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大魔法賢者の一双 〜ー天才魔法使いと賢才最強幼馴染の2人ー〜  作者: うわのそら
第一章 Ⅱ ロスト・シャトー《レガリア》
21/51

Ep21『メイド長、ルチェル』



__ギシッ、ギシッ。



木製の階段を踏みしめ、ゆっくりと誰かが上がってくる物音が聞こえる。


「ヤバい、アリア引っ込め。誰かが俺の部屋へ上がってくるきっとフロールン家のメイド長『ルチェル』だ」


「わわ、それはマズいッスね……でもなんでその人って分かるスか?」


「俺の部屋に入室の権限があるのはルチェル位だろう、この時間なら父さんや母さんは仕事で出払っている、この足音の主は必然的にルチェルしか居ない」

1人で喋っていると誤解されないように声を抑えユキトはアリアにそう説明する。


「ひゃーー〜 ユキトさんとこのメイド長なんて絶対強いじゃないすか……もしかして私の事が見えちゃったりする超ー〜、一流の精霊使いの可能性とかもあるッスね……むむ、これは隠れないと」


「あぁ、お前の姿は契約者である俺以外の目は映らないが。フロールン家に仕えるルチェルの事だ()()()という事がある」


「ッスね!! その命令了解しました。何かあれば、また呼んでください」


「ああ。それでいいアリアありがとう」


「ッス!! では!」


__……ふおぉん。


ポワッ。



泡の様にアリアの姿が消え、ユキトの精神世界へとアリアが引っ込んだ。


__コンコン。



ドアをノックする音が聞こえる。



足音の主がユキトの部屋の扉を数回ノックした後、入室の許可を得た後部屋へと入室する。


「ユキト様?お帰りでしょうか、安否の確認としてお顔を見たくて入ってもよろしいでしょうか」


「ああ、そうだ、今帰ったルチェルか? いいぞ、構わない入れ」


「はい、__失礼します」




__ガチャ。


ドアノブに手をかけゆっくりと扉を開き、メイドの『ルチェル』が入室して来た。


ゆっくりとドアが開かれ、ルチェルが2人の部下メイドを扉の外に待機させ、何やら部下へと支持している。


「では、シャーミーとライムはそこで待っていなさい、ユキト様へのお給仕の準備を」


「はいルチェル様、待機させていただきます」

「かしこまりました、ルチェル様」


部下のメイド達はドアの外で移動式の食器ワゴンから食器やティーカップを取り出し、何やらカチャカチャ後ろの方で作業をしている多分俺への給仕の支度だろう。


そして、ユキトと2人きりで話すため、1人きりでルチェルが入室してきた。


1ヶ月ぶりに再会したが、相変わらずルチェルは綺麗だ。

人形の様に整った目鼻立ち。澄んだ瞳に大人の色気を醸し出すその背丈、そして美しい鮮やかな紫色の長髪。


歳はこれでも20代後半である。

まるで機械のような正確な仕事っぷりと、彼女の冷静で落ち着いたその立ち振る舞いは実年齢よりも遥上に感じてしまう。


ルチェルは赤子の頃から俺のお目付け役で俺の事を今でも慕ってくれている、そして世話焼きだ。


家を出ていく時も何度もついて行くって言ってたっけ、このたまに見せるギャップも俺はルチェルの長所だと思っている。



ルチェルと俺は長い付き合いで幼少の頃から彼女に世話をしてもらっている、彼女はまるで俺を弟の様に可愛がり、俺はルチェルをまるで姉の様に大切にしている。


フロールン家に使える使用人と言う立場なのにも関わらず、俺の世話だけに関してはルチェルはある程度好きにする権力を持っている彼女はフロールン家で不思議な立場に立っている俺専属のメイド長だ。


まあ、何が言いたいかと言うと彼女は俺の御目付け役なのである。



そう、__俺を正しい方向へと導くため、父と母が用意した世話役がこのルチェルなのだ。


「ユキト様、約1ヶ月ぶりの帰宅ですね……何処へと行かれていたのですか?」


「ちょっとな、リグレット叔父さんに案内してもらってダンジョンへ籠ってたんだよ」


頬についた傷にルチェルが気づく気き、俺の頬を彼女が優しく手で包み込む。

「……酷い傷」


ルチェルの体温を手のひらから感じ、少し恥ずかしくなって否定の言葉を発してしまった。

「か、軽々しく俺の身体に触れるなといつも言っているだろ、ルチェル……」



「いいえ。触ります、私の治癒魔法で今のうちに完治させないと浅い傷とは言え残ってしまうかも知れません」


「あぁ、そうか……それはやだな。頼んだぞルチェル」


「はい、ユキト様」


__フォオォオン。


ユキトが身体に触る事を許すと無詠唱で治癒の魔法をルチェルが発動する。


そうすると、彼女の手がぼんやり発光し始め触れた箇所がみるみるうちに治癒されていき、崩落の時に付いた傷が全て完治する。



「……ふぅ、痛みが消えた。流石だルチェルありがとう助かった」


「いえ。これくらい使用人として当然です、それにしても毎日、毎日ルチェルはユキト様の事を心配しておりました……そこまでして何故ユキト様が『魔法力』に固執するのかは知りませんが……何故そこまで焦っているのですか?」


「いや、焦ってないよルチェル……もっと上を目指したくなってね?」


「学院ナンバーツーでも充分だと思うんですが、……いえ。ユキト様のその向上心私も感心しますわ……しかしあまり無理しないで下さいよ? ユキト様」


いつも無表情で冷静なルチェルが少し取り乱し人間らしい慈愛の視線を俺に向ける。


俺が魔法力の向上に固執し、学院ナンバーワンを目指している事は当然ルチェルも知っている事実だが、本当の理由である『ソフィー』を見返すために欲している力とはバレていないようで内心安心し安堵するユキト。


「ありがとうルチェル。無理はして無いが、その俺への気づかいの言葉胸にしっかり置いておくよ。しかし何故そんな心配するんだ? ……ルチェルが過保護なのはいつもの事だけど」


「はい、……この『予見の瞳』がユキト様に降りかかる苦難、数々を暗示し私にへと伝えて来るのです」


「……なんだと? 俺から不吉のオーラが見えているのかルチェル」


「ええ、私にはただならぬ邪悪な気を纏っているユキト様が見えます……以前は純白な白のオーラしか感じられなかったのに……何故でしょう……」


黄昏刻の2つの真眼(トワイライオッドアイ)


ルチェルの持つ悪魔の瞳。


__元よりルチェルは幼少の頃悪魔に呪われ、それを払った父さんが孤児院より家へと連れてきた悪魔に憑かれた時後天的にルチェルへと宿った魔の瞳『黄昏刻の2つの真眼(トワイライオッドアイ)』は片方の赤の瞳は過去を見つめ、もう片方の青の瞳は未来を見すえる。そんな呪われた『悪魔の持つ』特別な瞳である。


それを持つルチェルはダンジョンから帰ってきた俺のオーラを指摘して、以前よりも邪悪な気を纏っているとそう忠告してくれる。


__そして、心配するルチェルを傍に再び口を開くユキト。



「はは、やっぱり便利だなその眼。俺はやっぱり好きだよありがとなルチェル……」


「……バカ。そういうとこなんですよ……ユキト様はいつもいつもそうやって」

ルチェルの頬がユキトの言葉で急に赤くなり1人でブツブツそう呟いた。


「あ? なんか言ったか? 小声であんまり聞こえなかったんたが?」


「おほん、いえ何も。業務外会話はこの位にして。これよりユキト様へのお給仕の時間とさせて頂きます、入りなさいシャーミー、ライム」


ルチェルの声がドアの外にいる2人の部下メイドへと伝わり2人が入ってくる。


__キュルル。

食器やティーカップが乗ったカートが俺のベットの前へへと持ってこられ、姿勢を正し、丁寧な口調で3人のメイドが俺へとこう言う。


「こちらがユキト様への今日のお食事になります」


『こちらがユキト様への今日のお食事となります』


「こちらがユキト様への今日のお食事となります」


『……どうぞ、お召し上がり下さいませ』

『どうぞ。お召し上がり下さいませ』

『どうぞ、お召し上がり下さいませ』


「おお、美味そうじゃないか」


ルチェルが真っ先に俺の食べたいものを直感的に理解し、カートの上からそれを取り、満身創痍な俺へと食べさせてくれる。


「ふふ、美味しいですか? ユキト様」


「ああ。最高だ……1ヶ月のダンジョン生活でちょうどこんな感じの食べごたえがある肉が食べたいと思っていた所だ、流石ルチェル。俺の好みを理解しているな」


「ええ、ユキト様が帰宅した時にはとりあえずこのSランクの肉があればまあ、どうにかなると思っていましたから取り寄せておいて正解です、喜んでもらえて何よりです」


「悪かったな、俺の好物が肉で……」


「いいえ、好みが分かりやすくてこちらとしてはやり易くて助かってます」


「ふ、そうかまあいいえーっと次は……」

俺はまだ腹の虫に襲われており、次に食べたいものをルチェルへと指示しようとしたその時。


(うっわーーーい!! この真っ赤な果実!! トゥメイト!! あるじゃないですかー〜!!)

俺の精神世界へと篭っていたアリアが俺の中から外の世界へと出現しようとする、、、しかも誰にでも見える感じの実体で。


きっと、アリアの大好物『トゥメイト』で興奮したからであろう__……ほんとにバカな妖精だ。


「バカっ!! 出てくんなよ」


『あっ』(やべ)


「……? ユキト、様?」


「む、むむ? どうしたんですかユキト様」

「む、むむむ? どうしたんですかユキト様」


3人のメイド達が俺の急な独り言を不審に思い驚きつつ心配する__3人のその眼差しが痛い。


「いや、何でもない」


「ビックリしました……急にどうしたのかと」


「いや、疲れてるんだ……今日の所はもう一度眠らせてくれないか?ルチェル、シャーミー、ライムもう下がっていいぞ」


「かしこまりました、では失礼しますユキト様」


「ああ、また明日」


「はいでは」


「行きますよ、シャーミー、ライム」


「はーー〜い!! お姉様」

「はいはい!! お姉様」


「あ、失礼しますですユキト様」

「あ!失礼しますですユキト様」


「ああ、シャーミーもライムもまだまだメイドの仕事頑張れよ」


「はーい!! シャーミー頑張りますです!!」

「はいはい! ライムも頑張りますです!!」


ガラガラ__………。


俺の食べた食器とともにアリアが食べたかった全く手を付けていない『トゥメイト』も一緒に下げられる。


バタン。

3人がすぐさま俺の部屋から出ていきドアも静かに閉められる。


(ぐあああ!!! やだやだーーっス!! トゥメイト食べたいよぉぉぉお どーー〜してくれるんスかあ!! ユキトサマ!!)


「アホ、それはこっちのセリフだ……お前俺の中に篭った意味ないじゃないか……帰ったら『トゥメイト』やると言ったが、もうやらない」


(ひゃあーー〜!!! ちょっとおおおおおおそりゃ。ないっスよぉおお〜ーユキトサマァー~!!!)




うるさい妖精を無視してユキトはそのまま再び眠りについた。



ふぃー。


個人的に書くのが楽しかった回です。

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