表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/283

第九話 ③ ~波乱の一日・早朝~ 朱里視点

 第九話 ③




 朱里視点



「朱里ナイッシュー!!」

「オッケーゆーこちゃん!!」


 早朝。悠斗くんと別れたあと、バスケ部の朝練をしていた。


 少し身体が重いかなぁ……なんて思ってたけど、部活になればいつものように身体は動いてくれた。


「朱里ー。調子戻ったみたいだね」


 ゆーこちゃんが私にそう言って笑いかけてくれる。


「うん。昨日は水族館でデートだったし。ちょっとアクシデントがあったけど、結果的には悠斗くんをお父さんとお母さんに紹介出来たよ」


 取り敢えず、交際は認めて貰えたよ。


 とゆーこちゃんに昨日のことを報告する。


「へぇ、良かったじゃん!!朱里のお父さん、結構過保護だと思ってたけど、いーんちょー良くやったね」

「えへへー。お父さんとお母さんの前で話してる悠斗くん。めちゃくちゃカッコよかったよ」


 と、私が惚気けると、


「はいはいごちそーさまー」


 とゆーこちゃんが呆れたように言った。


 私はそんなゆーこちゃんに聞く。


「ゆーこちゃんは武藤くんのことどう思ってるの?」

「……えぇ!!??」


 お?この反応……あれですな!?


「むむ……ゆーこちゃんその反応は……」

「……うーん。バレバレ?」


 と、少し顔を赤く染めるゆーこちゃん。

 可愛いなー


「こないだみんなで行ったゲームセンターで、いい感じかなぁって思ったの」

「そうか……まぁ、アイツといると楽しいな。とか、もっと一緒に居たいな。とか、声援貰えたら頑張れそうだなぁ。とか、そう思うようになってる」


 恋じゃん!!


 とは言わない。


「その気持ちは大事にしていこうぜー。ゆーこちゃん!!」

「あはは。まぁ、今すぐどうこうってより、今はこの関係がいいなあって思ってるから」




 そんな話をしてたら、朝練の時間が終わった。




 私は更衣室に向かい、着替えをする。


 すると、スマホがピカピカかなり光ってる。


 見てみると、RAINの通知が凄い数になっていた。


「……え?何この通知の数」


 見てみると、うちのクラスの女子が登録してるグループがすごいことになっている。


 私は着替えを中断して見てみると、


「……え、何で……」


「あ、朱里!!これ!!」


 ゆーこちゃんも同じようにスマホを見たらしく、その画面を私に見せてくる。


『たまたま今日早起きしちゃって、誰も居ない教室に一番乗り!!と思ったらすごいの見ちゃった!!』


 と彩ちゃんが写真付きでコメント


 そこには、早朝の教室で二人きりの状況で、


 悠斗くんの唇を人差し指で押える黒瀬さんと


 悠斗くんと一緒に読書をしている黒瀬さんと


 カメラ目線で方目を閉じてシーってやってる黒瀬さんの


 写真がアップされてた。


『あーあー。私結構桐崎くんのこと良いなって思ってて、フリーなら狙ってたんだけど、黒瀬さんといー感じなのかなー?』


 なんてコメント。


 あ、彩ちゃん……狙ってたんだ。


 その後のクラスメイトの女子の想像を込めたトークがすごい数になっていた。


 もう付き合ってる。


 秒読み段階。


 学年首席と次席だからお似合い。


 ……っ!!


 そんなワードが沢山見えた。


 てか、なにこれ。私が朝練してた時に教室でこんなことしてたの?

 ……私知らないよ……教えてもらってない……


「あのバカ……だから言ったのに……」


 ゆーこちゃんは頭を抱えてる。

 そして、私に言ってくる。


「朱里。落ち着いて聞いてね?」

「……これで落ち着いてられたらどんなに良かっただろうね。でも、ゆーこちゃんが居てくれて良かったよ。……私一人だったら、何してたかわかんない」


 大丈夫。私は冷静だ。


「多分。これは黒瀬さんの確信犯」

「うん。私もそう思う」

「じゃなきゃ、カメラ目線でこんなことしない」


 そっか。やっぱり黒瀬さんも悠斗くんのこと好きになっちゃったんだね。


「多分。教室はすごいことになってると思う」

「うん。だって『聖女様』の初めてのスキャンダルみたいなものだからね」

「取り敢えず、あのバカにはこれ以上何か変なことしないように釘刺しとく」


 ゆーこちゃん。かなり怒ってる。

 多分、悠斗くんに何か警告みたいなことを言ってたんだろうな。


「私は感情的に悠斗くんを責めないようにする。この事で心を痛めるのは悠斗くんも同じだと思うから」

「朱里は……優しいね」

「えへへ、本当は泣きたいくらいなんだけどね。泣いたって解決しないし。それに今必要なのは、絶対に悠斗くんを信じることだと思うから」

「……そうだね」


 そんなゆーこちゃんに、私は言う。


「ほら、ゆーこちゃん!!そろそろ着替えよ。汗が冷えて風邪引いちゃうよ!!」


 そう言うと私は着替えを手にす……


「あ……」


 ることが出来なかった。


 手からこぼれ落ちる制服……


「やだ、手が滑っちゃったかな……あはは」


 私の手から落ちていった制服が、まるで悠斗くんのように見えてしまって、私はすごく、嫌だった。




 悠斗くん……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ