表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/283

第五話 ㉛ ~激戦の予算会議~ エピローグ 蒼井視点

 第五話 ㉛

 ~エピローグ~




 蒼井視点





「さて、皆さん。『裏の予算会議』を始めましょう」



 その言葉を皮切りに、僕の知らない予算会議が始まろうとしていた。


 隣の琴音を見ると、キョトンとした表情をしている。


 当たり前だ。そんな話は聞いてない。


 桐崎くんを挟んだ隣に居る黒瀬さんを見る。


「…………っ!!」


 彼女は、何かを知っているのだろうか。


 訳知り顔で桐崎くんを見ていた。


 その表情からわかること。


『僕の知らないことを彼女は知ってる』


 その事実に、僕はとてつもなく悔しい気持ちを抱いた。


 そうして始まった『裏の予算会議』と言うのは、僕にとっては驚きの連続だった。




「カメラの前では言えなかった事が言えるようになる。そういう時間がお互いにとって必要だったのでは?と考えています」


 そう。最初に予算会議を締めた時に覚えた違和感。


 それはきっと『カメラの前だから』が理由だろう。



「なるほどな。随分と猫を被ったような語りだと思っていたが、カメラを意識してのことか」

「ええ。そうです。それに、こちらとしても色々な理由もあり、動画として配信する必要がありましたので」

「……色々な理由?」


 そう。ここが、僕がいちばん驚愕した言葉だった。


「ええ。『皆さんを悪役に仕立て上げ、うちの生徒会長を悲劇のヒロインとして祭り上げる。そうすることで全校生徒からの支援をいただく』そういうプランでしたので」



 そう。彼は僕を生徒会の悲劇のヒロインとして、集金の道具にしたのだった。



 ……悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しいっ!!!!!!!!




 年下の男の子に良いように利用されたことが。


 そして、何よりも悔しいのが



「彼に利用されたことを、役に立てたことを……嬉しいと感じてしまった僕のチョロい恋心に……っ!!」



 こんなにも、こんなにも僕は彼のことを好きになってしまっていたのか……っ!!




 そして、裏の予算会議は、桐崎くんのペースで終始進んで行った。



 そうこうしていると、会議は佳境に入り、表向きの予算会議が終わった時とは違う雰囲気が会議室に流れ始めていた。



「さて、これで、皆さんが抱えていた不平や不満にお応えすることが出来たかと思っています」


 桐崎くんは満足そうに、周りの部長を見渡す。


 そして、裏の予算会議を締めにかかった。


「何かご質問や言っておきたいことはありますか?」


 特に何かあるとは思っていなかったが、須藤くんが挙手をした。


「須藤部長。何かありますか?」


 桐崎くんも意外だったのか、少しだけ驚いた感じだった。



「桐崎生徒会副会長。貴殿の案は俺たちのような大きな部活だけでなく、中小の部活に対してもしっかりと対応した素晴らしい案だと感心した」


「あ、ありがとうございます」


 め、珍しいこともあるものだ。あの須藤くんが手放しで年下の男の子を褒めるなんて!!


 だけど、その後に続いた言葉に、僕は笑ってしまった。


「だが、やはり貴様は新聞に載っていたように、とんでもない『ペテン師』だったな!!」


 してやったり。と言った表情の須藤くんに、桐崎くんは苦虫を噛み潰したよう表情で、


「…………褒め言葉として、受け取っておきます」


 と答えていた。




 こうして、生徒会が主催した、表と裏の予算会議はなんとか成功で終えることが出来た。






「蒼井生徒会長」


 会議が終わり、部長たちがいなくなった。


 僕たちが会議室の掃除を始めようか。としたところで、桐崎くんが話しかけてきた。


「ん?なんだい。桐崎悠斗生徒会副会長?」


 と、僕は彼に言葉を返す。


 そして、彼は僕に頭を下げた。


「蒼井生徒会長には大変失礼な発言、行動、行為をしました。許されることではないとは思っていますが、謝罪をさせてください。申し訳ございませんでした」


 ははは。真面目だな。予算会議が成功で終わったんだから、それを盾にしてもいいのに、そんなことはお首にも出さない。


 だけど、僕はいじわるだから、少しだけ彼を『いじめる』ことにした。


「僕は生徒会の悲劇のヒロインなんだよね?」


 僕のその言葉に、桐崎くんは気まずそうな表情をする。


「……そ、そうですね」


「あぁ、可哀想な僕。後輩の男の子に良いように利用され、会議が終われば捨てられてしまうんだ……」

「い、いえ……そんなことは」


 ふふふ……彼をいじめるのはこのくらいにしようかな?

 そう思った僕は、少しだけ救いの道を提示する。


「さて、桐崎くんにはなにかしてもらいたいところだよねぇ」


 と、僕は流し目で桐崎くんを見る。


「な、何をすれば良いですか?」


 少しだけ怯えている彼に、指を一本立てる。


「夏休み。君の一日を僕が貰うよ」

「え?」


 キョトンとする彼に、僕は続ける。


「僕は洋服を買うのが好きなんだ。そのお金は親が出してくれるから別にいいんだけどね。だけど、毎回荷物が増えるからね。その荷物持ち辺りをやって貰うことにするよ」


 僕が笑顔でそう言うと、桐崎くんは苦笑いを浮かべながら、


「わかりました。お供します」


 と答えてくれた。



 ふふふ……よし。デートの約束を取り付けられたぞ。


 僕は心の中で大きくガッツポーズをした。


 しかし、そんなことは表には出さずに、



「それじゃあ、日程とか時間は後日。僕から連絡するよ」

「はい。了解です」


 僕たちは約束を交わすと、会議室の掃除に戻った。








 こうしてデートの約束を取り付けられたのなら、悲劇のヒロインも悪くないな。


 まぁ実際には、悲劇のヒロインになるつもりは微塵も無いけど。


 藤崎さんに黒瀬さん。二人の女の子を蹴落として、僕が桐崎くんの隣に座るからね。


 二人とも、覚悟しててよね!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ