表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/65

第3章 第17話 大氾濫《スタンピード》リザルト

 中央の最奥、森との境。

 突然地面の下から現れた巨大な魔物の頭上で悠里は当たりを見渡し、眉間近くに刺したままだった脇差を見つけ、回収した。


 頭部から飛び降り、仲間達の元に戻っていく。


「……死ぬかとおもった」


 ぽつりと出てきた悠里の感想に、仲間達が冗談ではないと怒りながら抱き着いた。真っ先に飛びついてきた湊を受け止め、そっと地面に降ろしてやる。すると右から左から背後から、次々と仲間達が抱き着いてきて、悠里は苦笑いで動くに動けず固まった。


「あ~、悠里?今のは誰も予想してなかったし突然過ぎる展開だったから仕方ないとは思うんだが。流石に肝が冷えたぞ」


 レティシアとカルラに挟まれた祥悟が、遠慮がちに悠里に声をかけた。


「あぁ、すまんかった。俺としても、もう二度とやりたくねぇっすわ」


 悠里が懲り懲りであるとばかりにそう答えると、反省していると判断されたのか、仲間達がやっと放してくれた。


「まだ防衛戦続いているんだな?」


 悠里が街壁の方を眺め、呟いた。


「ん。もう十分働いた。あとは任せて休むべき」


 エフィにも窘められ、頭を掻く。


「それは駄目だろ。まだ俺達にしかできない仕事がある」


 悠里の反論にその場がピリッとしたが、続く言葉でなんとかおさまった。


「倒した獲物達の回収だよ。これ片付けるのはさすがに俺達じゃないと無理だろ?」


「ん。片付けなら仕方ない。ショーゴとミナトも頑張って」


「「あ、はい」」


◆◆◆◆

 街壁の防衛隊たちは森の際の巨大な魔物が動きを止めたことを見ていた。


「動き、止まったな」


「え?倒したのか?あれを?」


 巨大な魔物の様子を気にしつつも、まだ防衛戦は終わっていない。


「おい、お前ら!!弓はどうした矢を射ろ!!まだ仕事は残ってるぞ!!」


 隊長に尻を蹴られ、皆が弓を射りだした。


 そうこうしているうちに、巨大な魔物は姿が消えた。


「え?あの巨体が消えた?」


「【彼岸花リコリス】んとこは異常な【異空間収納】持ちだって聞いたからそれだろ」


「【異空間収納】持ちか。でもあんな巨体って入るもんなんだな?異常だわ」


 最前線に行っている【彼岸花リコリス】達が倒した敵の死骸を【異空間収納】で片づけ始めたのが見てわかる。竜種や竜種と戦える巨獣もどんどんその場から消えていく。


「……うん、異常だわ」


「あいつらの仕事は終わったんだよ!!戻ってくる前にこっちも片付けるぞ!!」


「おう!!」


◆◆◆◆


 かつてない規模の大氾濫スタンピードが終わり、戦場の片付けが終わるまで【異空間収納】持ちや魔法の鞄(マジック・バッグ)持ちが駆り出され、街のお祭り騒ぎから遠く粛々と片付けを行っている。


 今回の最大の功労者である【彼岸花リコリス】も、休む間もなく戦場の掃除に従事している。死骸など放っておいて良い理由がない。腐って腐臭と疫病が撒き散らされるのは勘弁願いたい。


 回収するまでもない序盤の魔物達は、壁外で魔法で作られた大穴に放り込まれて火葬されていく。低ランクの探索者シーカーにとってはお宝の山なのだが、街を守る方が優先である。


 対策本部では例の巨大な魔物の正体について、伝承にある大地の大幻獣(ベヒモス)であると特定されていた。


「伝説級の魔物の登場と、その打倒とはね。ド派手にやってくれとは言ったけど、ここまでド派手になるか?思わんだろ」


 魔境伯が側近と探索者シーカーズギルドのギルド長とで話し合いの最中、そう零した。


「中央は与太話と思うでしょうが、今回は彼らが現物を回収してますからね。認めざるをえないでしょう」


 ギルド長の冷静な言葉に魔境伯も笑って頷いた。


「そうだな。最低でも≪特級≫認定は確実だ。それは良いが、大地の大幻獣(ベヒモス)の使い方で荒れるだろうな」


「そうですね。鍛冶に錬金に皮革に調理。丸ごと全部、様々な組織が欲しがる財宝です」


「爵位や領地ですら断りそうな探索者シーカーに、一体何で報いれるというのか」


「さて?なんでしょうね。ユーリ君は愛刀が砕けたことを嘆いてましたし、案外国宝級の所蔵品で納得するかもしれませんよ?」


「それはそれで安く済み過ぎで面白くないな」


「ですね」


 未だ戦場後の掃除に勤しむ英雄達は、前回のオークションどころではない騒ぎが起こることに思い至っていなかった。


◆◆◆◆


 一方、大氾濫スタンピードが終わったシルトヴェルドの街では、魔境伯軍と探索者シーカーズギルドの職員達の主催で、街中で魔物肉を振る舞う炊き出しが至る所で行われていた。シルトヴェルドに住んでいるものには分け隔てなくステーキ串が振る舞われている。


 この日ばかりは、スラムの孤児達もこれ以上食べれないという程に食べて食べて食べまくる。


 一番人気は翼竜ワイバーンのステーキ串だが、これは防衛戦の参加者の特権である。魔境伯軍の大訓練場や探索者シーカーズギルドの訓練場に建てられた屋台で次々に焼いては振る舞われる。


「俺、翼竜ワイバーンの肉はじめてだったんだけど。あの空飛ぶデカ物、こんなに美味かったんだな」


「平時でも高級肉として扱われてるんだが、何しろ高い!!防衛戦に参加した者の特権だな!!」


「お前ら、飯食ったら魔物の解体の時間だぞ!!飯がまだな奴等と交代してじゃんじゃん解体しろ!!」


「「「おう!!」」」


 大量の荷車に乗せられた魔物がどんどん運び込まれる。たまに魔法の鞄(マジック・バッグ)持ちや【異空間収納】持ちがごっそりと解体場に魔物を置いていく。


「街の外じゃ英雄殿が戦場の掃除をしてんだ、負けてんじゃねぇぞぉ!!」


「「「おう!!」」」



 街中の人間が一致団結して魔物を運び、解体し、肉を振る舞い、素材を切り出して倉庫街に運び込む。そこにあるのは悲壮感ではなく、喜びに湧く笑顔ばかりである。


 整理され収容された魔物素材は、ギルドや辺境伯軍で保管し、国中からやってくる魔物素材を求める者達にオークション形式で売り捌く。


 そうして上がった利益や素材から約束された額と分量とが「魔境伯領からの国への納税」として納められる。


 この街の住人達の笑顔は明るかった。



----------

悠里

 【念話 七↑】、【空間魔法 七↑】、【魔力マナ操作 七↑】、【仙氣功 九↑】、【思考加速 七↑】、【気配察知 六↑】、【隠形 五↑】、【生活魔法 四↑】、【治癒魔法 九↑】、【魔法(火風土水氷雷)四】、【刀術 七↑】、【直剣術 五】、【槍術 四↑】、【短剣術 二↑】、【弓術 二↑】、【戦棍術 二↑】、【格闘術 四↑】、



 【身体強化 八↑】、【魔力強化 六↑】、【武芸百般 九↑】、【遅滞世界 六↑】、【プラーナ操作 八↑】、【魔力マナ操作 八↑】、【思考加速 四↑】、【気配察知 六↑】、【隠形 四↑】、【生活魔法 四↑】、【治癒魔法 九↑】、【魔法(火風土水氷雷) 四】


祥悟

 【鑑定 九↑】、【気配察知 九↑】、【隠形 八↑】、【鑑定隠蔽 八↑】、【五感強化 八↑】、【プラーナ操作 八↑】、【魔力操作 八↑】、【思考加速 三↑】、【生活魔法 四↑】、【治癒魔法 九↑】、【魔法(火風土水氷雷) 四↑】、【刀術 七↑】、【直剣術 五】、【槍術 四↑】、【弓術 三↑】、【短剣術 三↑】、【格闘術 四↑】、【戦棍術 三↑】




エフィ

 【気配察知 七↑】、【隠形 四↑】、【鑑定隠蔽 七↑】、【身体強化 八↑】、【プラーナ操作 八↑】、【魔力操作 一〇】、【思考加速 五↑】、【生活魔法 七】、【治癒魔法 九↑】、【魔法(火風土水氷雷) 九↑】、【刀術 五↑】、【直剣術 七】、【槍術 七】、【弓術 八】、【短剣術 四】、【格闘術 三】、【戦棍術 一】



アリスレーゼ

 【気配察知 七】、【隠形 五】、【鑑定隠蔽 八】、【身体強化 八】、【プラーナ操作 八】、【魔力操作 八】、【生活魔法 八】、【治癒魔法 九】、【魔法(火水風氷影) 八】、【刀術 五】、【直剣術 五】、【槍術 三】、【弓術 三】、【短剣術 五】、【格闘術 五】、【戦棍術 二】



ミヤビ

 【気配察知 五】、【隠形 三】、【身体強化 七】、【プラーナ操作 七】、【魔力操作 七】、【生活魔法 三】、【治癒魔法 四】、【魔法(火風雷光影) 八】、【刀術 五】、【薙刀術 六】、【槍術 四】、【弓術 四】、【短剣術 三】、【格闘術 四】、【戦棍術 一】



ユーフェミア

 【気配察知 五】、【隠形 四】、【身体強化 六】、【プラーナ操作 六】、【魔力操作 六】、【生活魔法 三】、【治癒魔法 四】、【魔法(火水土風樹光) 八】、【刀術 五】、【弓術 八】、【短剣術 五】、【格闘術 四】、【戦棍術 一】



アマリエ

 【気配察知 五】、【隠形 四】、【身体強化 七】、【プラーナ操作 七】、【魔力操作 七】、【生活魔法 四】、【治癒魔法 三】、【魔法(火水土風雷闇) 七】、【刀術 五】、【弓術 二】、【短剣術 四】、【格闘術 四】、【戦棍術 一】




メノア

 【気配察知 八】、【隠形 八】、【身体強化 八】、【プラーナ操作 八】、【魔力操作 七】、【生活魔法 五】、【治癒魔法 二】、【魔法(火水土風雷闇) 六】、【剣術 六】、【弓術 三】、【短剣術 六】、【格闘術 七】、【戦棍術 一】



レティシア

 【気配察知 三】、【隠形 三】、【身体強化 七】、【プラーナ操作 七】、【魔力操作 六】、【生活魔法 四】、【治癒魔法 二】、【魔法(水氷/火苦手) 五】、【剣術 七】、【斧槍ハルバード術 六】、【大盾術 七】、【弓術 三】、【短剣術 四】、【格闘術 四】、【戦棍術 一】



クローディア

 【気配察知 四】、【隠形 三】、【身体強化 七】、【プラーナ操作 七】、【魔力操作 七】、【生活魔法 四】、【治癒魔法 三】、【魔法(火土/水氷苦手) 五】、【剣術 七】、【斧槍ハルバード術 六】、【大盾術 七】、【弓術 三】、【短剣術 四】、【格闘術 五】、【戦棍術 六】



カルラ

 【気配察知 三】、【隠形 二】、【身体強化 八】、【プラーナ操作 八】、【魔力操作 八】、【生活魔法 三】、【治癒魔法 四】、【魔法(火水氷雷) 五】、【斧術 八】、【斧槍ハルバード術 八】、【剣術 七】、【弓術 四】、【短剣術 五】、【格闘術 六】、【戦棍術 二】

----------


彼岸花リコリス】クランランク≪上級↑≫

彼岸花リコリス】本家チームランク≪特級↑≫

彼岸花リコリス】分家チームランク≪上級↑≫



その他。

・悠里の打刀損壊

大地の大幻獣(ベヒモス)の死骸の所持。

・巨獣大量に所持

・竜種大量に所持

・グリフォン五体所持

・戦場の掃除のため、皆が魔物を大量に保管中

----------


第3章 完


ブクマ、★評価、レビュー、♥応援、コメント等 皆さまの反応を頂けるのが嬉しく思います。動力源です。面白いと思ってもらえるものにできるように頑張ります。

あ、拡散とか布教とかしてもらえると大変喜びますん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
悠里くんやってくれました! 褒美として爵位もあり得るんですねぇ!! 爵位持ちのシーカーって言うのも在りかも!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ