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第四話 ① ~新学期・帰宅部のエースの自己紹介~

 第四話 ①



「うーす。お前ら.....よし、全員揃ってるな」


 教室に生徒が全員集まり、クジ引きによる席決めが決まった頃。教室に担任の教師が入ってくる。


「お前ら席につけー。引いたクジはその辺に捨てるなよ?各自で処理するように」


 はーい。と言う声が教室に響く。


「やったね悠斗くん。咲ちゃん先生だ」


 隣の朱里さんが小さく拳を握りながら言ってくる。


 山野(やまの) (さき)


 去年の俺たちのクラスの担任の先生。


 三十代とまだまだ若いながらも優秀な女性の先生で、生徒からの信頼も厚い。

 言葉遣いは若干粗暴な所もあるけど、それがひとつの魅力にもなっていた。

 バスケ部の顧問をしており、佐藤さんや朱里さんとはかなり面識がある人だろう。


「去年と同じだからやり方がわかってて、ある種のやりやすさはあるよね」


 この人の特徴としては


『人生でいちばん大切なのは運!!』


 と言うところか。


 何かを決める時は結構な頻度で生徒にクジ引きをさせている。


 ぶっちゃけ。教壇にクジ引きが用意されてた時点で、なんとなくこの人が担任だろうなぁとは予想してたけど。


 そんなことを考えてるとチャイムが鳴った。


「よし。お前らホームルームを始める」


 まずは自己紹介からだな。


 山野先生はそう言うと、教室の廊下側の一番前の生徒を指名した。


「浅間、お前からだ。あとはそのまま後ろに行って、一番後ろに行ったら折り返して前に行く。そう言う順番だ」


 じゃあ自己紹介を始めろ。先生の言葉を皮切りに、浅間くんが自己紹介を始める。


 浅間くん。去年も同じクラスで、名前も浅間だから最初から一番前のあの席だったんだよな。今年はくじ引きなのに、クジでもあの席。先生の言う『運』って奴が働いてるのかも知れないなぁ.....


 何てことを考えながらみんなの自己紹介を聞いていく。


 うん。だいたい七割くらいの人は去年と同じかな。

 残り三割の人も自己紹介を聞く感じでは普通な感じだし、割と仲良く出来そうかな。


 そして、隣を見ると朱里さんの自己紹介が始まった。


「藤崎朱里です!!趣味は身体を動かすことで勉強は普通です!!前に座ってるゆーこちゃんと同じバスケ部です!!咲ちゃん先生はバスケ部の顧問なので良くお世話になってます!!」


 山野先生だぞー


 と言う声が先生から挟まる


「あはは。運動は得意なので体育祭では活躍出来ると思います!!よろしくお願いします!!」


 そう言い切るとお辞儀をする彼女。


 俺は誰よりも早く拍手をする。


 少しだけ顔を赤くした朱里さんが、小さく

 ありがと。

 と伝えてくる。


 かわいーちょーかわいー


 なんて思ってるともう俺の番だった。


「桐崎悠斗です。帰宅部に所属してるエースです」


 帰宅部にエースなんて無いぞー


 なんて声が先生から入る


「あはは。趣味は読書。漫画とかライトノベルが好きです。あとはゲームもします。所謂ライトなオタクって奴です」


 オタク趣味は隠すものじゃない。

 と思ってるのでキチンと伝えていく。


「去年は学級委員をしていました。皆さん部活動が忙しいと思うので、希望が無いなら帰宅部の自分が学級委員.....まぁ別名山野先生の使いっ走り「おいおい桐崎」をやろうかなとも考えてます。勉強は苦手では無いので、わからないこととかあったら聞いてください。よろしくお願いします」


 そう言ってお辞儀をすると、朱里さんが一番に拍手をくれた。

 ありがとう。って小さく返すと、意外にも隣の黒瀬さんも拍手をしていた。


 彼女が自己紹介に拍手したの、俺だけじゃないか?


 なんて思っていると、彼女の自己紹介が始まった。


 彼女はスっと席から立ち上がり、


「黒瀬詩織です。よろしくお願いします」


 それだけ言うと、サッと席に座った。


 そうだ、去年もこんな感じだったな。


 まるで一年前の焼き直しの様な光景に、俺は少し苦笑いを浮かべる。


 シーンと静まり返るクラスの雰囲気を変えようと、俺が最初に拍手をした。

 すると、それに続くようにみんなが拍手をした。


「今年もよろしく。黒瀬さん」

「はい」


 俺の言葉に軽く振り向いて小さくお辞儀を返すと、彼女は姿勢を正して前を向いた。


 隣を見ると、朱里さんがうっとりとした目で黒瀬さんを見てた。


 かっこいいなぁ.....


 なんて考えてそうな目だった。


 そうこうしてるうちに全員の自己紹介が終わった。


 個性的な自己紹介をしたのは黒瀬さんくらいだな。


 卒業までの二年間。それなりに上手くやっていけそうだな。そんな風に思えた自己紹介の時間だった。

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