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第五話 ⑱ ~激戦の予算会議~ 放課後 聖女様視点 その①

 第五話 ⑱




 聖女様視点





「あ、あくまでも会議室までだからね!!それと、人の気配がしたら離すからね!?」

「わかってますよ。悠斗くんは本当に優しい人ですね。そういう所が大好きです」



 そんなやり取りをして、私たちは手を繋いで会議室まで歩くことになりました。


 勇気を出して、『大好きです』と伝えてみましたが、効果はあったのでしょうか?


 支度を整え、私と悠斗くんは席を立ちました。


「それじゃあ、詩織さん。行こうか」

「はい」


 悠斗くんは先導してくれて、教室の扉を開けてくれました。

 こういう所が自然に出来るのが悠斗くんの良いところですよね。


 廊下に出ると、他の生徒は一人もいませんでした。


 ふふふ、良かったです。


 いきなり誰か居たら、手を繋ぐことが出来ないですからね。


「では、悠斗くん。お願いします」


「……了解しました」


 私は悠斗くんの手を握りしめます。


 暖かくて、少しだけ骨ばった手です。


 悠斗くんは私の手を優しく握り返してくれました。


 そして、私たちは生徒会室へと歩き始めました。


「ふふふ。異性と手を繋ぐなんて、初めてです」


 私はそう呟きます。


 悠斗くんの横顔を見上げると、少しだけ赤くなっていました。


 これは……少しは意識してもらえてるのでしょうか?


「……悠斗くん?」

「……なに、詩織さん?」


 私は彼に言いました。


「腕を組んでもいいですか?」

「ダメです」


 ちぇー


 私のお願いは却下されてしまいました。


「いや、この手を繋ぐってのだっていっぱいいっぱいなんだからね!?」


 そう言う悠斗くん。そうですか、いっぱいいっぱいなんですね!!


「ふふふ。では、腕を組むのは中間テストで勝った時にします」


 私はそう言うと、悠斗くんと繋いでいる手を持ち上げます。


「恋人繋ぎ。と言うのは、いいですか?」


 あの指と指を絡めるアレです。


「それなら、『手を繋ぐ』の範囲内ですので」

「……わかった」


 やりました!!


 私は心の中でちいさく歓声をあげました。


 そして、繋いでいた手をより強く絡めるように、恋人繋ぎへと変えました。


「…………」

「…………」


 け、結構。恥ずかしいですね!!


 自分から求めておいてあれですが、悠斗くんとかなり深く繋がっているような気がしました。


 私は顔を赤くしながら少しだけ俯いて歩きます。


 もし、私が悠斗くんと付き合っていたらこんな感じだったのでしょうか?


 そんなことを思いながら、悠斗くんをもう一度見上げました。


「…………」


 先程よりも赤くなった顔。少しだけそっぽを向いているような気がします。


『ボディータッチを増やしていこうか』

『しおりんを女の子だって意識させないと』


 彩さんが言っていた通りでした。


 手を繋いで歩く。


 ただこれだけの行為で、彼はすごく私を意識しています。


 策略を張り巡らせて罠にはめる。

 そんな必要はなかったんです。


 こうして、二人の時間を作り、少しずつ好意を伝えていく。


『私はあなたが好きなんです』


 それをずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと…………諦めずに伝えていきましょう。


 朱里さんは、私がいずれ『諦める』そう思っているようです。


 ふふふ。それは見込み違いです。


 私は絶対に諦めません。


『何をしてもいい。どんな誘惑をしても構わない』


 そう言ったことを、後悔させてあげましょう。


 ただ、あまりやり過ぎると、悠斗くんから嫌がられてしまいます。


 そうならないように、少しずつ、少しずつ、彼が許してくれるギリギリを攻めて行きながら、そのラインを上げていくようにしましょう。


 そのためには、まずは中間テストで勝たないと行けませんね。

 ……いけません。もうすぐ予算会議なのに、そんなこと何も考えてませんでしたね。


「ふふふ……」

「……どうしたの、詩織さん?」


 思わず笑った私に、悠斗くんが問いかけます。


「いえ、なんでもありません。おっと、残念ですがここまでですね」



『会議室』



 私たちの目的地が見えてきました。


「名残惜しいですが、離しますね」

「……あぁ」


 私はそう言うと、悠斗くんから手を離しました。


 外気に触れた私の手は、少しだけひんやりとしたように感じました。


「さて、悠斗くん。それでは頑張りましょう」

「うん。詩織さんもよろしくね」

「はい。私の全力を尽くします」





 私たちはそう言い合うと、会議室の扉を開けました。



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