第七話 ⑤ ~料理上手な女の子は魅力的だと思います~
第七話 ⑤
「悠斗!!飯行こうぜ!!」
「あぁ、いいぞ健。佐藤さん、朱里さん、黒瀬さん。今日も一緒にどう?」
午前中の授業を終え、昨日同様に俺は三人に声を掛ける。
「うん。私は賛成だよ!!」
「私もいいよ、いーんちょー」
「皆さんが良ければ本日もご一緒させて頂ければと」
と、三人から良い返事が貰える。
「じゃあさ、これからも特に予定がない限り、この五人で昼は過ごす感じでいいかな?」
俺はそう提案すると、残りの四人は首を縦に振った。
良かった。山野先生にも言われてた『少しは気にかけてくれ』というのも達成出来そうだ。
そんなことを考えながら、俺たち五人は食堂へと向かった。
「悠斗くん、今日は雫ちゃんのお弁当だね!!」
「うん。これからはずっと作ってくれるみたい。夕飯の残りを使うからそんな時間かからないとか言ってたけど、雫には頭が上がらないよ」
と、俺はお弁当を持ち上げながらそう言う。
「……家庭的な雫ちゃん。私もお料理習おうかな……」
「朱里さん?」
「うぅん!!なんでもない!!気にしないで!!」
朱里さんはそう言うと、手をブンブンと振る。
何か言ってたような気もするけど、まぁいいか。
難聴系主人公のような感想を抱きながら、俺は昨日同様に空いていた丸テーブルに向かう。
「席は俺が確保しておくから、みんなはご飯買ってなよ」
俺のその言葉に、みんなは券売機に並んで行った。
「今日も焼肉なのかな?」
なんてことを考えてると、案の定みんな焼肉セットだった。
「飽きるまではこれで行くぜ!!」
と言う健。
「私は一年間食べてても飽きませんでした」
「黒瀬さんはほんとお肉好きだね!!」
「はい。藤崎さん」
「いーんちょーのお弁当はなんなの?」
「あぁ、昨日の残りだから多分ホイコーローだと……」
と、お弁当箱を開くとホイコーローと卵焼きときんぴらごぼうが入っていた。
全体的に茶色いけど、俺な好きな物を沢山入れるという雫の気持ちがよく現れていた。
色とりどりなお弁当より、好きな物を好きなだけ食べたい。という俺の心をよく読みとった雫らしい弁当だった。
「美味しそうですね」
「うん。実際美味しいからね」
「何回か悠斗の家で飯食ったことあるけど、雫ちゃんマジで料理上手いよな!!」
「武藤はやっぱり料理上手い女子が好きなの?」
少しだけ興味深そうに聞く佐藤さん。
なるほど、やっぱり気になるか。
そんな佐藤さんの淡い乙女心みたいなのに気が付いてるのかわからないが、健が続ける。
「そうだな、俺はアスリートを目指してるから、食事の大切さは知ってるつもりだ。そう言うのをしっかりしてくれるような女性を選びたいって思ってる」
「へぇ、そうなんだ」
料理勉強しよ。
そんな声が佐藤さんから小さく聞こえてきた。
やべぇ、まじ乙女じゃん。
そんな感想を抱いていると、耳元で朱里さんが囁いてくる
「悠斗くん。私もお料理勉強するから」
期待しててね。
やべぇ俺の彼女ちょーかわいー
そんなことを考えながら、俺は雫の作ってくれたお弁当に舌鼓を打った。
なお、俺の卵焼きを奪おうとした健の箸をたたき落とし、変わりに奴の肉をひとつ奪ってやった。
泣きそうな顔をする健。
可哀想だからホイコーローの肉をひとつくれてやった。
全く。油断も隙もねぇな。