第一話 ① ~半年間好きだった女の子に告白しました~
第一話 ①
「好きです!!俺と付き合ってください!!」
高校一年も終わり、終業式の日。
俺は一年間共に学級委員として過ごした彼女、藤崎朱里に告白した。
茶色く染めたセミロングの髪型に、バスケ部で鍛えた無駄のない肢体。胸は少し控えめだが、コートを縦横無尽に走る肉付きの良い脚は異性の目を捕らえて離さない。
性格は明朗快活で男女問わず友達も多い。
オタク趣味で陰キャ気味の俺にも優しくしてくれて、チョロイン宜しく惚れてしまった。
少しでも彼女にふさわしい男になろうと、半年前からバイトを始め、筋トレや早朝のランニングで身体を鍛えた。帰宅部だからと言って、だらしない身体では彼女に見向きもされない。
清潔感やオシャレにも気を配り、自分なりの男磨きを半年かけてやってきた。
告白が成功すれば薔薇色の春休み。
失敗すれば漆黒の春休み。
自分なりにやるだけのことはやってきたつもりだったが、成功するかは微妙だろうと思っていた。
たとえ振られても気持ちをスッキリさせよう。
それくらいの心持ちでいた。
俺の告白を受けた彼女は、少しだけ頬を赤く染めながら言葉を返す。
「桐崎くん以外にも好きな人が居るけど大丈夫?」
俺以外にも好きな人が居るけど大丈夫?
どういう意味だろうか……
二番目に好き。とか言うあのラノベみたいな話なのだろうか?
首を傾げる俺に彼女が続ける。
「私、聖女様が大好きなの!!あ、でも男の人の中だと桐崎くんが一番好きだよ!!それでもいいなら付き合おう?」
そう言うと、彼女は右手を前に突き出した。
なるほど。そう言う意味か。
俺は少しだけ思案するが、まぁ男の中では俺が一番なわけだし、ある意味『推しのアイドル』みたいなものだろう。
そう結論を出し、
「宜しくお願いします!!」
俺はその言葉と共に、彼女の右手を力強く握りしめた。
これが俺、桐崎悠斗に産まれて初めての彼女が出来た瞬間だった。
「それじゃ桐崎くん……ううん、悠斗くん、一緒に帰ろうか!!もちろん、家まで送ってくれるんだよね?」
「もちろんだよ。藤崎さ……
「朱里でいいよ」
「……え?」
そう言ってふわりと微笑む彼女。
そう、俺はこの笑顔が好きになったんだ。
「せっかく付き合い始めたんだし、呼び捨てでいいよ?」
そうは言われてもいきなり呼び捨てはハードルが高い。俺は少し考えたあとに、
「……朱里さんでお願いします」
と答えた。
「ふふ……悠斗くん、可愛いね!!」
「ぅぐ……」
「まぁ、呼び捨ては慣れてきたらでいいよ!!」
そう言うと彼女は俺の手を掴み、
「よし!!じゃあ、行こう!!」
前を向いて歩き出した。
「うん、行こうか。朱里さん」
少しだけ赤く染まった彼女の耳を見つめながら、俺はこの付き合いがきっとうまく行くだろうと、この時はそう思っていた。