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第七話 ⑦ ~バイト先に黒瀬さんがやって来ました~

 第七話 ⑦



「いらっしゃいませー」


「ありがとうしたーまたお越しくださいませー」



 さて、朱里さんとのデートはどうしようかなぁ……


 なんてことを考えながら、俺はコンビニのバイトをしていた。


「おい、少年。随分と上の空だな?」

「あ、すみません。司さん」


 と、レジ周りで掃除をしてた俺に、発注をしていた司さんが声を掛けてくる。


「さっきからずっと同じところを拭いてるぞ?なにか考え事か?」

「すみません、彼女と何処にデート行こうか考えてました」


 と、正直に話す。


「ほぅ、仕事をしながらそんな事を考えていたのか」

「ははは、まぁ司さんが一緒に働いてるんで何かあっても大丈夫だとと思ってました」


 そんなことを言う俺に司さんが、


「へぇ、随分と生意気なことを言うようになったものだ。誰だ、少年をそう育てたのは?」


 とイタズラっぽく言うので、


「司さんです」


 と言ってやった。


「ふふふ、なかなか言うな。それで、何処に行くつもりなんだ?」

「そうですね。水族館とかいいかなと思ってるんです」

「なるほど、定番だな」

「はい。奇を衒うより、王道をいこうかと思います」


 そういう俺に司さんが、


「チンアナゴを見てくるんだな」


 と楽しそうに言ってくる。


「……いや、それだけじゃないですよ。てか、仮にも女性なんですから、チンとか軽々に言わないでくださいよ?」

「何を言ってるんだ?水族館と言えば、イルカ、ペンギン、チンアナゴだ」


 とドヤ顔をする司さん


「その二匹にチンアナゴが並び立つなんて……まぁ見ますけど」


「ほう、そしていい雰囲気になり、俺のチンアナゴも見てくれと……」

「言いません!!」


 ケラケラと笑う司さん。


「ほら、そろそろお客さんも増えてくる時間です!!早く発注を終えて、レジ二名体制に備えてください!!」

「大丈夫だ。もう発注は終わってるよ。だから、少年をからかっていた」


 趣味が悪いです!!


 と言ってると、お客さんが来た。


「いらっしゃいま……」


 お客さんの顔を見た俺が固まる。


「黒瀬さん……」

「これは驚きました。桐崎くんです」


 上下スウェットと言う学校では到底拝めないラフな格好をした黒瀬さんが、コンビニに来店した。


「あ、あんまり見ないでください……」

「あ、ごめん!!」


 恥ずかしそうに腕を抱く黒瀬さん。

 そうだよな。誰かに会うなんて考えてない服装だ。


「それで、少年。こちらのやんごとなき美少女は誰なんだい?」


 と、司さんが興味深そうに聞いてくる。


「あ、司さん。こちらは俺のクラスメイトで同じ学級委員をしてる黒瀬さんです」


 と、紹介する。


「ほぅ、彼女が何度か店に来てるのを見かけていたが、少年の知り合いだったのか」


 黒瀬さん、このコンビニ何度か使ってたのか。

 半年働いてたけど会ったのは初めてだ。


 そんな俺に司さんが耳元で囁く。


「可愛い彼女が居るのに、こんな美少女ともよろしくするとは、少年も隅に置けないな」

「黒瀬さんとはそんなんじゃありません!!」


 と、司さんに反論する。


「桐崎くん、随分とそちらの女性と仲がよろしいんですね?」


 と、黒瀬さんが少しだけジトっとした目で見てくる。


 さ、最近その目で見られることが増えてる気がする……


「え、えーと司さんは……」

「名前で呼ぶ関係……と」

「黒瀬さん!?」

「いいですよ?続けてください」


 黒瀬さんのジト目が止まらない……っ!!


 俺は司さんは俺の教育係だったと説明する。

 大変お世話になったバイトの先輩だと。


「なるほど、そうでしたか」

「わ、わかってもらえてよかったよ……」


 俺は額にかいた冷や汗を拭う。


「今後もこちらのコンビニを利用する予定ですので、よろしくお願いします」


 黒瀬さんはそう言うと、りんご酢の飲み物とカルビ弁当を出てきた。


 またお肉……


「温めは家でやりますので大丈夫です」

「あ、はい」


 会計を済ませ、出口へ向かう黒瀬さんを見送る。


「では、桐崎くん。またあとで」


 詳しい話はメッセージでお願いします。


 そう行って彼女は店から出て行った。


「少年……頑張れよ?」


 その様子に、司さんが少しだけ不憫そうに言ってくる。


「……はぁ」


 俺は深く溜息をつきながらその言葉に頷いた。


 そして、少しだけ陰鬱な気持ちになりながら、残りの時間のバイトをこなして行った。

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