表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神隠しにあった俺達はこの異世界で生きていく~異世界では脳筋戦闘職が天職でした~  作者: 篠見 雨
第4章 クラン【彼岸花《リコリス》】と聖なる鎧
59/65

第4章 第13話 日緋色金合金製の打刀

 七五階層から転移魔法陣のホールと下の層に降りる階段のホールにフロア数の書き込みがなくなり、【彼岸花リコリス】が自分達で階層表示を付けるようにした。

 この階層から神鉄鋼アダマンタイト魔脈鉄鋼ダマスカスの身体に日緋色金ヒヒイロカネの強化部位をもつ個体が混ざり始め、八〇階層からはほぼ日緋色金ヒヒイロカネの装甲をもつ魔物ばかりだ。


 八一階層を踏破した時点でレギンの打刀の完成予定日の前日になった。八一階層の帰還魔法陣で一階に転移するとそのまま街へと戻り、≪金色亭≫に二人部屋を六部屋お抑えて休息をとった。一晩しっかり休んだ翌朝、予定通りにレギンが現れる。


「おう、居ったか。早速じゃが儂の工房まで移動するぞ」


「レギンさん、予定通りに来ましたね。ひょっとして昨日や一昨日あたりにも≪金色亭≫に来てましたか?」


「あぁ、一昨日の夜に拵えまで完成させて昨日の朝にもここに来た」


「そうでしたか、待たせてしまいすみません」


「いや、予定日はあくまで予定日だ。儂が早く来たのを気にする必要はない」


 レギンは機嫌良さそうに笑いとばす。このご機嫌具合をみただけで打刀の出来も分かろうというものだった。


 工房に着いたところでレギンが早々にテーブルに六振の打刀を出し、祥悟がそれを鑑定をする。


「それじゃ見させてもらうよ」



無銘×六振

付与:【血払い・大】、【自動清浄・大】、【耐久度強化・大】、【斬れ味強化・大】、【貫通強化・大】、【打撃強化・大】、【自動修復・大】、【魔力マナ浸透率強化・大】、【プラーナ浸透率強化・大】

特殊:【魔払い・大】



「うん。試しの一振と同等の出来が計六振。予定通りだ。しかしこの出来なのに無銘なのか?」


 祥悟のお墨付きも出た。


なかごには儂の名前を彫ってある。それで十分じゃねぇか」


 指摘されたレギンの方は不満そうにそう返す。


「これは悠里君と同じね。気の利いた名前が思いつかずチーム名を放置してたのと」


 悠里の顔もレギン同様に顰め面になる。


「そういうのは得意なやつに任せる方が良い」


 悠里の反論にレギンも呵々大笑して同意する。

 本日引き渡しになった六振は湊、祥悟、エフィ、ミヤビ、アリスレーゼ、アマリエの分である。


「そうだ、レギンさん。前に日緋色金ヒヒイロカネの柱の試し斬りに参加しなかった五人、今日は試させてもらって良いですか?」


 悠里がレギンに願い出ると、レギンは軽く頷いた。今日試し斬りするとは聞いていなかった五人がぎょっとするが、話は進んでいく。


「腕を上げてきたってことか。それじゃ裏庭に行こうか」


「条件は天銀ミスリル合金製の武器。成功した武器種の日緋色金ヒヒイロカネ合金製の武器の作成を依頼する予定。得意武器でやるか新しく別の武器種でやるか、選んで良いよ」


 悠里の問いかけに五人は顔を見合わせた。


「ユーリ様チームみたいに刀で揃えるのも格好良いですけど、やっぱり慣れた武器種ですかね」


 レティシアの意見に頷いたのはクローディアとカルラの高身長三人組。


「私は刀を使ってみたいです」


「私もです」


 ユーフェミアとメノアはこれを機に刀に挑戦したいらしい。


「それじゃ、レティシアとクローディアは幅広の長剣と斧槍ハルバード。カルラは幅広の長剣と斧槍ハルバード大戦斧グレートアクスだね?メノアとユーフェミアは刀を試すか」


 悠里が試し斬りする武器種をまとめて伝えると、祥悟が手を挙げて待ったをかける。


「試し斬り前に刀の使い方を教えとかないと。直剣とはちょっと斬り方が違うし」


 魔力マナプラーナを浸透させたり覆ったりした武器なら、結局は魔力マナプラーナの混合された刃で斬るので、どちらでも変わらない気もする。とはいえ使い方が違うのは祥悟の言う通りなので、メノアとユーフェミアに刀の振り方を教えている間にレギンと悠里が試し斬りに使う天銀ミスリル合金製の武器を用意する。

 悠里が脇差と幅広の長剣を用意し、斧槍ハルバード大戦斧グレートアクスはレギンに借りた。


「レギンさん、これ天銀ミスリル合金製の武器で斬れたら戦棍メイスみたいな鈍器も頼めます?」


「鈍器か?普段は扱わないが……。戦棍メイス大戦棍モール戦鎚ハンマーならウチで受けても良い。盾と防具はそっち専門の工房に頼むか、≪マインレーヴェ百器店≫で調達してくれ」


「ありがとうございます。あと防具の工房と弓の工房で良いところを教えてください」


「あぁ、わかった。後で紹介状でも書いてやる」


「助かります」


 レギンの回答に悠里が礼を言い、試し斬りが成功した後のことを思案する。

 できれば防具もクランで揃えた意匠にしたい。何故なら格好良いから。あと揃いの意匠であれば同じクランのメンバーだとみて分かるから。クランの女子組が装備だけで【彼岸花リコリス】メンバーだと気付けるならば、それだけ厄介事が減る。と思っている。


 そうこうしている間に刀の斬り方が直剣とどう違うかのレクチャーは終わったらしく、五人とも準備完了していた。

 レギンが何時もの日緋色金ヒヒイロカネの柱を出して見物に回る。


 レティシア、クローディア、カルラ、メノア、ユーフェミアの順で試し斬りをしていき、最終的に試した武器は全部レギンからの合格がでた。


「うむ、文句なしだ。これなら日緋色金ヒヒイロカネ合金の武器を作ってやる」


 注文をまとめると、幅広の長剣が三振、斧槍ハルバードが三振、大戦斧グレートアクスが一振、戦棍メイスが三振、打刀が二振、脇差が九振である。全部を同時にはできないので、汎用性などから優先順位を付けていく。

 

 幅広の長剣が三振、打刀二振りを最優先で、斧槍ハルバード三振、大戦斧グレートアクス一振が次点の優先。脇差九振と戦棍メイス三振が後回しである。


「最優先のが一〇週間、次点の優先がその後に一〇週間、後回しのやつはその後だ」


「分かりました。とりあえず次点の優先までの代金を先払いします」


「幅広の長剣二振と打刀三振が各三億ゼニーで計一五億ゼニー、斧槍ハルバード三振は各五億ゼニーと大戦斧グレート・アクスは九億ゼニーで計一四億ゼニー。最優先と次点の優先で合わせて二九億ゼニーだな」


 一枚五千万ゼニーの大白金貨を五八枚、即金で支払う。


 最近億単位の買い物が普通になってきて、要らないと思っていた天銀ミスリル貨などの億単位の貨幣があれば支払いが楽になるな、とか思い始めている。

 

「依頼受けといてなんだが、金銭感覚ガバガバだなお前。少しは値切ろうとか思わんのか」


「ですよね。自覚はあります。でもレギンさん適正価格なんでしょ?腕を安く売っちゃ駄目ですよ」


「……まぁ、良い。隣の工房が店を閉めたから、土地と建物ごと買い取って今の工房を拡張する。そうすれば触媒に浸す容器も増やせて同時進行できる数も増える。手の空く弟子が居ねぇか聞いてみるわ。いたらこっちの作業も手伝わせればもっと早くできる。出来たらまた≪金色亭≫に連絡する。居なかったら伝言残すから、街に戻ってきたら確認しろよ」


 レギンがこの大量注文を捌くために工房の面積を広げたり独り立ちした弟子を呼んでまでやってくれるという。所用期間が短くなる分には何も文句はない。むしろありがたい。


「増改築費用、出しましょうか?」


「十分足りてる」


「わかりました。今回もよろしくお願いしますね」


「あぁ、任せろ」


◆◆◆◆


「防具と弓のお勧めの工房の紹介状貰ってたけど、次はそっち行くの?」


 湊の問い掛けに悠里は少し思案し、首を横に振った。


「今はまだ良いかな?レギンさんの工房もリフォームして作業効率を上げてくれるらしいし、その後で時間の再見積りをしてもらってから考えたい。その頃には素材も更に集まってるだろうから、インゴットに精錬して持ち込めば安くしてもらえそうな気もするしね」


 悠里の考えを聞いて湊は頷いた。


「それより休暇期間が明けたらまた潜るから、しっかり食料や消耗品の補充をしておかないと」


「とは言っても既に年単位の備蓄あるでしょ?」


「……まぁ、あるね。王都の館の料理人達が頑張ってくれたから。【異空間収納】がなかったらこんな無茶な真似できないよね」


 ≪金色亭≫に戻ると早速チェックアウトを済ませ、再び鉱山迷宮へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ