第五話 ⑪ ~激戦の予算会議~ 昼 聖女様視点 前編
第五話 ⑪
聖女様視点
朱里さんから宣戦布告を受け、私は色々と覚悟を決めました。
どうやら、今までの私は、現状に満足してしまっていたのかも知れません。
悠斗くんと共に時間を過ごしていく中で、
こういう時間が過ごせるなら、このままでもいいかもしれない。
なんて気持ちが芽生えたのでしょう。
『私は愛人でも構わないから』
違いますね。私が欲しいのは正妻のポジション。
あのライトノベルでも、最初はヒロインは愛人枠で満足しようとしてましたが、そこから正妻を蹴落とす決意をした。
というラストでした。
そう。ライトノベルのヒロインですら決断したのです。
しかし、私一人で考えられることには限界があります。
そこで私は、ここは有識者の意見を取り入れることで今後の対応も出来ると考えました。
私は少し長めの二時間目の休みの時に、友人の彩さんに向けて
『本日はお昼の食事を共にしても良いですか?』
『悠斗くん関係のことで相談があります』
と、メッセージを送りました。
そしたら、直ぐに
『しおりんの誘いなら断らないよー!!桐崎くん関係なら二人きりの方が都合が良いよね!!購買で何か買ってどっかで食べる?』
と返事があったので、
『それでは、生徒会室が空いていますのでそこで食べましょう。あそこならその時間は誰もいません。それに私は会計の職についています。そのくらいの職権乱用は許して貰えると思います』
『職権乱用wwwそれじゃあお昼は生徒会室でよろしくー!!』
そんなやり取りを終えて、
四時間目を終えるチャイムがなりました。
「それじゃあ放送室に行ってくるよ」
それを皮切りに、悠斗くんがそう言って席を立ちました。
彼には彼の、やることがあります。
昼の放送枠は無事に手にはいった。そう聞いています。
そして、その放送に対する反応を食堂で観察して欲しい。という要請を朱里さんにしてある。と言ってもいました。
つまり、私はこの昼に関しては、自由に動けるのです。
私はそんな思惑を隠しながら、彼を送り出します。
「はい。悠斗くん、頑張ってください」
「悠斗頑張ってね!!こっちのことはきちんとやっとくからね」
「悠斗……また俺を一人残すんだな……」
「いーんちょー。かいちょーが可愛いからって放送室で口説いたらダメだかんね?」
皆さんが口々に悠斗くんを送り出しました。
そして、私は皆さんに先んじて言いました。
「皆さんすみません。本日は友人の彩さんと食事を共にしようと約束をしてまして」
私のその言葉に、皆さん驚いた表情をしましたが、視線の先で手を振る彩さんを見て、
「最近の詩織ちゃん、彩ちゃんと仲良いよね!!いいよ、楽しんできて!!」
と、朱里さんがさっきのやり取りを感じさせないトーンで言いました。
「黒瀬さんに友達が増えるのはいいことだって、悠斗も喜ぶと思うぞ」
「だよねー。まぁ……知り合った理由はあれかもだけど。そこは気にしないことにしようか!!」
「あはは……ゆーこちゃん。まぁ……そうだよね」
ふふふ。あの隠し撮りの一件で、一番の益は彩さんと仲良くなれたこと。だったかも知れませんね。
「それでは、皆さん。私は購買でカルビ弁当を買う予定ですので、ここで失礼します」
と、私は頭を下げ彩さんの元に歩きます。
か、カルビ弁当…………
黒瀬さんって本当にお肉好きだよね…………
野郎みたいな味覚してるよな。
なんて声が後ろから聞こえてきました。
武藤くん。野郎みたいって、失礼ですね!!
私は立派な女性です!!
「お待たせしました、彩さん」
「ううん。大丈夫だよー!!」
扉の前で待ってた彩さんに、私は軽く頭を下げましたが、彼女は特に気にしてないようでした。
「それじゃあ購買に行こうか!!」
「はい。行きましょう」
私はそう言って頷くと、彼女と共に購買へと向かいました。




