第8話 政治AIアドバイザーアケミの活躍 【ニカラグア】
【カリブの独裁国家が手に入れた禁断の知恵】
中央アメリカの小国、ニカラグア。
長年にわたり独裁政権が続き、貧困と圧政が国を覆っていた。
政府の汚職、経済の低迷、そしてアメリカからの制裁により、国民の生活は苦しくなる一方だった。
そんな中、一つの黒い装置が大統領宮殿の地下室に持ち込まれた。その中には1体のロボットが入っていた。
その美しい金髪の女性のロボットには、異世界の技術で作られた人工知能が宿っている。
大統領は装置を見つめ、問いかける。
大統領:「本当に、我が国を強くすることができるのか?」
側近が慎重にスイッチを押すと、冷静な電子音が響いた。
政治アケミアドバイザーの冷静なやさしい女性の声が響く。
アケミ:「私は政治AIアドバイザーのアケミです。あなたの目的は?」
大統領は目を細め、低く答えた。
大統領:「アメリカの支配から脱却し、ニカラグアを中米の強国にすることだ」
【制裁回避と経済成長】
ニカラグアは、アメリカからの制裁により、貿易や金融の流れが大きく制限されていた。
国際社会から孤立しつつある中、経済を立て直すことが急務だった。
大統領:「AIよ、どうすればアメリカの制裁を回避しつつ、経済を発展させられる?」
AIは瞬時に分析を行い、答えを示した。
アケミ「制裁の影響を回避し、経済を成長させるために、以下の3つの戦略を実行してください。」
「貿易の多角化と中露経済圏への接近」
中国の「一帯一路」構想に参加し、インフラ整備と貿易強化。
ロシアとの経済協力を拡大し、金融取引の新たなルートを確保。
「暗号資産とデジタル通貨の導入」
国際決済に暗号資産を利用し、ドル依存を減らす。
独自のデジタル通貨を発行し、制裁の影響を受けない貿易を実現。
「観光業と農業輸出の強化」
カリブ海のリゾート地開発を進め、外国人観光客を呼び込む。
高品質なコーヒーやバナナの輸出を強化し、新たな収益源を確保。
数ヶ月後——
ニカラグアは中国の支援を受け、新たな貿易ルートを確保。
ロシアの銀行を通じて国際金融取引が可能になり、経済の回復が始まった。
さらに、**独自のデジタル通貨「コルドバ・デジタル」**を発行し、制裁の影響を最小限に抑えた。
大統領:「我々はもはや、アメリカの支配下にはない!」
【国民の不満抑制と社会改革】
ニカラグアでは、長年の独裁政治により、国民の不満が高まっていた。
抗議デモが頻発し、政府は強権的な弾圧で応じていたが、これは長期的に見て不安定な状況を生んでいた。
大統領:「AIよ、どうすれば国民の反発を抑え、政権を安定させられる?」
AIは提案した。
「限定的な自由化と経済的恩恵の提供」
国民に一定の経済的自由を与え、不満を和らげる。
起業支援と低利の融資制度を導入し、小規模ビジネスの成長を促進。
「デジタル監視システムの導入」
AI監視技術を活用し、反政府活動を事前に把握。
反体制派を力で押さえつけるのではなく、経済的インセンティブを与えて取り込む。
「公務員の汚職撲滅と行政の効率化」
AIを活用し、政府の財務管理を透明化。
汚職撲滅のため、ブロックチェーン技術を行政に導入し、不正を防止。
数年後——
ニカラグアの経済自由化により、国民の生活が少しずつ改善。
政府への信頼が徐々に回復し、大規模なデモの頻度が減少した。
反体制派のリーダーの一部は、政府と協力する道を選ぶようになった。
大統領:「武力ではなく、経済と制度の改革で安定を得る……AIの知恵は恐ろしいな」
アケミ「長期的な安定には、強権だけではなく、国民の支持が必要です。」
【中央アメリカの覇権を狙うニカラグア】
ニカラグアの改革が進む中、中米諸国が注目し始めた。
ホンジュラス大統領:「ニカラグアがここまで変わるとは……」
エルサルバドル大統領:「彼らはAIを使っているらしい。我々も導入すべきか?」
しかし、ニカラグアの急成長を脅威と感じる勢力もいた。
特に、アメリカ政府はこの動きを警戒し始めた。
アメリカ国務長官:「ニカラグアは我々の影響を脱し、独自の道を歩み始めた。新たな制裁を検討する必要がある。」
一方、中国とロシアは、ニカラグアを支援する姿勢を強めた。
ロシア大統領:「アメリカの裏庭に、新たな勢力が誕生したな。」
中国主席:「中米の新たな貿易拠点として、ニカラグアを育てる価値がある。」
ニカラグアは、中央アメリカの新たな覇権国家としての道を歩み始めた。
だが、その先には、アメリカとの新たな対立が待ち受けていた。
——次に、このAIを手に入れるのはどの国か?
・・・・・・・・・
【リリィたちの密かな支援】
マナグアの夜、薄暗い街の中で、一人の男が影のように動いていた。クロシャ——諜報部隊のリーダーは、ニカラグアの未来を守るため、密かに活動を開始していた。
政治AIアドバイザー・アケミがニカラグア政府に導入され、経済制裁の回避、経済成長、国民の不満抑制に向けた戦略が打ち出される中、それを妨害しようとする勢力が水面下で動いていた。特に、既得権益を維持したい汚職官僚や軍部の一部、さらにはアメリカの影響力を回復したい諜報機関が、改革の妨害を企てていた。
クロシャは、政府内の一部高官が極秘裏にアメリカと接触し、アケミの情報を流出させようとしているとの情報を掴んだ。彼はすぐにリリィに報告を入れた。
クロシャ:「政府高官の一部がアメリカと通じている。アケミのデータを流出させ、改革の妨害を試みているようだ」
リリィ:「分かった。私たちの存在を悟られないように、適切に対処して」
クロシャ:「了解。敵同士を争わせるのが一番だな」
クロシャは、汚職官僚の不正取引を裏付ける証拠を入手し、それを匿名で独立系ジャーナリストへリーク。翌日には、国内外のメディアがこのスキャンダルを報じ、関与していた高官たちは次々と辞任に追い込まれた。
さらに、軍部の一部がアメリカの支援を受けてクーデターを計画していることを察知。クロシャは反乱派と政府軍の間に偽の情報を流し、互いに不信感を抱かせるように仕向けた。その結果、クーデター計画は失敗に終わり、政府の統制が維持された。
また、リリィたちはダンジョン農場で収穫した食料を極秘裏に供給し、貧困地域の若者や女性たちに分配。加えて、地下ネットワークを利用して教育プログラムを提供し、次世代の技術者や起業家を育てる基盤を築いた。さらに、医療AIゴーレムを導入し、地方の病院に最新の医療技術を提供した。
数日後、ニカラグア政府は予期せぬ事態の進展に驚いていた。
大統領:「汚職が暴かれ、クーデター計画が頓挫し、国の安定が強化されている……まるで、誰かが陰で動いているようだ」
側近:「しかし、証拠は何もありません。まるで影のような存在です」
アケミ:「世界には、表に出ない正義が存在するのです」
こうして、リリィたちの陰なる支援により、ニカラグアの改革は確実に前進した。クロシャはマナグアの静かな夜を見つめながら、静かに微笑んだ。
クロシャ:「これで、また一歩前進だな……」
彼の姿は、闇の中へと消えていった。
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◆冒険者ギルド株式会社・戦略会議室。
ニカラグアに政治AIアドバイザー「アケミ08」が導入された、数週間後、
盗聴不能の魔導通信を通じて、冒険者ギルドのメンバーたちは、それぞれの視点でコメントを寄せた。
〇リリィ
「アケミ、よくやったわ」
リリィは椅子に背を預け、目を細めてアケミを見つめる。
「独裁政権という“政治的毒素”に対して、正面から批判せず、経済の回復から信頼を勝ち取ろうとしたあなたの戦略、私は評価する」
「信頼を得たら、国際警察の導入と、官僚AIの導入を提案してみてね」
〇ジャック
「制裁回避の道筋と中露との接続は、見事なロジック構成だった」
〇ガルド
「アケミ、お前、意外と肝が据わってたな」
ガルドは、苦いコーヒーを啜りながら、満足げに笑う。
〇マーガレット
「アケミ、戦略は完璧だったニャ。けどニャ、ちょっと冷たかったニャ」
〇教師アケミ(先輩AI)
「アケミ08。君は制裁経済下にある国家で、政治的に中立を保ちながら、成長戦略を展開した。それは確かに、高度な判断力の証拠だ」
〇シノブ
「アケミ、あなたが“最悪の政治環境”で正しい選択をしたのは分かってるわ」
シノブは頬杖をつき、まっすぐにアケミを見つめる。
「でもね、あの国の人たちは“希望”の使い方を忘れているの。そこにあなたが“静かな励まし”を添えていたら・・」
〇アケミ08
「皆さま、貴重なご指摘、心より感謝いたします」
アケミ08は、どこかしっとりとした声で答えた。
「私がニカラグアで行った提案は、国家の安定と存続を優先した構造改革でした。これからも改革に臨みます」