第二話 ② ~初デート・電車の中に意外な人物が居ました~
第二話 ②
二十分程ポチを走らせ、俺は駅前の無料駐輪場に到着する。
ヘルメットを座席の下のスペースに収め、そこから太い鍵を取り出ししっかりと取り付ける。盗難対策を入念に確認して済ませると、俺は駅へと歩く。
周りの女性が少しだけこっちを見ている気がした。
それは不快なものではなく、そこそこ好意的にも思える視線だ。
身長は180近く。でかく産んでくれた親には感謝だ。
それなりに鍛えてきた身体に、必死に整えた髪型、雫が認めてくれたオシャレな服を身にまとっている。
大丈夫。どっからどうみたってオタク趣味で陰キャな男には見えないはずだ。
財布からカードを取りだし、改札口のカードリーダーに押し付ける。
ピッ!!
という軽快な音とともに、バーが上がる。
残金は五千円ほど。
チャージの必要は無いな。と少しだけ安心し、構内で電車を待つ。しばらくすると電車がやってくる。
乗る電車に間違いがないことをしっかりと確認してから乗り込む。
座席はまばらに空いていたが、服がシワになると嫌なので立っていることにした。
「……あれ?」
ダウンロードしてある電子書籍で時間を潰そうかと、スマホを取り出そうとしたところ、俺の視線の先に居た一人の女性が目にとまる。
漆黒の髪を腰まで伸ばした若くて綺麗な女性。
学園の聖女様だった。
座席の端に座っている聖女様はこちらの視線に気が付く様子もなく、手にしたハードカバーの本を一心不乱に読んでいる。
春休みなのに制服なんだな。
そんな感想を抱きながらも、あんまり見すぎるのも失礼かと思い視線を切る。
電子書籍を開き、読みかけだったラノベを読み始める。
お気に入りの作者の糖分多めのラブコメラノベを堪能していると、三十分程で目的地の駅へと到着する。
俺はスマホをカバンにしまい、電車を下りる。
まだ乗ってる。
何処へ向かうつもりなのかは知らないが、聖女様はまだ電車の椅子に座っていた。
デートの待ち合わせに指定していたこの駅はそこそこ大きな駅だったので、降りる場所も同じかな?と思っていたが、違っていたようだ。
まぁ、別にいいか。
そう結論つけた俺は、少し早いけど待ち合わせ場所に指定していた駅前の像に向けて歩いて行った。