37話 腐敗臭の中
暑さは私たちを苦しめていた。
「セラフィス」
「どうした~?」
「転生する前、こんな話を聞いたことがあるんだよ。寒風では旅人は衣を纏うだけだが熱さは根をあげさせるっていう言葉を」
「確かに寒かったら服を着こんだらいいのに暑かったらすっぽんぽんになっても暑いだけだもんね」
「もうこうなったら早くクエストを終わらせて涼もうよ」
「いいね……」
その時、地鳴りが起きた。
「地震!?」
「いや違うな……なんだ?この死臭は」
セラフィスはあたりを見るがどこにも異変が無かった。
「……スイ、3カウントでラクダをトップスピードで走らせるぞ」
「何があったの?」
「3…2……1……」
セラフィスは一気にラクダを走らせ、私の下に居るラクダも勢いよく走った。
「一体何なのよ!?」
「今すぐこの場を離れないと!私たちは死ぬ!」
セラフィスは切羽詰まった表情でこう言った。
「はぁ!?今死ぬって言った!?」
「無駄口は叩かずに早く逃げるぞ!」
その時、後ろから地面が割れるような衝撃と音が鳴り響いた。
「後ろにいる奴が私が警戒してたやつだ!しかし大きい!どれだけ人を喰ってきたんだ!?」
「人を喰ってきたってえぇ!?」
「どこか身を隠せる場所は無いのか!?」
セラフィスはどこか身を隠せる場所を探していた、だがラクダの体力はどんどんと無くなっていった。
「まずい!いったん木にしがみつくぞ!」
セラフィスは木に触手を絡め、私も触手で掴まれて木の上に避難した。
「しかしなぁ……ありゃ数百、下手したら数千人喰ってるぞ?」
「あれって何なのよ!?」
「サンドワームだ、ここの砂漠地帯に居るのが本当に最悪だ」
「サンドワーム……と言う事は私たちを餌って思ってるの!?」
「ああ、どうやってこの場を切り抜けようか……サンドワームは立ち上がってくるからな、今すぐこの場を去らないといけない」
サンドワームは私たちを食べようと背を伸ばしていた。
「その触手で一突きできないの!?」
「できない、硬い歯に阻まれそうだ……一点に衝撃を集中させたら何とかひびは入れれるのかな」
「一点に集中?」
その時、ボロボロの黒いローブに身を包んだ人が現れた。
「あの人は何なの!?」
「知らない」
するとセラフィスは大声で黒いローブの人に話しかけた。
「そこに居たら危ないぞ!」
サンドワームは黒いローブの人に向かって行ったがその黒ローブの人はサンドワームに一発、魔法を食らわせた。
「あれ」
魔法はサンドワームに当たった、だが効いていなさそうだった。
「いやっ!やめて!」
黒ローブの人はサンドワームに咀嚼され、骨が折れる音が聞こえてきた。
「言わんこっちゃない。ってあれ、スイは?」
「うおー!待たんかいコラァ!!!」
「スイ!?」
私はさっきの黒ローブの人を助けようと無策で木から飛び降りていた。
(さてと、絶体絶命だがどうするか……体内に飛び込んで内部からぶっ殺すか?だとしても消化液でグチャグチャになるから嫌だ、それに骨が折れる音がしてたし明らかにヤバイ。だとするとどうする!?)
私は砂を見た。
(そうだ、砂だ)
私はバックパックから水を出し、砂を片手に掬い、それに水をかけた。
「よっこいしょ」
私は魔法陣を展開した、だが魔法陣の色が白や緑ではなく赤だった。
(今は絶好調だから赤の魔法陣か!)
私はサンドワームに泥を投げた、その泥は魔法陣の威力増幅で歯をぶっ壊していった。
「ギョラララララ」
サンドワームは歯が粉々になった痛みで悶えていた。
「さてと、セラフィス、貫けるよね?」
「ああ……だが砂に水をしみ込ませて泥にした挙句、サンドワームにぶん投げるなんて、常人の域を越えてる。やっぱり好きだ」
セラフィスはサンドワームの頭の部分に触手を突き刺した。
「さて、これで動けないはずだ、それでどうするんだ?」
「もちろんあの人を助けに行くでしょ?」
私はサンドワームの口の中に入って行った。
「やっぱり常人じゃない……おかしいよ」
サンドワームの体内はとてつもなく臭く、腐敗臭があたりに臭っていた。
「臭っ……しかしあの泥一発で全部の歯が粉々なんて、ペンタグラムにしては強すぎるのかな」
足元が不安定な中、サンドワームの体内を進んで行くと人が倒れていた。
「これは死んでる……それで黒ローブの人……いたっ」
私は黒ローブの人に近づいた。
「大丈夫、まだ息がある」
私は黒ローブの人をおんぶして出口に向かった。
(しかし黒ローブの人の体ぬるぬるしてる……気持ち悪い)
消化液ですでに消化され始めている中、私は根気強く外に向かって歩を進め、そしてサンドワームの体内から出た。
「おかえり~って臭っ!?」
「ただいま、サンドワームの体内臭かったよ」
「臭いどころじゃあすまないよ!?それでさっきの人はこの?」
「うん、だけどもう一往復してくる」
私は再びサンドワームの体内に入っていった。
「スイ……どうしてそこまで内臓フェチなんだ」
さっきの場所に戻ってきた。
「……死体はどうしようか」
私は腐敗していない死体を担ぎ、再びセラフィスの元に戻った。
「ってこいつ死んでるけど!?」
「ああ、もしかしてって思ったんだ」
「……あの親父さんの?」
「そうだ、セラフィスは戻って国の役人に報告して。私はここに残って残りの死体を運搬するから」
「わかった、ならよろしく頼んだ」
セラフィスはラクダを使わず、自身の触手を使って素早く移動していった。
(セラフィス一人の時はあんなふうに移動できるのか……しかしもう豆粒のような小ささだな)
そして私はサンドワームの体内に入り、残りの死体を運び出していった。
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