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第3章 第11話 オークション最終日(2)

 悠里達はオークションの進行をあまり真剣に見ていなかったのだが、大鎚、大斧、穂先の小さな槍、斧槍、小剣、冗談みたいに馬鹿でかい両手剣 などと武器が続いている間は気になって競りを鑑賞していた。オークショニアが自信満々に付与された性能などを読み上げてはいかな銘品かと語り聞かせ、客の熱を引き上げて行く。


 結果、数千万や億越えの値段で次々と落札されるのをみて、白目を剥きそうになった。

 オークショニア、盛り上げ上手にも程がある。


 続いて、完全に儀礼用な全身甲冑や宝飾の凝らされた宝剣、付与効果など何もないただの宝石のネックレスなども、顎が開きっぱなしになるような値段で落札されていく。あんな実用性のない物でも価値を付ける人は付けるんだなぁ……と感慨深かった。



 残りの財宝も少なくなってきたところで、スタッフが【彼岸花リコリス】を呼びに来た。そろそろ最終日の挨拶のお時間らしい。


 スタッフに案内されるまま六人で舞台の袖に到着し、全ての品目が終了するのを待つ。ラスト二品は同時に舞台上に展示され、オークショニアが声を張り上げる。


「さて、本日のオークションも残すは最後の二点となりました。二点を同時に展示したのには意味があります。さぁご覧ください!見て察しのついた聡い方も居るようですね?


 クラレントの森深くに聳え立つ忘れられた古城。その宝物庫から発見されたのは、王権の象徴たる【王笏セプター】と【王冠クラウン】でございます!!


 忘れ去られしかつての亡国。その宝物庫に収められていた【王笏セプター】と【王冠クラウン】。浪漫しかないと断言します!!


 このオークショニアからのささやかな我儘です。二点はセットでの落札に限定します!

 この浪漫を傍らに美酒にに酔いしれるのは一体誰なのか!?

 一億ゼニ―からのスタートです!!」



 盛り上げ上手なオークショニアさんが煽り散らかし価格の吊り上げがコールされ続ける。一体いくらになっているのだろうか……。


 悠里からすると確かに浪漫はあるが実用性が皆無なので、一〇〇万ゼニ―でも買わない品である。


 カンカンッ!とハンマ-が打ち鳴らされ、最終価格は二〇億ゼニ―で落札されていた。あまりの結果に呆然とした。悠里だけじゃなくて【彼岸花リコリス】全員が同様である。


 オークショニアさんが舞台袖にスタンバイした【彼岸花リコリス】を呼び、ハッと我に返って六人で舞台に進む。


 大熱狂の歓声が上がる。ここまでの事態になるとは全く思っていなかった。内心ビビりつつ両手を挙げて観客席に手を振ると、歓声が更に強まった。


 オークショニアさんから【拡声】の魔道具を受け取る。正直ノープランで挑んだ締めの挨拶である。内心困りつつも口を開くことにする。


「シルトヴェルドの探索者シーカーズギルド所属、≪上級≫ランクのチーム【彼岸花リコリス】で、リーダー役の悠里です。


 初日のご挨拶ぶり以来ですが、皆さまこの三日間はお愉しみいただけましたでしょうか?最終日の武具や財宝など、あまりの熱狂ぶりに私達も熱くなりました。

 財宝達が、より高く評価してくれる方々の手に渡ったであろうこと、嬉しく思います。


 私達はまだしばらくはこの街を拠点に、クラレントの森で狩りや探索を予定しています。魔物素材の新たな入荷にはご期待ください。新たな財宝については……もし出会うことができたましたら、再びこうして皆様の前に立つ時があるかもしれません。


 改めて、三日間のお付き合い、ありがとうございました。盛り上げ上手のオークショニアさんも、ありがとうございました」


 【拡声】の魔道具をオークショニアに返し、六人で礼をして舞台袖に掃けていった。




 舞台裏から降りて控室に案内されると、ようやく緊張感から解放されてぐったりとソファーに座り込んだ。


「思ってた以上にえらいことになってたね」


「いや、ほんと。【彼岸花リコリス】の取り分でいくら入ってくるのか想像もできないぞ」


 悠里がそう零すと、祥悟が大きくうなずいた。

 悠里がダラけた恰好から座り直して、姿勢を正し、皆に問う。


「今以上に良い装備に更新するのが探索者シーカーの正しいお金の使い方なんだろうけど。しばらくは装備変えずに、皆で住める館でも買わないか?風呂とか男女別に作ってゆったりできる広さにしてさ、全員に一部屋ずつ割り当てて。庭もデカいのが良いな。模擬戦や鍛錬に使える広さが欲しい。それで探索者シーカー活動の方はアリスレーゼとミヤビの成長を優先して、二人が育ったら森の奥に再度アタック掛けてみるとか」


 悠里が自分の願望を皆に伝え、全員の顔を見渡してみる。とりあえず嫌そうな顔の人はいないようだ。


「俺の願望としてはさっき言った通りなんだけど、皆はどう思う?やりたい事や行きたいところがあるなら正直に言ってみて?」


「良いんじゃない?館で」


「私も館で良いよ。西の迷宮都市に行きたくなったらこっちの館を売っても良いし」


「ん。贅沢な宿屋暮らしも良いけど、館で皆で住むのは魅力的」


「昨日から驚くことばかりで頭と感情がついてこれてない気がするけど。館を買うなら管理する人材も雇わないとね」


「そうですね、ほんとはアリスレーゼさんと私がメイドをやれれば良いんですけど、その時間を鍛錬に注ぎ込んだ方が良いんですよね?」


 祥悟、湊、エフィ、アリスレーゼ、ミヤビの順で悠里の判断に肯定的な意見を返した。


「それじゃ、明日から探索者シーカーギルドで館を買う相談に乗ってもらおうか。良い不動産屋とか紹介してもらえれば話が早いし。商業ギルドに行けって言われるかもだけど」


「おっけー。ところでオークションの売上額はいつもらえるんだろな?聞いてから帰ろうか」


 悠里が明日からの動きを暫定的に決定し、祥悟も同意しつつ、入金のアテについて気にする。


「入金自体は多少遅くても良いんだけど、入金予定の内訳と合計金額くらいは先に教えて欲しいかな……。じゃないとどのくらいの予算で考えれば良いか分からないしね」


 とりあえずスタッフさん捕まえて聞くだけ聞いてみて、それから宿屋に帰る方向で話がまとまった。




彼岸花リコリス】は控室から出ると、舞台裏の方に戻ってみた。予想通りスタッフが残っていたので、話を聞いてみた。


「入金は落札者の支払いが終わったら、ですね。今頃落札者の皆さんから代金を徴収しに回っているはずです。【彼岸花リコリス】さんの予定金額はまだ知らされていないので、内訳とか書類に起こしてお渡しする予定です」」



 スタッフさんの回答を聞いて仕方ないかと思いつつ、裏口に案内してもらって徒歩で宿屋に帰った。興味深そうに眺められつつも絡まれることなく宿屋に着き、各自自室で着替えを済ませて一階で食事をした。


 食後は精神的な疲労がどっと襲ってきて、ベッドに直行して眠るのだった。


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