第4章 第3話 押しの強いひと
エッジブランド家でお世話になること二週間。オーダーした正装も数着ずつ届き、ダンスも何とか踊れる程度には形になった。
国王と謁見しての礼儀作法も最低限身に着けた。あとは本番で何を言われるか次第である。
「褒章は功績に見合った物や金というのも、それはそれで難しい。国宝級の物を何点出せば釣り合うのか前例がないからな」
「となると、やはり?」
「あぁ、叙爵されるのが一番可能性として高い」
「貴族になるのは断りたいのですが。貴族社会に馴染めるとも思えません」
「名誉爵位はどうだ?領地も貰わず、貴族としての義務も負わず、しかし貴族としての身分だけは保障される。他の貴族からの無体な扱いを避けるための盾に良い。貴族としての爵位持ちとなれば我が家も後ろ盾になりやすい」
「そう、ですね。権力による暴力に対抗する盾くらいは持った方が良いのですかね」
「それがユーリ君やショーゴ君の奥方達を守る力になる」
「……少し、仲間達と話をして考えてみます」
「という訳で、褒章として何をもらうべきかの相談なんだけど」
「主様は素直に貴族になるのはそんなに嫌?」
アリスレーゼの疑問に、顔を顰めて頷き返す。
「礼儀作法とかダンスとか、付け焼刃ではどうにもならないだろう?貴族同士の権謀術数とか陰険な水面下の言葉の応酬とか、そんなのに人生費やすとか嫌じゃない?」
「そうだな。俺も探索者の生活の方がしっくり来ると思ってるよ」
悠里の意見に祥悟も同意する。
「貴族達相手に目立つのが確定路線になったのに、お前の女を寄越せと権力振りかざしてくる貴族相手に膝を屈する気も更々ない。うちは美女美少女だらけだから冗談なく戦争になるぞ。まさに傾国のクランだからな」
悠里が皆を見渡してそう言い切ると、アマリエが面映ゆい思いをしつつ宥めるように言う。
「そう言って下さるのは我らとしては嬉しいですが、貴族に対抗するなら、猶更貴族になった方が良いのでは?」
「名誉貴族って手もあるって魔境伯閣下が教えてくれたんだけど、それはどうだ?」
「名誉貴族?実体のない名前ばかりの貴族ですけど、爵位は貴族として機能します。他の貴族からの介入を防止するための力にはなりますね。階級が下の貴族からの要求なら正式に跳ね除けられますし」
アマリエが頷いてその案を推した。
「しかし名誉爵位ということは、その立場を支えるだけの武力や財力がありません」
無理を通そうとする輩をミヤビは懸念する。
「最悪、他国に逃げれば何とでもなるんじゃないか?」
祥悟の気楽な意見に悠里の眉間の皺が緩んだ。
「……そうだな。この国にしがみつく必要なんて元々ないもんな。叙爵されるのなら実態のない名誉爵位を希望して、物や金だけなら素直に頂く。で、貴族が絡んできてウザかったらぶっ飛ばす。最悪は国外逃亡。これで良いか」
仲間内の意思統一は出来た。ここしばらく悩んでいた問題に心情的にケリがついたことで気が晴れた思いのする悠里だった。
◆◆◆◆
登城当日。皆が正装に着替えて魔境伯家の馬車に乗り、城へと向かった。
「皆のドレス姿良いね。いつもと雰囲気が違って。元貴族組はさすがに着慣れた感じあるね」
「あぁ、いつも綺麗だけど今日は特に自慢したくなるね」
「絶対嫉妬の視線を浴びまくるね」
悠里と祥悟がクランメンバー達の装いを褒めつつ、謁見の間で起こるだろう自分達への視線を想像して笑っていた。女性陣は女性陣で、ビシッと決めた礼服姿の悠里や祥悟が好評であった。
魔境伯の案内で城に入り、使用人にラウンジのような広い待合室に通され、一行は待機する。
「ユーリ君。悪いが私の付き添いはここまでだ。後は謁見の間で待たせてもらうよ」
「はい、ありがとうございます。また後程」
魔境伯がラウンジを出てしばらくすると、使用人と騎士が案内にやってきた。
「これよりご案内いたします。付いてきてください」
騎士の案内により場内を歩き、大きな扉の前に整列する。並びは一列四人が三列分。一列目が祥悟、湊、悠里、エフィ。二列目アリスレーゼ、ミヤビ、ユーフェミア、アマリエ。三列目レティシア、クローディア、カルラ、メノア。
入場準備ができたところで、扉番をしていた騎士が頷いて大声で到着を宣言する。
「探索者ギルド!シルトヴェルドの街所属!クラン【彼岸花】の皆様方がご到着いたしました!!」
宣言の後、扉番をしていた騎士二人が分厚く高価そうな謁見室の扉を開き、中の様子が見えるようになる。
手前から最奥までに赤絨毯が敷かれ、最奥の一段高いところに王座が二つ並んでいる。玉座にはまだ誰も座っていない。
赤絨毯の左右には、貴族や護衛の騎士がずらっと並んで悠里達を見定めようとしている。
悠里達は段差の手間、三メートルほどの位置にまで進むとそこで片膝を着き、頭を伏せた待機姿勢となる。この時、視線は前方の斜め下までしか見てはいけない。
待機状態で暫し待つと、再び大声で宣言が掛かる。
「国王陛下、女王陛下、並びに王族の皆様方のご入来!!」
悠里達は一層頭を下げ、一旦視線は自分の足元の絨毯にまで落とす。
衣擦れの音と歩きの音がして前方に王族達が並び、国王と女王が玉座に座ったのを感じ取る。
「面をあげよ」
玉座よりズレた位置、おそらく国王の隣に立つ男が声をかけた。
悠里達は軽く頭を持ち上げ、国王方の足元が視界に入る辺りまで顔をあげる。
「クラン【彼岸花】の武功を讃えるにあたり、先に大地の大幻獣を確認させてもらいたい。これより騎士達の野外訓練所に移動し、【異空間収納】から大地の大幻獣を取り出し、此処にいる皆にその威容を見せては貰えないだろうか?」
「仰せのままに」
「では王家の皆さまは先に退室を。続いて貴族とその護衛騎士が移動とし、最後にクラン【彼岸花】に訓練場入りをしてもらう」
「はっ」
王族の方々が謁見室奥側の扉から退室し、ぞろぞろと高位貴族から低位貴族の順で移動が行われる。その間、悠里達は片膝をついて頭を下げ気味に、視界を上げないように待機して声がかかるのを待つ。
「では、【彼岸花】の皆さま方、屋外訓練場へとご案内いたします」
声が掛かってから立ち上がり、立礼をして騎士に連れられ屋外訓練場に出た。
『(ふぅ……自分の礼儀作法で何とかなっているのか不安だな)』
『(ん。ちゃんとできてた。安心すると良い)』
エフィに太鼓判を押されて思わず顔が緩んだ。
野外訓練場につくと、貴族や王族から注目されている。
なるべく失礼にならぬよう、悠里だけが国王の前まで進み出て跪き、待機する。
「それでは、大地の大幻獣を【異空間収納】から取り出してくれ。参列者に危害がないよう、十分配慮するように」
国王の代わりに横に立つ男がそう言葉にする。宰相というやつだろうか。
「はっ」
とりあえず指示も受けたのだからと、広い訓練場の真ん中に進み、自分意外が壁際に寄っていて巻き込みがないことを確認すると、大地の大幻獣を取り出した。
その威容は死してなお健在である。腹這いの状態で全高一〇メートル、全長五〇メートルの深い紫がかった巨体、竜ですら突き殺しそうなねじれた二本の大角。その四肢は甲殻竜の胴の如し。
「おぉ……」
大地の大幻獣の存在感に感嘆とも畏怖ともとれる声があがった。
「この大地の大幻獣は後ろ脚で立ち上がり、空に咆哮したと聞くが、相違ないか?」
「はっ!シルトヴェルドの街の街壁より高く振り上げた頭を、思い切り地面に叩きつけるような行動を取りました。あれが街壁に落とされなかったことは幸いでございました」
「して、この大地の大幻獣は如何に討伐したのか、今一度説明を」
「我が愛刀を以って眉間から頭蓋骨を貫き、脳髄を破壊しました」
「この威容をみても、人の身でそのようなことが出来るのかと疑うことを止めぬ者がおる。何か実演できるような案は無いか?」
「……氣や魔力を纏った生きている状態の大地の大幻獣に匹敵する強度の物がそうそうないと思われます。斬撃の拡張をご照覧いただくだけであれば、巨大な岩や鉱石、あるいは土魔法に長けた者達が強固に作り上げた防壁などでお見せできるかと思います。それとも、貴重な大地の大幻獣の首でも刎ねればよろしいでしょうか?」
「うむ……。それでは大地の大幻獣を回収してもらい、そこに土属性の魔法を使える者達が全力で強度重視で作った的を斬ってもらうことでよいか?」
「仰せのままに」
悠里は一礼して大地の大幻獣を回収すると、訓練場の端にいる仲間達のところに戻った。
『(はぁ……。疑心、嫉妬、嫌悪、憎悪の視線に晒され続けるのも疲れるものだね)』
『(お疲れ様、悠里君)』
『(ありがとう、湊)』
しばらく訓練場をみていると、土魔法使い達がこれでもかという程に魔力を込めた柱を作り上げた。
「宮廷魔法使いの渾身の土魔法で作成した柱です。一〇分もあれば土くれに戻ってしまいますが、それまでは神鉄鋼合金の硬度でございます」
揃いの制服を着た宮廷魔法使い達が、挑戦的な目を悠里に向けてきた。
「では、そちらの柱を斬るということでよろしいでしょうか?」
悠里は宰相閣下に確認をとると、宰相閣下は頷いて返事した。
「うむ。今すぐに用意できる物の中では最高の物であろう。斬ってみせよ」
「仰せのままに」
宮廷魔法使いたちが壁際に下がり、悠里の剣閃の範囲に人が入り込んでいないことを確認して腰の脇差の柄頭を撫でる。
悠里は柱までおよそ一〇メートルというところで止まると、腰の脇差に手を掛けた。練習中ではあるが、抜刀術の構えである。
「ふぅぅぅぅぅ」
深く深く息を吐き空になった肺が空気を求めて深呼吸となる。
呼吸が整ったところで魔力と氣を全開で廻す。会場全てに威圧と殺気を撒き散らしながら、力を浸透させた脇差を抜刀で一閃する。振り抜いた脇差はそのまま左薙ぎに薙ぎ払い、斬った部位より上を左薙ぎに斬って、最後に兜割で斬り落とす。
三度振った脇差をゆっくりと納刀すると、撒き散らした威圧と殺気を全て納めた。
「終わりました。検分をお願いします」
何をやったのか理解は出来ていないが、斬ったというなら的になった柱の確認が必要だろう。悠里の威圧と殺気にアテられた若い騎士が二人が青い顔で走り寄って来て、柱の検分のため触れると、横に二回、縦に一回、計三回斬られた柱が綺麗に滑り落ちた。
柱がバラバラに斬られて崩れたことを確認すると、悠里は観客達にお辞儀をして仲間の元へ戻って行った。
その間、会場はしんと静まり返り、不意に宰相が拍手をしはじめたことで会場からも拍手があがりはじめた。
「良い物を見せてもらった。これでもまだ疑問が残る者は声を上げ前に出よ。ユーリ殿と模擬戦を認めよう」
悠里も会場の貴族や騎士達を見渡し、特に異議が出てこない様子をみると、会場の皆と国王陛下へ向けてそれぞれに立礼で頭を下げた。
「ユーリ殿の威圧と殺気、剣閃の結果にと興奮冷めやらぬであろうが、参列者は今一度謁見室に整列するように。【彼岸花】の皆は案内があるまでしばし待たれよ」
「ふぅ、あれだけ脅したんだ。馬鹿なことを考える輩も減ると良いな」
「お疲れさん。五寸釘で釘刺した感じだったぜ」
祥悟が笑って迎えた。
「心臓に白木の杭をぶっさしたくらいにやったつもりだったんだが。修行が足りなかったか?」
悠里も笑って答えた。皆が口々に褒めてくれたので、きっと上手くやれたのだろう。
案内の騎士が現れ、連れられて謁見の間に戻ると再び跪いて待つ。
「国王陛下、女王陛下、並びに王族の皆様方のご入来!!」
先程と同じ口上が上がると、王族達が玉座側の扉からやってきて玉座につき、あるいはその横へと立つ。
「面をあげよ」
宰相の言葉に悠里達は再び頭を上げ、国王の足元に視点を合わせて直視は避ける。
「クラン【彼岸花】の大地の大幻獣打倒を、王国として正式に認めるものとする。また、大地の大幻獣の死骸を王国として正式に買い上げたい。応じてもらえるか?」
「畏れながら大地の大幻獣の死骸は我がクラン【彼岸花】の手に余る物でございますれば、王家への献上品とさせて頂きたいと思います」
「ふむ。とはいえ偉業に対する報酬はあって然るべき。爵位と領地はどうだ?」
「大変名誉ではございますが、身に余ります。我らは一介の探索者なれば、領地を経営し栄えさせるような、貴族としてのあるべき教養も無く、民への責任を背負いきれませぬ故」
「では、名誉爵位でどうか?領地の経営も国の政策への干渉権も持たぬが、年金は出るし他の貴族家への牽制にもなろう」
「はっ。ご配慮いただきまして感謝申し上げます。名誉爵位をお受けしたく思います」
「では名誉爵位は「アルバート。待て」……陛下?」
今まで場を取り仕切っていた宰相が国王からの制止の声に驚きつつ、国王からのお言葉を待つ。
「【彼岸花】団長ユーリには【名誉伯爵】の位を与えるつもりであったが、気が変わった。ユーリに与える名誉爵位には新規に【討滅伯】を用意し任命する。その位は辺境伯、魔境伯、迷宮伯に同列とする。また、副団長ショーゴには予定していた【名誉伯爵】を与え、【彼岸花】メンバー各位は【討滅官】という名誉職に就ける。【討滅官】は男爵相当とし、【討滅伯】の庇護下に置く」
謁見の間が、想像の埒外の宣言にざわめいた。辺境伯、魔境伯、迷宮伯は侯爵と同等であり、
侯爵を超えるものは公爵家、つまり王族の傍系の家門しかない。実質的に最上位といえる。
「(えぇ、聞いてないよ……)。御心のままに」
ここで参観した貴族達から拍手が送られた。多分魔境伯の大きな拍手につられた感じだろう。
「それから、大地の大幻獣の討伐にあたりユーリは愛刀の打刀を駄目にしたと聞くが、それは誠か?」
「はっ。天銀合金製で数多の付与効果を持った、自慢の大業物でございました」
「では王家の蔵より日緋色金合金の打刀を下賜する。アルバート、報奨金の話から先は変更なしだ。続けよ」
再び会場がざわめく。王家の家宝を渡すなど、実質王家が後ろ盾につくと宣言したのも同義だった。
「御意。【彼岸花】団長、ユーリに代表として報酬一二〇億ゼニーを与え、探索者の≪特級≫推薦を王家として勧めるものとする」
「はっ、ありがたき幸せ」
その後はつつがなく進み、謁見の間を退室すると騎士に待機室に案内された。
◆◆◆◆
「つ、疲れた……」
開始前のラウンジではなく、大人数用の応接室あるいは会議室という部屋に案内された。褒章の授与や名誉職着任に関する各種手続きのため、と聞いている。
それらの係の者がくるまで、使用人に淹れてもらったハーブ茶でリラックスする。
「ちょっと想定外のこともあったけど、まぁまぁ無難な着地?」
「【討滅伯】なる称号が、ただの名誉だけであればな」
祥悟の返しに悠里は嫌そうな顔を返した。
暫く休んでいると扉がノックされ、使用人が扉を開けると、壮年の鍛えこまれた男と、線の程い頭脳労働担当の文官に、お付きの護衛が四人が入室してきた。
悠里は謁見中は頭を上げても視線は国王の足元に固定していたため、それが誰か一瞬分からず反応が遅れたが、ふと足元をみて思い至り、慌てて跪いた。
悠里の対応で察した仲間達も、慌てて立ち上がり国王へと跪いた。
「不躾な視線を注ぎましたこと、ひらにご容赦を……」
「よい。エッジブランド魔境伯に言い含められた通り、足元だけを見ていたのであろう?」
「はっ。左様でございます」
「ならば顔をあげて見せよ」
「はっ」
悠里は指示通りに顔をあげて、国王と宰相とを見返した。
国王は壮年で身体は鍛えられており、興味深そうな顔で悠里をみている。対して宰相は線の細い方で、頭脳労働で王を支える家臣の風格がある。
「うむ。二ホン出身の異世界人の容貌と特徴よな」
「ご明察通りにございます」
「報奨金は以前のオークションの売上より見劣りするであろう?すまぬな」
「いえ、勿体なきお言葉にございます」
「ふむ。少し固いな?この場ではもう少し緩くても良いのだが」
「陛下、弁えた者達にそれは無理難題かと」
「で、あるか。先程報酬に付け加えた打刀を持ってきた。銘は≪緋色一文字≫。受け取ってくれ」
護衛が細長い袋を両手で支え、悠里の前に差し出した。
「≪緋色一文字≫……。恩賜、拝領いたしました」
悠里は両手で受け取りつつ頭を下げた。
「国宝とまではいかぬが、王家の家宝の一振である。探索者活動で折れたとしても責は問わん。使ってこその武器だ。存分に振るうが良い」
「はっ。感謝いたします」
「次が貴族認証プレートだ。探索者ギルドのプレートと同じように魔力識別の本人認証が可能なように設定する。装置とプレートをこちらへ」
護衛が魔力登録用の魔道具と貴族認証用プレートをテーブルに設置し、悠里から祥悟、他の女子組一〇人分と、登録作業が進んでいった。
「出来上がったプレートは常に肌身離さず持ち、失くさぬようにな」
「はっ」
「うむ。では次はまた三日後じゃな」
「?三日後、でございますか?」
三日後という提示された日程に心当たりはない。
「なんだ、ムラマサはユーリに晩餐会の日程を伝えていなかったのか?」
「……日程については初耳でございました」
「今伝わったから良しだな。あぁ、あと王都にも屋敷を持たぬか?」
「過分にございます」
「まぁ、そういうな。執事と使用人はこっちで用意する。給金もこっちでもつ。王都まできて一二人が泊まれる宿が空いてなかった、では困るであろう?」
扱いが気安い。そして押しが強い。
「……分かりました。鍛錬ができる庭があって一二人で泊まれる家で、男女別に洗い場と浴槽のある大きな浴場がある物件でお願いします」
悠里としては無理目の条件を出して断ろうとしたのだが、国王陛下は押しが強かった。
「浴場にこだわりがあるのか?まぁ良い。その条件で見繕おう。男女別の大浴場など要件を満たしていなければ増改築を行ってからの引き渡しとする。それと、部屋数はもっと増やすぞ?ゲストルームだって必要だし、子供ができたらもっと必要になる。それとは別に、屋敷の維持管理に執事と使用人もつけるので、使用人達の部屋も必要だな」
「……急にそんな物件や人材がみつかりますか?」
断るつもりで挙げた条件がすんなり通って、国王陛下はむしろやる気になってる。
「取り潰した貴族家の屋敷で、扱いが浮いているのが何軒かある。要件に合うように増改築し、寝具等、家具は全て新しい物を用意しよう」
「ご配慮いただき、ありがとうございます」
間合いを詰めに詰めてきた王様からは逃げられない!王都に来ることはそんなにないと思うが、宿の心配をしなくて済むならありがたい。順調に飼いならされていく未来が幻視できた気がする。
「それと、家名と家紋は考えておくように」
城を後にした悠里達一行は、馬車止めに待機していたエッジブランド家の御者に呼ばれ、馬車でエッジブランド家の屋敷に帰ることになった。




