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第二話 ① ~初デート・装いは妹のお墨付きを貰いました~

 第二話 ①





 告白に成功した終業式の日の数日後。


 メーセージアプリで初々しいやり取りを繰り返しながら迎えた初デートの当日。

 俺は、自宅の洗面台の鏡を見つめながら念入りに髪型を整える。


「わぁ……おにぃが本気出してる。これはデートかな?」


 中学三年になる妹の(しずく)が、少しだけからかうように俺に話しかけてくる。


「まぁな。初彼女との初デートなんだ。気合いだって入るだろ」

「わぁお、やるねぇおにい。てかあれだよねぇ」

「なんだよ雫?」

「二次元にしか興味無いみたいなオタクのおにぃが、まさか半年でこんな変わるとは夢にも思ってなかったよ」

「恋は人を変えるって言うだろ?」


 と、ドヤ顔で言う俺に、雫は少しだけ呆れながら


「まぁ、早々に愛想尽かされないように頑張ってね」

「不吉なこと言うなよ……」


 俺はそう呟きながら、慣れないコンタクトレンズを目に着ける。普段はメガネをしているが、野暮ったいメガネしか持ってないので、今日はコンタクトだ。


「おにぃはちゃんとすればそこそこだと思ってから、ちょっともったいないなぁって感じだったけど、やっぱりちゃんとするとまぁまぁだね!!」

「そうか。雫の目から見てそれなら大丈夫そうだな」


 オタク趣味の俺とは違い、オシャレが趣味で化粧にも気を使う雫の『まぁまぁ』はかなりの高評価だ。


 俺は今の自分に少しだけ自信をつけると、ハンガーにかけてあったお気に入りのジャケットに袖を通す。


 どんな服にでも合う俺のお気に入りだ。


 そして、首周りに安物のチョーカーを着け、カバンを肩にかける。

 中には財布とスマホとハンカチ。あとは簡単な救護セットが入っている。

 不慮の事故で彼女が怪我をしてしまっても対応出来るようにだ。


 時刻は八時半。集合は駅前に十時の予定だ。


 今から家を出て、電車を乗り継いでいけば九時半そこそこには着けそうか。


 少し早いけど、遅刻するよりはマシだな。


 俺はそう考えると、玄関へと向かう。

 その後ろを雫が着いてくる。


「じゃあおにぃ、頑張ってね!!」

「おう」

「いつかはちゃんと家に連れて来てね?私も挨拶したいから!!」


 あとこれ!!


 雫はそう言うと、小さな箱を俺に差し出してくる。


 0.01mm


「買うの恥ずかしかったんだからね!!」


 と、頬を染める雫の手にある箱をそっと掴み、廊下の向こうに投げ捨てる。


「ああー!!??」

「雫も親父も気が早いんだよ!!」


 俺はそう言い捨てると、玄関の扉を乱暴に開け放つ。


 いってきます。


 という言葉と共に扉を閉めると、中からは


 ちゃんと避妊はするんだぞー


 との声が聞こえてきた。


 その声に俺は小さく肩を落としながら、ポチに跨り駅へと走らせた。

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