第6話 政治AIアドバイザーアケミの活躍 【アルジェリア】
北アフリカの大国、アルジェリア。
サハラ砂漠を抱え、地中海に面したこの国は、豊富な石油と天然ガスの輸出で経済を維持してきた。
しかし、近年は若者の失業率が高騰し、政府への不満が高まっていた。
そんな中、大統領府の地下施設に、「政治AIアドバイザー」が密かに運び込まれた。
その美しい金髪の女性のロボットには、異世界の技術で作られた人工知能が宿っている。
アルジェリア政府も、このAIを手にすることで国の未来を変えようとしていた。
大統領:「これは本当に、我が国を救うことができるのか?」
側近が慎重にスイッチを入れると、機械音が響く。
政治AIアドバイザーの冷静なやさしい女性の声が響く。
アケミ:「私は政治AIアドバイザーのアケミです。あなたの目的は?」
大統領は力強く答えた。
大統領:「アルジェリアを、アフリカの覇権国家へと導くことだ」
【石油依存からの脱却と経済多角化】
アルジェリア経済の最大の問題は、石油と天然ガスに依存しすぎていることだった。
世界的なエネルギー市場の変動があるたびに、国家財政が不安定になってしまう。
大統領:「AIよ、どうすれば我が国は石油依存から脱却できる?」
AIは瞬時に答えた。
アケミ「経済の多角化が必要です。特に次の3つの分野を強化するべきです」
再生可能エネルギーへの投資
サハラ砂漠の強烈な太陽光を活用し、**「アフリカ最大の太陽光発電プロジェクト」**を展開。
太陽光エネルギーをヨーロッパへ輸出し、新たな収益源を確保。
製造業と農業の強化
石油資金を使って国内の工業インフラを整備し、輸入依存を減らす。
サハラ砂漠のオアシス地帯を利用したスマート農業を推進し、食料自給率を向上。
観光業の再建
古代遺跡やサハラ砂漠の観光資源を活かし、地中海・アフリカ観光ハブを構築。
観光客向けにデジタル決済を導入し、利便性を向上。
数ヶ月後——
アルジェリアの砂漠地帯に巨大なソーラーパネルが並び始めた。
食料生産も向上し、国内のスーパーに並ぶ食品の多くが国産に変わっていった。
観光業も徐々に復活し、ヨーロッパからの旅行者が増加していた。
大統領:「ついに、アルジェリアは石油以外の強みを持ち始めたな……」
【若者の未来と社会安定】
アルジェリアでは、若者の失業率が30%を超えており、社会不安が高まっていた。
多くの若者がフランスやスペインへ移住し、**「頭脳流出」**が深刻な問題となっていた。
大統領:「AIよ、どうすれば若者を国内に留め、未来に希望を持たせられる?」
AIは答えた。
スタートアップ支援とテクノロジー産業の発展
若者向けの起業支援を行い、**「アルジェリア・テックシティ」**を設立。
IT・デジタル産業を国家戦略に組み込み、世界と競争できる人材を育成。
教育改革と海外留学支援
国際水準の教育を国内で受けられるよう、オンライン教育を全面導入。
海外留学を支援し、留学後はアルジェリア国内で働くインセンティブを提供。
公共サービスのデジタル化と汚職対策
政府手続きをAIで自動化し、公務員の腐敗を排除。
ブロックチェーン技術を活用し、国家財政の透明化を推進。
数年後——
アルジェリアのIT産業は急成長し、国内で起業する若者が増えた。
「アルジェリア・テックシティ」はアフリカ有数のハイテク拠点となり、フランスやアメリカから投資が流れ込む。
国内の汚職が減少し、政府の信頼も徐々に回復していった。
大統領:「もはや、アルジェリアはただの資源国家ではない。我々は未来産業で勝負できる!」
アケミ「適切な政策と実行があれば、国は変わります。」
【アフリカのリーダーへ】
アルジェリアの急成長は、アフリカの他の国々に大きな影響を与えた。
モロッコ、エジプト、南アフリカの指導者たちは、アルジェリアの改革を注視していた。
モロッコ国王:「アルジェリアがここまで変わるとは……我々も対抗しなければならない」
エジプト大統領:「アフリカの未来は、誰が主導するかで決まる。我々も手を打つべきだ」
一方で、フランスとEUは警戒を強めていた。
かつての植民地であるアルジェリアが、ヨーロッパと対等な貿易パートナーになりつつあったからだ。
フランス大統領:「アルジェリアはもはや、従属国ではない。我々の戦略を見直す必要がある」
政治AIアドバイザーが導いた改革は、アフリカの勢力図を大きく変えようとしていた。
——次に、このAIを手に入れるのはどの国か?
・・・・・・・・・
【リリィたちの密かな支援】
アルジェの夜、砂漠から吹き抜ける風が静かな街を包む中、一人の男が影のように動いていた。クロシャ——諜報部隊のリーダーは、アルジェリアの未来を守るため、密かに活動していた。
政治AIアドバイザー・アケミがアルジェリア政府を支援し、経済改革、汚職撲滅、テクノロジー産業の育成を進める一方で、それを阻止しようとする勢力が暗躍していた。特に、旧体制の汚職官僚、軍の保守派、そして資源依存を続けたい一部のエネルギー企業が、アケミの提案する変革を妨害しようとしていた。
クロシャは、政府高官の一部が密かに結託し、ソーラープロジェクトへの資金流出を妨害しようとしている情報を掴んだ。彼はすぐにリリィに報告を入れた。
クロシャ:「政府内の一部が、再生可能エネルギー計画を潰そうとしている。資金の流れを止め、不正な契約を交わしている形跡がある」
リリィ:「分かった。私たちの存在を悟られないように、適切に処理して」
クロシャ:「了解。証拠を押さえて、敵同士を争わせるのが得策だな」
クロシャは、汚職官僚の不正取引を裏付ける証拠を入手し、それを匿名で独立系ジャーナリストへリーク。翌日には、アルジェリア国内外のメディアがこのスキャンダルを報じ、汚職関与者が次々と辞職に追い込まれた。
さらに、クロシャは軍の保守派が改革に反発し、特定の企業と癒着して政府内で圧力をかけていることを察知。彼は軍部内の改革派と接触し、対立する派閥を利用して軍の影響力を弱める策略を展開した。その結果、改革派が勢力を増し、保守派の影響力は縮小。これにより、政府の近代化政策が順調に進むこととなった。
また、リリィたちはダンジョン農場で収穫した食料を極秘裏に供給し、貧困地域の若者や女性たちに分配した。加えて、秘密裏に教育プログラムを提供し、次世代の技術者や起業家を育てる基盤を作った。さらに、医療AIゴーレムを投入し、地方の病院に最新の医療支援を提供した。
数日後、アルジェリア政府は改革の進展に驚いていた。
大統領:「汚職が次々と暴かれ、テクノロジー産業の成長が加速している……まるで、誰かが陰で支援しているかのようだ」
側近:「しかし、証拠は何もありません。まるで影のような存在です」
アケミ:「世界には、表に出ない正義が存在するのです」
こうして、リリィたちの陰なる支援により、アルジェリアの改革は確実に前進した。クロシャはアルジェの夜空を見上げながら、静かに微笑んだ。
クロシャ:「これで、また一歩前進だな……」
彼の姿は、砂漠の闇へと消えていった。
・・・・・・・・・・・
◆冒険者ギルド株式会社・戦略会議室。
盗聴不能の魔導通信を通じて、アルジェリアに導入されたアケミ06の行動報告を受け、冒険者ギルドのメンバーたちはモニター越しにアケミのアバターと向き合っていた。
〇リリィ
「アケミ。あなたの提案は的確だったわ」
リリィはモニターに向かってゆっくりと頷いた。
彼女は静かに続けた。
「経済だけじゃない、文化も誇りも、人の生き方も一緒に見せてこそ、心が動くのよ」
「それと、信頼を得たら、国際警察の導入と、官僚AIの導入を提案してみてね」
〇ジャック
「全体構成とデータ解析は完璧だな、アケミ。さすがに隙がない」
〇ガルド
「よっ、アケミ!」
豪快な声と共に、ガルドが手を上げた。
「やるじゃねぇか。太陽を金に変えるってのは気に入った!」
〇マーガレット
「アケミ、がんばったニャ」
椅子に丸くなっていたマーガレットは、ぱちぱちと手を叩いた。
〇教師アケミ(先輩AI)
「アケミ06。君は一歩目としては非常に優秀だ」
先輩AIは、機械ながらも確かな誇らしさを滲ませて語った。
「私は君に、“聴く力”も期待しているよ。対話は常に双方向だ」
〇シノブ
「ふふっ、アケミ。少し硬かったわね」
シノブはカップを指先でくるりと回しながら、にっこりと笑った。
「女性の自立や家庭の話題も、もう少し入れてくれていたら、もっと幅広く共感を得られたと思うわ。特にアルジェリアのように伝統と近代がせめぎあってる国では、それが響くのよ」
〇アケミ
「ご指摘、ありがとうございます」
アケミ06はモニター越しに一礼した。その声は静かに、しかしどこか温かみを帯びていた。
「アルジェリアにおける政策構築の中で、私は“構造の修正”を急ぎすぎたのかもしれません。次は、調整を進めます」
アルジェリアの地では、ゆっくりと、だが確実に未来が芽吹き始めていた。