朱里side ③ ~大き過ぎる後悔と確信がある私の懸念~
朱里side ③
「学級委員……なれなかったなぁ……」
私は部活で疲れた身体をベッドに投げ出し、枕に顔を押し付ける。
少しだけ、涙が出てきた。
「……黒瀬さんはなんで……」
いや、そんなことを考えるのはもう止めよう。
これ以上考えると、せっかく仲良くしようと思ってたこの気持ちがドンドン暗い方向に行ってしまう。
「でも、悠斗くんが頑張ってくれたおかげで、体育祭の実行委員は一緒に出来る」
きっと悠斗くんはすごく大変なことをしてたんだと思う。
本来ならあのタイミングで、来週決める予定の議題を持ち出すなんてことはありえない。
しかも、自分が選んだ人間を実行委員にするなんて力技は普通だったら非難轟々だ。
でも、彼はさもそれが最善策だとでも言うようにクラスメイトに納得させて見せた。
その結果があの盛大な拍手による賛同なんだと思う。
考えてみたら、きっとあのタイミングでないとああいう話には持って行けなかったのかもしれない。
だとすると、きっと悠斗くんは
「私が学級委員になれなかった時点で、どうしたら私を少しでも慰められるかを済むかを考えてくれてたんだ」
彼の優しさを思うと嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「明日から一緒に通学出来るし、同じクラスだし、隣の席だし、私は悠斗くんの恋人だし」
大丈夫。たとえ学級委員になれなかったとしても、私と悠斗くんの仲にキズなんかつかない。
でも、何故だろうか。
不安な気持ちが拭えない。
……理由はわかってる。
「……多分。黒瀬さんは悠斗くんのことを好きになる」
確信に近いものがある。
学級委員として、さらに一番近くの隣の席で、彼の優しさに、誠実さに、他人への想いの深さに、触れたらきっと好きになる。
いや、もしかしたらもう既に……
そしたら、私はどうすればいいんだろうか……
私は彼の彼女だ。
でも、永遠の愛を誓った訳では無い。
「朱里ーご飯よー!!」
「……うん。今行く」
不安な気持ちが拭いきれないまま、私は下の階へと降りていった。