Ep23『特別な場所、エルクリウスガーデン』
__トントン、トン。
教科書を片付け、机の中へとしまう。
そして、昼の休憩時間がやってくる。
「ねぇ、ユキト? 話がしたいのちょっといいかしら」
「ああ、構わないが」
「いつもの屋上に行きましょうか」
「……そうだな」
まさか、ソフィー側から声をかけられ彼女に連れられ
俺達学級委員の権限を私的に行使し、俺達だけが入る事が許されている屋上へと向かう2人。
「……」
「ん? どうかした?」
「いや、何も」
「そう……」
何時もは2人で楽しく会話しながら屋上へと続くこの階段で話すが__今日はやはり空気がどうも気まずい。
1ヶ月の間、顔さえ合わせない状況にあり区間もせいでお互い距離が空いてる感が否めない。
通信型魔道具での連絡も頑なに俺側が拒否し一切取らなかった、いやダンジョンへ行っていて取れなかったが正しいか。
ここで俺の言う通信型魔道具とは魔法式を織り込んだ魔法道具で離れた相手とでもこの魔道具を通じで通信を測れると言った代物だ。
通信の内容は通話とメッセージの2種類があり後者の方は俺とソフィーは毎日のようにメッセージで連絡を取り合うような中だったが、俺が振られてからいまのいままで一切やり取りをしていない。
__気まずい。ソフィーは……無言か、辛いな。
お互いの空いてしまった距離の隙間、きっと屋上のあの懐かしい景色を見ればお互い開放的な気分になれるはずだ。
早く屋上へつけと心の中で強く思い、ソフィーが放つ気まずい空気のせいか通路も以前より薄暗く感じる__学院の屋上ってこんなに遠かったっけ。
そんなことを思いながら階段を上がっていくと、屋上に出れる扉が視界の中に入ってくる。
ソフィーがゆっくりとドアを開ける。
薄暗い階段を照らしドアの向こうから日が差し込んできた。
◇
目の前に広がる晴天に照らされた美しいガーデン調の緑に囲まれた屋上。
係員によって毎日手入れされた美しい花達、人口的に植えられ伸び伸びと育った木々が風に踊る。
イベントの時にしか解放されていないこの屋上はまさに2人だけの『特別な場所』であった。
「ひゃ、眩しい。見て見てユキト!! すっごい天気いいよ」
ほらこっちこっちとソフィーが手招きをして屋上の中央にある噴水へと誘う。
さっきまで暗かった空気がこの澄んだ空気で美麗な景色と晴天によってソフィーの顔も和らぎ明るい笑顔を俺にみせてくれた。
「……眩しいな、まあでも良かった風が気持ちいな。ソフィー」
噴水の手前にある椅子に腰をかけ、ソフィーと世間話を開始する。
「ええ、気持ちいいねユキト」
暖かい風が優しく吹いてくる……まるでこの風に包まれているかのような安心感を感じるやはり屋上のこの空気が好きだと実感する。
「……しかし、やっぱりいいなここの空気。久しぶりに来て正解だったよ、ありがとなソフィー」
「ふふふ、どうも。てか私が誘わなくてもアナタ1人きりでここに来ちゃうでしょ?」
俺の行動をよく知っていて説得力ある言葉を発言をするソフィー。
「まあそうだな来ちゃうだろうな。やっぱり好きなんだよここの空気」
「学院に入学した時ユキトがここへ1人で入り浸ってるって聞いた時は私、屋上の何がそんなにいいのかなーって思ってたけどいつの間にか私もここ好きになっちゃった、ふふ」
決して作っていない、柔らかいニコニコの笑顔で楽しく過去の話をしてくれるソフィー、やっぱりそんなソフィーを見ていると胸がドキドキしてくる。
「あ、ソフィーそういや話って?」
__そして俺は話を強引に変え、気になっていたソフィーがしたいと言っていた『話』がどんな物なのか聞く。
「ねぇ、私がした連絡も無視してどこへ行っていたの?」
ソフィーが急に距離を詰めてきて俺を心配してくれている素振りをする、以前振られたにも関わらずこの距離の詰め方が俺の胸を苦しめる。
ソフィーに渡したいこれもあるし、禁断のダンジョン『深淵の洞窟』であったこと全てを正直に話そう。そう思った。
「ソフィー……聞いてくれ」
ソフィーへに向けた真剣な顔が彼女を驚かせる。
「わ、ちょ……やけに真剣な顔」
「この1ヶ月色々あったんだ、それを包み隠さず全部話すからビックリしないでくれよ? ソフィー」
「え、ええ 分かったわ聞かせててちょうだい」
ソフィーも真剣な顔をして俺の話を真剣に聞く体勢に入った。
次回更新は明後日になるかもです。