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聖女様side ④ ~優しい彼と甘える私~

 聖女様side ④



 今日も色々なことがありました。


 まさか、あのコンビニで桐崎くんが働いているだなんて……


 それがわかっていれば、あんなラフな格好で出かけたりなんか……っ!!


 そ、それにしても桐崎くん。あの女性は誰なんですか?


『司さん』だなんて名前で呼んで……


 今度会った時に、きちんと話してもらうことにしましょう。


 ですが、それよりも大切なことが今の私にはありました。






「ふふふ……桐崎くんから貸して頂いたライトノベル……なかなか面白いですね」


 ほんの300ページ程の小説を、私はじっくりと一冊読み終えました。

 たしかに、桐崎くんの言うように、私本来のペースで読んだら二時間……もしかしたら1時間かそこらで読み終えてしまったかも知れませんね。


 ですが、せっかく彼に貸して頂いた大切な本です。


 私は三時間程かけて一冊を読み終えました。


 愛らしいイラストに、ちょっとどころかかなり鈍感な男の子に恋をする幼馴染の女の子の繊細な乙女心を描いた作品。

 二人の気持ちのすれ違いや、ライバルの女の子の出現、しかし最後は男の子が女の子を幼馴染ではなく、一人の女の子として意識をした。

 と言う内容でした。


 一冊でのまとまりもしっかりとありましたが、続きがあってもいいような幕引きでした。


 これは桐崎くんに続刊があるかを聞いた方が良いですね。


 まぁ、今の時代ですから。スマホで調べればすぐなのですが、会話のタネをみすみす無くすような真似はしたくありません。


 ですが、この乙女心がわからない鈍感な男の子が、いろいろと桐崎くんと重なってしまいました。


『黒瀬さんも、美容なんて気にするんだ』


 なんてことを言うのでしょうか。


 私だって立派な年頃の女の子です。


 そりゃあ『多少は』お肉が大好きで、野菜が嫌いな所はありますが、一応は不足しがちな栄養素はサプリメントとかで補充してます。


 こう見えて、少しはお化粧も始めたんです。


 ふふふ、あなたに少しでも綺麗なところを見てもらいたいと、何故か最近思い始めたので。


 なんて考えてたら、


「ごめんね、黒瀬さん。失言だった。発言を取り消すよ。黒瀬さんの綺麗さは普段の努力の上にあったんだね」


 そ、そんな。いきなり褒めないでください!!


 綺麗だなんだなんて言葉は嫌と言う程聞いてきました。


 しかし、有象無象に言われた言葉より、彼に言われたこの一言の方が、私の心を揺さぶりました。


 全く。鈍感だと思ったら、こっちが喜ぶことをきちんと言ってくる。まるで小説の主人公みたいじゃないですか。


 そう考えたところで、もし彼が主人公ならヒロインは……


「藤崎朱里さん……」


 ……そう。


 去年の学級委員だった彼女。


 そして恐らく……桐崎くんの……


「彼女……なのですよね……」


 毎朝あの時間の教室に彼が居るのは、バスケ部の朝練がある藤崎さんに付き添っているから。


 彼女が学級委員になれなかった時、あれほど危険な橋を渡っていたのは、彼女と一緒に委員をやりたかったから。


 ……。


 今、こうして彼に抱いている感情が『恋愛感情』なのかはわかりません。


 何せ、初恋すらしたことがないんですから。


 ですが、幸いな事に桐崎くんは私を拒んではいません。


 なら、別にこちらから遠慮をする必要も無いはずです。


 ふふふ……


 桐崎くん。あなたは優しい人、ですからね。


 きっと、去年ずっと独りで過ごしてきた私を慮っての行動なのでしょう。


 あなたのその優しさが、どれ程私の心を揺さぶるかなんて、きっと分かっていないのでしょうね。


 だから私は彼あなたに言ったんですよ。


『女ごころに鈍感な主人公と言うのが、私には桐崎くんと重なって見えました』


 と。


 彼女が居るのに他の女に優しくするからこうなるんです。


 あの小説の主人公と同じですよ?

 可愛い幼馴染が居るのに、いじめられてる転校生の女の子を助けに行ったりするシーンがありましたね。

 その転校生の女の子、主人公に惚れてますよ?


 ふふふ……


 桐崎くん……


 私からは絶対に、離れてあげませんからね?

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