今日のアンラッキー星座は水瓶座のあなた!
第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞応募作品です。テーマは「星座」。
目玉焼きが半熟で上手く焼け、お皿に盛り付けた所で椿は竜哉に声をかけた。
「タツ、卵焼けたよ」
「こっちもちょうどコーヒー入ったよ」
「いいね! 食べよ~」
椿と竜哉は出会って三年、結婚して一年の夫婦。
共働きで価値観や趣味が合うだけでなく、色々な事が一致していた。
例えば朝の時間。
椿が朝食を作る横で竜哉は鍋を洗ったりコーヒーを淹れたりしてくれる。
二人ともTVはあまり見ないが、天気と交通情報を軽く知れる朝番組は朝食を摂りつつ15分間だけ見る。
そんな些細な事柄も、何も言わなくても歯車が噛み合うようにピタリと合う。最高の伴侶を得た彼らは幸せだった。
『それでは星座占い! 今日の1位は……』
TVが占いコーナーに変わり、二人はそろそろ出勤する時間だと皿を下げる。
『……ごめんなさい~。今日のアンラッキー星座は水瓶座のあなた!』
「えっ最悪」
椿がTVを見て鼻に小さく皺を寄せた。
『大切な人を失うかも!? ラッキーアイテムは手帳、アンラッキーアイテムは階……』
椿はピッとTVの電源を落とした。
「朝からヤな感じ!」
「けど、一応手帳は忘れないようにしよう」
「ふふっ、そうね」
二人は家を出てマンションのエレベーターを待つが、なかなか降りてこない。
「やっぱりアンラッキー。上の階の子供が悪戯してるのかも」
「階段で行く?」
待ちきれず、椿と竜哉は階段を降りる。が。
「あっ」
突然、椿の足がもつれ、竜哉を巻き込んで階段を派手に転がり落ちた。
ズタダダン!
「つぅ……」
「痛た……」
荷物が床にばら撒かれ、散らかった中で二人はゆるゆると起き上がった。
周りを見渡し、竜哉の顔を見た椿は青い顔で言う。
「……あなた、誰? ここ、どこ?」
「えっ……」
椿は階段から落ちたショックで三年前までの記憶を失っていたのだ。
「……あの、その……君こそ誰?」
「えっ……」
なんと竜哉も三年間の記憶を失っていた。
彼らは慌てながら荷物を拾う。そしてカッチリとした黒皮の手帳に同時に手をのばした。
「これはきっと私のよ。ほら、Tのイニシャル」
「いや、俺のだ。ほら、中に俺の生年月日が」
「えっ、私も同じよ」
その時、手帳に挟んだ写真がヒラリと落ちた。写るのは幸せそうな結婚式の二人。
「「あ」」
二人は写真を見て、そして互いに見つめあった。
((うん、タイプ))
「とりあえず、お茶でも飲む?」
「そうね!」
竜哉と椿は微笑み合いマンションを出た。
もうこれ以上アンラッキーが二人に起こる事は無いだろう。
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