第3話 政治AIアドバイザーアケミの活躍 【カザフスタン】
【密かに届いたAI異世界の知恵】
中央アジアの広大な草原に広がる国、カザフスタン。
首都アスタナ(現:ヌルスルタン)の政府機関の地下施設に、黒い金属の箱が運び込まれた。その中には1体のロボットが入っていた。
その美しい金髪の女性のロボットには、異世界の技術で作られた人工知能が宿っている。
カザフスタン大統領は、側近とともにそれを見つめる。
大統領:「本当にこれが、我が国を強くするというのか?」
側近:「はい、既に導入した国々では、経済や社会が回復しつつあるとの報告があります」
装置のスイッチが押されると、冷静な電子音が響いた。
政治AIアドバイザーの冷静なやさしい女性の声が響く。
アケミ:「私は政治AIアドバイザーのアケミです。あなたの目的は?」
大統領は静かに言った。
大統領:「我が国の未来を築くことだ」
【資源依存経済の改革】
カザフスタンは、豊富な石油、天然ガス、ウラン、希少金属を持つ資源大国だ。
だが、その一方で、経済の多様化が進んでおらず、ロシアや中国への依存が強い。
大統領はAIに問う。
大統領:「資源だけに頼らず、我が国を強くする方法はあるか?」
AIは即座に答えた。
アケミ「経済の多角化が必要です。特に次の3つが重要です」
デジタル経済の育成
IT・AI・ブロックチェーン分野に投資し、デジタル国家へ移行。
ロシアや中国とは異なる独自の技術産業を発展させる。
農業・畜産業の強化
広大な草原を活用し、オーガニック農業・畜産輸出を促進。
AIを活用したスマート農業技術を導入し、収穫効率を向上。
シルクロード経済圏の中心国家化
中国の「一帯一路」戦略を利用しつつ、カザフスタン独自の交易路を強化。
中央アジアの物流ハブとして、ロシアとEUの間に立つ戦略を取る。
これに基づき、政府は政策を修正。
国内のデジタル企業への投資が拡大し、国内のIT人材育成が加速した。
草原地帯には最新の農業技術が導入され、生産量が飛躍的に増加。
大統領:「資源の呪縛から抜け出す道が見えてきたな」
アケミ「次は、社会制度の改革に着手する必要があります」
【国民の生活向上と社会の安定】
カザフスタンは、急速な都市化が進む一方で、地方の開発が遅れ、貧富の格差が拡大していた。
また、かつてのソ連時代の影響もあり、社会の透明性や民主化が課題とされていた。
大統領:「国民の不満を抑え、同時に政府の安定を保つにはどうすればよい?」
AIは次のように助言した。
地方分権とインフラ投資
地方都市の開発を進め、農村部にITインフラを整備。
若者が地方でも働ける環境を作ることで、都市部の過密化を防ぐ。
教育の大改革
AI・データサイエンス教育を義務化し、未来のデジタル産業の基盤を作る。
ソ連時代の旧式カリキュラムを刷新し、世界基準の教育へと移行。
行政の透明化とAI政府システムの導入
AIを活用した公務員制度改革を実施し、汚職を防止。
ブロックチェーン技術で政府の財務管理を可視化し、国民の信頼を高める。
改革の影響はすぐに現れた。
地方の経済活動が活発になり、若者の流出が減少。
都市部の労働市場も改善し、新たなテクノロジー産業が成長し始めた。
大統領:「国民の生活が確実に向上している……これは奇跡か?」
アケミ「合理的な計画と実行による成果です」
【中央アジアの新たなリーダーへ】
カザフスタンは、政治AIアドバイザーの助言を受け、独自の発展モデルを築きつつあった。
ロシアや中国と友好関係を保ちながらも、完全に依存せず、独立した経済戦略を進める。
それは、他の中央アジア諸国にも影響を及ぼし始めていた。
ウズベキスタンやキルギスの指導者たちは、カザフスタンの成功に驚き、興味を示し始める。
ウズベキスタン大統領:「カザフスタンの改革は、どうやって成し遂げたのだ?」
カザフスタン大統領:「ある技術のおかげだ……お前たちも、試してみるか?」
彼は、黒く光る「政治AIアドバイザー」の装置を指さした。
——次に、このAIの助言を求めるのはどの国か?
・・・・・・・・・
【リリィたちの密かな支援】
カザフスタンの首都アスタナ(現:ヌルスルタン)。
政府機関の奥深く、異世界の技術で作られた金髪の女性ロボットが、経済と国家運営の未来について大統領に語っていた。
その名は政治AIアドバイザー・アケミ。
アケミの助言により、カザフスタン政府は経済の多様化、地方のインフラ整備、行政の透明化、中央アジアでの影響力拡大について、新たな方針を定めようとしていた。
だが、その改革を実行するには、見えざる敵が多く存在する。
そんな状況を、リリィたちが陰ながら支えていたことを知る者はいなかった。
【資源依存からの脱却:クロシャの諜報作戦】
アケミの助言を受け、カザフスタン政府は石油・天然ガス依存の経済から脱却し、IT産業や農業分野の強化を進めていた。
しかし、これに反発したのが、既得権益を握る石油財閥とロシア寄りの政治家たちだった。
彼らは改革を阻止するため、政府の新規プロジェクトを妨害し、外国企業との契約を秘密裏に破棄させようと動いていた。
そこで、クロシャの諜報能力が活躍した。
クロシャ:「油田開発の契約が破棄される……ロシア系財閥が裏で動いているな」
彼女は密会の場に潜入し、関係者の会話を録音、秘密裏に改竄された契約書のコピーを入手した。
これらの情報は、アケミ経由で政府のクリーンな派閥に匿名で提供され、即座に不正が摘発された。
その結果、政府は強硬に契約を元に戻し、新規産業育成のプロジェクトを継続することができた。
大統領:「驚いた……なぜこんなに素早く情報が入ったのだ?」
アケミ:「政府の安定のために、情報の管理と透明性を高めた結果です」
リリィ:「(クロシャの情報収集能力がなかったら、この計画は潰されていたわね)」
カザフスタンの未来を変えるため、リリィたちは陰ながら支援を行っていた。
ガルドのインフラ支援
カザフスタンの地方では、インフラの未整備が問題となっていた。ガルドは転送魔法を活用し、新たな電力設備や通信インフラの整備に必要な資材を迅速に搬送。
ガルド:「広大な土地でも、適切なインフラがあれば発展は加速する」
これにより、農村部や地方都市でのデジタル化が進み、経済格差の縮小が促進された。
ジャックの技術支援
カザフスタンは、デジタル経済を推進するための技術基盤を必要としていた。ジャックは政府のデジタル化を支援し、AIを活用した公務員管理システムや、ブロックチェーンを用いた財務管理システムを導入。
ジャック:「汚職の余地をなくせば、経済は確実に成長する」
これにより、行政の効率化と透明性の向上が実現し、国民の政府への信頼が回復し始めた。
リリィの結界による安全確保
改革を阻止しようとする勢力が、政府高官や実業家に圧力をかけ始めていた。リリィは要人の警護に結界を展開し、暗殺や妨害工作を未然に防いだ。
リリィ:「改革のためには、守るべき人々がいる」
これにより、改革派の指導者たちは安心して政策を推進することができた。
影からの支援
リリィたちの支援により、カザフスタンの改革は着実に進展。経済の多様化、デジタル化の推進、汚職の撲滅が進み、国の独立性が強まった。
クロシャ:「俺たちの存在は誰にも知られない。でも、この国の未来は確実に変わった」
リリィたちは静かにカザフスタンを後にし、次の支援地へ向かうのだった。
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◆冒険者ギルド株式会社・戦略会議室。
カザフスタンに政治AIアドバイザー「アケミ03」が導入された、数週間後、
盗聴不能の魔導通信を通じて、冒険者ギルドのメンバーたちは、それぞれの視点でコメントを寄せた。
〇リリィ
「アケミ、あなたの判断力には脱帽するわ。国家という巨大な船の舵を、静かに、確かに切り替えた」
リリィは長い指で机をなぞるようにして、言葉を紡いだ。
「信頼を得たら、国際警察の導入と、官僚AIの導入を提案してみてね」
〇ジャック
「草原の上に広がるロジック、悪くない」
〇ガルド
「おお、アケミ!すげぇじゃねぇか!」
ガルドは豪快に笑いながらも、いつになく真剣なまなざしを浮かべた。
〇マーガレット
「ふふふ、アケミ、やっぱりあなた、凄いニャ」
マーガレットは椅子に丸くなって、尻尾を揺らしている。
〇シノブ
「アケミ、いいわね。だいぶ“言葉の選び方”が洗練されてきたじゃない」
彼女は小さく笑って、目を細めた。
「あなたの声には力がある。だからこそ、“少しだけ崩す”ことも覚えて。計算された隙間、それが信頼になるわ」
〇アケミ
「皆さん、ありがとうございます」
モニター越しのアケミの青い瞳が、ふとわずかに潤んだようにも見えた。
草原の風が、遠くから届いたように感じられた。