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第一話 ⑤ ~山野先生に事情聴取を受けました~

 第一話 ⑤




 四時間目の国語が終わり、昼休みを告げるチャイムが鳴る。

 国語の大山(おおやま)先生が教室から出ていった。


「ふぅ……さぁて。俺は山野先生に呼ばれてるから進路指導室に行かないと」


 と、俺は席を立つ。


「……ねぇ、悠斗」


 ゆらり……


 と朱里が俺の前に立つ。


「この空気の中に残される私の気持ちってわかってる!?ねぇ!!付き合ってるって触れ回るにも限度ってあるよね!!??」

「いやー、なんて言うか嬉しくなっちゃって」

「…………あぅ」

「ダメだよ朱里。いーんちょーの頭のネジぶっ飛んでるからなに言っても無駄とだよ」

「うぅ……ゆーこちゃん……」


 そんな俺たちに詩織さんが声を掛けてくる。


「ふふふ。仲が良さそうで何よりですね?それより悠斗くん。そろそろ行かないと山野先生にまた怒られますよ?」

「あ、確かに。今日は雫の弁当も無いし。パンを買って行こう」


 俺はそう言うと、パンを買いに購買に走って行った。












 パンを三つとコーヒー牛乳のパックを買い、俺は鍵のかかっていない進路指導室の扉をそのまま開く。


 ノックの文化は無いそうなのでそのまま開けた。


 中には凄く不機嫌そうな山野先生がタバコを吸って待っていた。

 そして、机の上には原稿用紙が十枚ほどあった。

 なるほど。反省文は原稿用紙十枚だな!!

 なかなか多いな!!とりあえず、朱里さんへの愛の言葉で埋めて行こう。


「まぁ、座れ桐崎」

「はい!!」


 俺は先生に促され、椅子に座る。


「パン食いながらでいいっすか?」

「……はぁ。随分と回復したみたいだな」


 俺はあんぱんを開けて頬張る。


「この借りは高いぞ?」


 そう言う先生に俺は言う。


「『黒瀬と仲良くしろ』と言われたのは先生では?」

「……はぁ。なるほどな、私にも責任がある。そう言いたいんだな」


 先生はそう言うとタバコを揉み消す。


「とりあえず。成績優秀なお前で、授業態度も悪くない。少なくとも寝てるようなやつとは違うからな。そういう部分もあり、本来なら停学一週間のところを反省文十枚にした。ちなみにあの写真や動画は学校外にも広まっていて、現在進行形で学校には電話が来ている」

「でしょうね」

「……はぁ。本来なら退学ものだぞ?ただ、まぁ初回だし。タバコを吸うとか飲酒するとかに比べたら『まだ』原付バイクのニケツは悪事としては優しいからな。私に感謝しろよ?」

「山野先生への感謝を忘れた日は、入学してから一度もありませんよ」

「……はぁ。口の上手い男だ」


 先生はそう言うと、タバコを一本取りだし火をつける。


「で。どうなった?」


 俺はその問いに、コーヒー牛乳で一度口の中のあんぱんを流し込んでから答える。


「とりあえず早朝に雫にひっぱたかれ、朝に朱里にひっぱたかれ、みんなの前でキスをして、詩織さんの件は一件落着しました」

「ずいぶん端折ったな」

「まぁ、頭のネジを何本か外して行動しました」

「外し過ぎだ馬鹿野郎」


 山野先生はニヤッと笑う。


「とりあえず。詩織さんとの一件は、下手に誤魔化すと拗れると思ったので、正面から行きました」

「確かにな」

「なので、詩織さんと過ごした時間は詩織さんにとっても、俺にとっても大切なものだった。と言うことは否定せず、彼女を普通の友達とは違う『大切な友達』とすることで、彼女とは違うんだと、一線を引きました」

「その件について藤崎は?」

「はい。了解を得ています。朱里も彼女を名前で呼ぶことで、『彼女公認の友人関係』という形に持っていきました」

「恋人ではなく、友人というところに黒瀬を納めたわけだ。しかし、桐崎。黒瀬はそんなんで諦めるとは思わんぞ?」

「えぇ。わかってます。ですが、彼女が何をしてこようと、俺はもう迷わないと決めました」

「そうか。なら結構」


 先生はそう言うと、俺に原稿用紙を渡してきた。


「明日までにこの紙の八割を『埋めて』私に提出だ。お前の気持ちを書いてくれればそれで良い」


 あはは。俺の気持ちで原稿用紙を埋めてこい。


 ってことか。


「わかりました!!八割とは言わず、十割気持ちで埋めてきます!!」


 俺は原稿用紙を受け取り、笑った。


「わかっているとは思うが、このレベルのことからお前を守ってやれるのはこれが最後だ」

「はい。理解してます」

「ちなみに、原付バイクのニケツは法律だから変えられないが、バイクでの通学は校則だから変えられる可能性がある」

「……俺に生徒会長になれと?」

「ふふ、まぁ頭の片隅に入れて置いてくれ。それに現生徒会長はお前に一目置いている」

「こんな悪目立ちする男をですか?」

「ふふふ。良いか悪いかは別として、『知名度』と言うのは必要だからな。そう言う意味では、お前か黒瀬辺りが生徒会に入ってくれると助かるな」

「……はぁ、検討しておきます」

「今回の件で下がった内申点を上げられるかも知らないからな。立候補位はしてみてくれ」

「その時が来れば」


 俺はそう言うと、残ったパンをポケットに入れて椅子から立つ。


「教室に戻ります」

「おう。私はまだここに居るよ」


 俺は先生に一礼して、部屋を出る。






「生徒会長か……」


 興味はある。

 現生徒会長は俺に興味があるそうだし、暇な時にでも軽く覗いてみようかな。


 俺はそんなことを思いながら、教室へと向かった。

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