら、薬飲ませて意識を飛ばしちゃうよ?そうすれば自分で死ぬこともできなくなるから」

 ひぃっ。怖い怖い。

 びくりと体を震わせると、ロッドが手を離した。

「冗談だよ?」

 笑ってるけど絶対本気だ。

「死ぬ理由を聞きたい?今度は自分の意思で死ぬわけじゃないの。死ぬのは私の名誉」

 だけど、私はヤンデレを推した女。自分がその対象になると怖いけど、そういう人だというのを知っているし、愛する人が別の人を好きにならない限りはそこまでひどいことはしない……たぶん。

「どういうこと?」

「私は子爵令嬢でロッド殿下は王太子だから。婚約者でもないのにイチャイチャしていたら、悪く言われるのは私の方だわ」

「イチャイチャ」

 ロッド殿下の耳が赤い。

「私が王太子を誘惑したと噂されるのよ」

「ミリアが僕を誘惑」

 ロッドの頬も染まる。

 こいつ、まったく聞いてない。

「子爵令嬢ごときが王太子と結婚できるわけがない、遊ばれて捨てられるのが落ちだ。俺ならちゃんと最後まで面倒見てやるぞ?どうだ?と男に声をかけられてもいいというのですか?」

 ロッドの目に殺意が浮かんだ。

「殺す」

「いやちょっと、待って、誰を殺すの!」

「ミリアに声をかけた男全員殺す」

 バカなの。いや、こういうバカなんだけど。実際はっ全員は殺さないだけの理性があるのも知ってる。ただ脅す。魂が抜けるほど脅すだけだけど。いやいや、それもどうなんだ!私のこと好きすぎるだろう!そんなところも推せるんだけど!って惚気じゃないよ。

「私が地位に目がくらんで男に言い寄る女みたいに思われても平気なの?ううん違う、私は、そう皆に思われて平気だと思ってるの?ロッド様は私の心を守ろうとはしてくれないの?」

「ミリアのことは僕が守るよ」

「だから、守るために、イチャイチャしないでって言っているの」

 首を傾げるロッド。

「なんで、理解できないって顏をするの?」

「いや、ちょっと、理解できなくて……僕は、ミリアと、イチャイチャできない……?」

「そうよ。婚約するまではできません。……でも、じゃあすぐに婚約しよう!とか言うのは無理だから」

 ロッドが分かりやすくハッと気づいた顏からしゅんっと落ち込む顏になった。

「いつ婚約してもいいの?」

 ふぅと息を吐きだしてから、指を2本立てて見せた。

「子爵令嬢の私と王太子のロッド様が誰にも文句を言われず、私の名誉も傷つかずロッド様も非難されない方法が2つあります」

 ……なんとかこの方法で内乱が防げたらいい。

 私やロッドに対する不満が国内で高まらなければ内乱も起きないはずなのだ。

「一つは、ロッド様に頑張ってもらわなければならないんですけれど……」

 ロッドが胸を張る。

「ミリアと結婚するためならなんだってするさ。邪魔な人間を消せばいい?ああ、それとも実はミリアは公爵の隠し子だったとかにする?」

「何言ってるんですか!誰も消さない!それに私のお母様を浮気者に仕立て上げない!」

 チェって顏をしない!

「ロッド様には、留学中の1年で帝国の学園を卒業してもらいます」

「は?」

「それから国に戻り学園に入学した後、また1年で卒業資格を取得してもらいます」

「え?」

「そうそう剣術大会がありましたね。優勝してください」

「えーっと、どういうこと?まぁ、できなくはないけど……」

「それから、何か学術的な論文で認められるとか、どこかの領地の不正を見破るとか、何か活躍してください」

 ロッド殿下が首を傾げた。

「なぜ?いや、できなくはないし、ミリアが望むならするけど」

 この、できなくはないってのがすごいよね。流石推し。

「ロッド様が、誰からも優秀な人だと言われ、国を治めるにはロッド様しかいないと、崇められるとしたらどうなると思います?いいですか、認められるのではなく、崇められるんですよ?」

 推しに対する感情を思い浮かべればわかるよね。

 崇めるのよ。つまり、神!尊いお人!

「つまり、ミリアと結婚できるんだな」

 うん、分かってない顏してる。

「だから、分かってないでしょう?崇めるというのは、つまり、神!まぁ私からすればロッド様はもはやすでに神なんですけど、他の人たちにも神だと頭に叩き込んでやるんです。これほど優秀な人間はいるわけがない、素晴らしすぎる、神の化身に違いない!と」

「なぜ神のよに崇めらられる必要が?……はっ、そういうことか。我は神なるぞ!生贄にミリアを捧げよ!って言えば問題がクリアになるということだな?」

 ロッドが斜め上の解釈を始めた。

「ミリアが、生贄の乙女……ふ、ふふふ、生贄ならば、僕の部屋に閉じ込めても死なないよね、だって生贄が逃げ出すなんて民の気持ちをそむくよね……」

「違う、違うから、ロッド思い出して、子爵令嬢の私と”結婚”するための作戦でしょっ!」

 ロッドが我に返らなかった。

「生贄……きっと薄着の白装束をまとって捧げらっるんだ……。緊張してこわばった顔をするミリアに……僕は目いっぱい優しく」

 ……どんな妄想してるんだ。そもそもそんなに欲望まみれ、煩悩まみれな神様がいていいんかね?

 その時点で矛盾してますけど?

「生贄って、湖に沈めたり、土の中に埋めたり、祭壇で心臓一突きにしたりするやつでしょ?民はこぞって私を祭壇の前で私の命を捧げようとするでしょうね」

 ロッドが我に返った。

「皆殺しだ」

 想像の中で民を皆殺しにし始めたようです。忙しいな、ヤンデレの脳内。

「そうか、やはり、全員殺せば、僕とミリアは結婚できると、そういうことだね」

 違うわ!

「そうじゃないわ。神!尊い!と思われれば、ロッド様の言うことに間違いはない!ロッド様が選んだ女性なら位が低くても問題があるはずがない!ロッド様がお選びになるのだ何か深い理由があるだろう!ということで、子爵令嬢ごときがと言われなくなるというわけです」

 ロッドが首を傾げた。

 なぜ、理解できぬのだ?

「推しの言葉は正義です!空が赤いと言えば、空の色は赤で間違いないんです!リンゴは毒だと言えば、リンゴは毒になるのです!推しとはそういうもの、神のような存在、つまりロッド様には全国民の推しになってもらいます!そうすれば、子爵令嬢の私がロッド様と結婚できることでしょう!」

 推しが幸せなら、相手がだれであろうと祝福するのが推し道というもの!そこで離脱するやつは二度と推しのことを語るな!邪教徒め!

「ミリアと結婚……」

「そう、私と結婚するために、とにかくロッド様にはスーパー人間になってください!3年かかる勉学を1年で修め帝国の学園を主席で卒業し、国に戻り学園に入学。もちろん生徒会長として活躍しつつこれまた1年で主席で卒業。在学中に発表した論文は学会をざわつかせ、剣術大会では騎士団長をも膝をつかせる、それくらいすごい人に……」

 ……さすがに、無理か。主席はやりすぎか。在学中にというのも無理か。騎士団長も欲張りすぎかな。

「分かった。他には?」

 分かったの?いや、無理でしょう、無理無理。でも、その半分でも十分優秀さを見せつけられるよね?

「いえ。ロッド殿下はとにかく優秀で、民に慕われ神がかっていると思われ尊ばれるように頑張ってください。それが一つ目の結婚する方法です」

 ロッドが私の立てた2つの指を見た。

「2つ方法があると言っていたが、もう一つは不要だろう?僕がちょっと頑張ればいいんだから」

 ちょっとでできることじゃないよね?あ、これ、ハクチョウは水の中で足をかくみたいな努力を人に見せないよって話かな。

「もう一つは、私が功績を立てて、子爵から伯爵へと成り上がることです。私自身が注目を集め、王妃になるにふさわしい人間だと評価されれば……」

 子爵令嬢のくせにとか、裏で手を回して卑怯な手を使ったに違いないとか、殿下を誘惑した悪女だとか言われないはず。

 誰もが認める功績を分かりやすい形で積み、その過程で味方をつける。……そう知れば冤罪をかけられることもなく、内乱を引き起こすこともなく国が亡ぶ未来は防げるはず。

 と、思いを巡らせているとロッドがまた黒い顏になっている。

「ミリア以外の誰が王妃にふさわしいと言うんだ?ミリアがふさわしくないというやつはこの世に必要ないよね」

 ちょっとめんどくさくなってきたわ。殺すな、殺すな。

 ヤンデレ暴君が出来上がれば内乱一直線になるから!

「殿下、こちらにいらしてくださいませ」

 ちょっと上目遣いにお願いすると、ロッドは落ち着きを取り戻した。

「ミリア、どこへ誘う気だ?中庭の茂みか?」

 学園舞台の小説読みすぎでは?なんだよ、中庭の茂みって。

 本棚の影から出て、図書室に並んでいる机のど真ん中に座った。

「こんな目立つところ……まさか、ミリアは人に見られた方がごにょごにょ」

 また変な妄想を始めたよ。話が進まないから無視してペンと紙を取り出し、サラサラと書いてロッドに見せる。

『王太子妃に求められる資質、目的』

・後ろ盾となれる高位貴族であること

・高貴な血筋であること

・貴族間の勢力図のバランスを獲るため

・外国との結びつきを強化するため

「大まかにこんな感じかしら。私はこのどれにも入っていないのはロッド様も分かるでしょう?」

「こんなもの関係ないっ」

 声を荒げようとしたロッドを止める。

「しぃー、静かに」

 ここで声を上げれば図書室にいる人達の注目を浴びる。人目があるからロッドもさすがに殺すだとかなんだとか物騒なことを小声とは言え言えないだろう。

「このすべて、子爵令嬢である私にはどうにもならないことなのは殿下だって分かっているでしょう?だから、殿下に崇められる人になってほし。そして、私は……」

・王室になくてはならない才能の持ち主

・歴史に名を残すような功績を上げた者

・外国からの評価も高い人物

 紙に書き加える。

「これを目指すわ」

 トントンと紙に書いた文字を指さす。

「特に、一番下。帝国に留学している間に、私はこれを頑張るから」

 外国からの評価の高い人物になる。

 国内で功績を上げても、裏で手を回したとか、インチキだとか、あることないこと言われるにきまっている。

 流石に帝国で認められたとなら、私の功績を疑う行為は、帝国が嘘をついていると言っているようなもので、帝国批判につながる。認めざるを得ないだろう。だから、留学中に帝国側に認められるような功績を上げたい。……前世知識を使ってでも。

「簡単じゃないよ?」

 にこりと笑う。

 そして紙に書き込む。

『ロッド様だけに頑張らせたくはないの。難しくても、精一杯頑張るわ』

 ロッドが私からペンを取り上げて紙に文字を書く。

『今すぐ抱きしめたい。ミリア、好きだよ』

 そこでいったんペンを止め、続きを書き始めた。

『1日中抱きしめていたい。いや、ずっと離れずに過ごしたい』

 ……はいこれ以上はヤンデレ出そうなので、ペンを取り上げ。

「それでは、一緒に頑張りましょうロッド殿下」

 立ち上がって簡易版カーテシーをしてその場を去った。

 流石に人目があったからか、引き留められることもなくすんなりと立ち去ることができた。


 が、甘かった。

「来ちゃった」

「き、来ちゃったって、いったいどうやって……!」

 貴族が通う帝国の学園の女子寮の3階。

 警備も厳しいはずなのに……!

「簡単だよ、三流の暗殺者だって忍び込めるんじゃない?」

 いやいや、ロッドは暗殺者じゃないでしょうっ。

「なんで、来たの?」

 ロッドがにんまりと笑った。

「一緒に頑張ろうって、ミリアが言ったんだよね?だから、一緒に、頑張ろうね!」

 ロッドは私を膝の上に座らせて教科書を開いた。

「ちょっ、一緒って、そういう意味じゃ……」

 ロッドが首を傾げる。

「ああ、そうか。ミリアは僕と同じ教科書を見なくてもいいんだったよね。だったら……こっち」

 ちょっと、と抵抗する間もなく、ソファに座らされた。そして私の膝を枕にロッドは寝転んだ姿勢で教科書を読み始める。

 うわー。推しが、推しが、私の膝で膝枕を……っ。

 もちろん抱きしめられたり手を握られたり耳元でささやかれたり推しが、推しが、推しが……って思う場面は一杯あるけど、でも、顔が見られないのよ。こうして、推しの顏をしっかり見ることができる膝枕は……。

 はぁー。かっこいい。

 ロッドが本のページをめくろうとして、膝の上で頭を動かした。

「あっ」

 思わず声が出てしまった。

 だって、顔が隠れて見えなくなってしまったんだもの。

 ロッドはころりとまた頭を動かし私の顔を見た。

「ずっと僕の顏ばかり見てるよね」

 うっ。バレてる。

「一緒に頑張るって言ったのに、頑張らない子にはお仕置きをしなくちゃいけないね」

 え?お仕置き?

 ロッドの手が私の着ている服の胸元にあるリボンに触れる。

 そして、しゅっとリボンを引いて結び目をといた。

 ひぃっ。

 待って、大丈夫?だって、まだ14歳だよ、何するつもりっ。

「お仕置きに、このリボンはもらっていくよ」

 ……なんて?

 ロッドが私の服から抜き取ったリボンを口元に持って行った。

「ミリアの匂いがする」

 そういって上目遣いで私を見た。

 ううう、私は真っ赤だ。

 だって、私の方がよほど不埒な想像しちゃったから。恥ずかしい!

「ふふ、じゃあ、帰るね。持ってきた教科書は読んじゃったから」

 ロッドが本を片手に立ち上がり窓辺へと足を運んだ。

 え?もう読んじゃったの?

「また、明日」

 ロッドの言葉に、すぐに言葉を返す。

「うん。また明日ね」

 なんてことのない言葉なのに、ロッドの目に涙がうかんだ。

「ロッド様?」

「……次に会う時まで、2年も待たなくていいんだね……、また、明日……」

 ふっと笑い、ロッドは窓の外の木に飛び移ってするすると去っていった。

 なるほど。3階なのにどうやって忍び込んだのかと思ったら……。

「……泣いてたな……。ロッド様……」

 どうして、そんなに私のことを好きでいてくれるんだろう……。

 嬉しいけれど、理由が分からない。理由が分からないから……いつか、理由が分からないまま嫌われてしまうかもしれないと思うと怖い。

 ああ、もう。

 私、ロッドのことが好きなんだ。

 ……もう、推すだけでは物足りない。

 目の前にいて、私の名前を呼んでくれる……。

 推しとしてではなく、一人の男性として……。好きになっちゃったんだ。

「うわぁーっ、どうしよう、これって、恋なんだよね……あああ、恋かぁ……」

 ピタンとほっぺを両手で叩く。

「恋に浮かれてる場合じゃない。本当。何とか功績を上げないといけないんだから。留学期間の1年の間に……」

 前世知識を使えばきっと何とかなる。

 農業改革……緑肥に堆肥に輪作に……いや、結果が出るまで時間がかかるから無理だな。

 料理革命……この世界はそこそこ料理はおいしいからそれほどのインパクトはないだろう。

 そうだ、数か月で結果が出て、しかもその効果も素晴らしい前世知識があったじゃないか。

 他にも……いや、甜菜栽培に関しては子爵家の領地で始めた方が良いよね。火山灰が積もってできた土地は水はけがよく甜菜栽培向きなはずだ。こちらでの実績に加え領地も富ませて子爵家を伯爵家に引き上げ、私個人も勲章の一つでも貰えば……いや、勲章は帝国でもらった方が箔がつくかな。よし。病のいくつかを解決しよう。壊血病、脚気、水虫、煮沸消毒で赤痢の広がりを抑えることもできるか……。

 頑張りすぎた結果、帝国の皇太子に求婚されて別のルートで戦争が起きそうになったりとかなんやかんやあるけれどそれはまた別のお話。


========ロッド視点=========

 僕には生まれた時からの記憶どころか、生まれる前からの記憶がある。

 生まれる前の魂だけだった時。僕が歩む未来が頭の中に浮かんだ。

 そうなる自分が怖くて、生まれたくなんてなかった。それなのに、未来の僕に「ああ、この世に生まれてきてくれてありがとう!」と言ってくれる人がいた。

 何をやっても「尊い!ああ、好き!」と好意を示してくれる。

 僕が辛い目にあえば「ひどい、どうして、ロッド様は悪くないのに!」と嘆いてくれる。

 僕の代わりに、いや、いつも僕以上に泣いたり怒ったりしてくれた。

「はぁ、推しが尊すぎて辛い。もう無理、はぁ、好き、好きすぎる」

 こんなに僕を愛してくれる人がいるんだ。

 生まれるのが怖かった。

 だけど、未来の僕をこれほど愛してくれる人がいるなら、僕もこの人を愛したい。そう思った。

 だから、生まれることにした。

 そして、すぐに僕にはわかったんだ。

 いつも僕を見てくれた人。生まれてきてくれてありがとうと言ってくれた人。

 好きだとずっと言ってくれた人。

 ……ミリア、君がそうだと、すぐに気が付いたんだ。

 僕も君が好きだよ。僕はね、君のために生まれてきたんだよ。

 



執着に全力投球しようとしたけど、難しかった……デス

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― 新着の感想 ―
隣の男爵領潰して合併させた後に持参金として王家がいただき、引退隠居して管理名目で引っ越すというのはどうかな。 ロッドがやったのでなければ実際に国王が病に倒れるかもしれないし。 王妃は友達と頻繁に会えて…
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