第八話 ④ ~二回目のデート・彼女のサンドイッチは雫級の美味しさでした~
第八話 ④
「はい、悠斗くん。私お手製のサンドイッチを食べやがれー!!」
休憩スペースの四人掛けの丸テーブルに二人で座り、朱里さんが今日の最初から持っていたサンドイッチの入っているバスケットを開く。
「持とうか?」
とは言っていたが、これだけは自分で持ちたい!!と断られてしまったあたり、こだわりがあるようだ。
「……すげぇ」
中には色とりどりのサンドイッチがいっぱい。
タマゴ、ハム、トマト、レタス、ツナ、きゅうり……
あっ!!俺が好きなミニトマトが何個も端にある!!
サンドイッチはキチンとみみが落としてあって、そのみみは油で揚げて砂糖を振ったデザートなっていた。
「こんなに作るの大変だったでしょ?」
「えへへー。まぁ早起きして作りました!!」
ドヤーと笑顔を見せる朱里さん。
可愛い。ほんと可愛い。
「見てるだけでも満足だけど、やっぱり作って貰ったんだから食べないとね。いただきます!!」
「はーい!!」
俺はハムとレタスが挟んであるサンドイッチから食べる。
シャクッとしたレタスの歯ごたえと、ハムの塩味、パンにはマーガリンと少量のカラシが効いている。
レタスの水はしっかりと切っているので、パンがベチャッとしてるとかもない。
端的に言って……
「美味しい。以外の感想が出てこない……」
「やだ、嬉しいな……」
頬を染めて照れる朱里さん。
俺はペロリとひとつ食べ終えると、次はたまごサンドに手を伸ばす。
ゆでたまごを潰してマヨネーズで和えた俺が好きなサンドイッチのひとつ。
マヨネーズをどのくらい加えるかが難しいところだが……
「うめぇ……」
ひと口食べてわかる。美味い……
え?これで料理初心者?雫と同じくらいだぞ……
まぁ、妹を引き合いに出すとか失礼なことを言うつもりは無いが、これはすごい美味しい。
「毎日食べたいくらいだな……」
「……っ!!」
俺がボソッと呟いた言葉に、朱里さんが顔を真っ赤に染める。
どうかしたのだろうか?
とりあえず褒めすぎなくらい褒めたような気もするが、実際すごい美味しい。
「わ、私も食べよーかなー!!」
朱里さんも自分で作ったサンドイッチに手を伸ばす。
そして、ツナときゅうりのサンドイッチをひと口食べて、
「うん!!美味しく出来てると思う!!」
と美味しさを再確認。
それを見た俺もツナときゅうりのサンドイッチが食べたくなったので、手を伸ばす。
「うん!!これも美味しい!!」
ツナは脂を適量のこし、これは隠し味に醤油が少し入ってる。きゅうりの厚みもちょうど良い感じ。
そして、俺は大好きなミニトマトに手を伸ばす。
その時、朱里さんに少しだけ笑みが浮かぶ。
なんだ?、ミニトマトに何かあるのか?
俺はミニトマトをひとつ口に入れて噛み締める。
プシュッ!!
「……っ!!」
何だこのミニトマト!!??めちゃくちゃ美味いぞ!!
噛んだら弾ける果汁と酸味。そんなミニトマト食った事ねぇ!!
「そのミニトマトはね、スプラッシュミニトマトって言うんだよー」
「スプラッシュ……だから噛んだ時にこんなに……」
「えへへー。悠斗くん、ミニトマト好きだって雫ちゃんから聞いてたから、ちょっと調べて驚かせてあげようかなって」
か、可愛い……
「で、でも結構いい値段……」
「ううん。そこまででも無いよ?糖度がすごい高いミニトマトとかより安かったよ。フルーツとかだと500円位するけど、これは200円くらいだったかな」
「なるほど……」
「まぁ、ミニトマトは安ければ100円位で買えるから、そう考えると少し高いかもね」
「朱里さんの家庭的な一面も見れて、キュンキュンポイントが入りました」
「私より悠斗くんの方がキュンキュンポイントお気に入りになってるよね!!」
「ははは!!」
そんな会話をしながら、楽しく昼食の時間は過ぎていく。
ミニトマトとサンドイッチを全て食べ終え、紅茶を飲みながらパンのみみに砂糖をふりかけたデザートを摘む。
「ふぅ……お腹いっぱいだー」
「俺も満腹だよ。とても美味しかった」
紅茶は俺に合わせて砂糖無しで作られていた。
朱里さんは自分の紙コップに注いだ紅茶にガムシロを加えている。
「ねぇねぇ悠斗くん。この後の予定は?」
今の時刻は十三時。イルカショーは十六時から。
まぁ、このまったりした時間を少し楽しんで、片付けをして三十分。
ゲームコーナーがあるから、そこでぬいぐるみとかが取れるUFOキャッチャーとかで遊んで……一時間。
その後はお土産屋さんで買い物。
朱里さんがどのくらい時間をかけるかかわからないけど……まぁ一時間もあれば大丈夫だろう。
買い物を急かすなんてしたくないし。
そしたらカッパを買って、開演前の大体二十分くらい前から一番前に陣取って、会話をしながら待とう。
よし、これで行けるな。
そう考えた俺は、今思案したプランを朱里さんに提案する。
それを聞いた朱里さんは笑顔で頷き、
「やっぱり悠斗くんは頼りになるね!!」
と言ってくれた。
キュンキュンポイント入りました!!
さて、じゃあ次はゲームコーナーに行こうかな。
俺は手元のゴミ袋にゴミを入れながら、ここからゲームコーナーまでの道順を頭の中で描いていった。