Ep17『蘇りの屍、彷徨う魂の器』
__グアォ、グアォオウ……アウウ。
「やはり聞こえる、近ずいてくる……」
「ヤバいっすー〜……誰もいないし魔物も生息生息していないハズなのになんで声がするんスかー〜ユキトサマァ……」
背後に気配を感じ俺達が登ってきた階段の方にユキトは目をやる。
そうすると、下の方からゾロゾロと腐敗した魂のない人間だった者である生きる屍『ゾンビ』がそこには居た。
5体くらいで群れをなし、侵入者であるユキトとアリアの排除を目的としユキトの方へゾロゾロとゾンビ達がゆっくりと近ずいてくる。
「ひゃーー!! お化けーー!! 怖いッスー〜怖いッスー〜」
「フン、なるほど……俺の妖精達に情報が引っかからなかったのは魔物ではなくゾンビだったからか、成程疑問が解けた」
―__グォオ、オオ、ォオ。
「疑問が解け、目の前にこうして堂々と現れてくれたからにはもう恐怖はない、安らかに眠れ、生きる屍よ」
___フォン!
ユキトが魔法式を手のひらで描きルーンを構築しそれをゆっくりと襲いかかってくるゾンビの群れ向けて発動する。
「祓魔式、展開……滅せ、迷える魂よ」
――シュピン!!
―___グ、グォオ、オオ、ウウウォウ。
ゾンビ達の魂は浄化され安らかに眠った。
そうすると、ゾンビ達の腐った肉体は魂をなくしたのがキッカケで消滅しドロドロと溶けていく。
「えぇ!! すご!! 一撃で……ユキトサマァ!! 今は何をしたッスか?」
「ああ、いまのはルーンの浄化魔法さ。アイツらの彷徨う魂を除霊してやったんだよ」
「うええ!? そんなマイナーなピンポイント魔法良く習得してるッスねユキトサマ」
「あぁ、家柄良く住み着くんだよ幽霊の類がね?」
自信満々でアリサへとルーンの浄化魔法を習得するに至った経緯を説明するユキト。
「いえがら? ユキトサマのお家の方って何してるンすか?」
「あ、んーと。代々俺の家の家系はエクソシストの血統なんだよ、ま。俺は霊を払うエクソシストを継ぐ気は無いけどな」
「え、えー! そうなんすか何だかびっくりッス……だからユキトサマが内包しているマナの総量がこんにも多いんスね!?」
「ああ、そう言うことになるな」
「どおりで!! じゃないとその年齢でその規格外のマナの量は説明がつかないッスよ!!」
「まあな、自分の血筋、親父の力に感謝だ」
エクソシスト、悪霊を払う者。
フロールン家は代々、その血筋で魔を打ち人を助け名を馳せてきた。
幼少の頃はその人々を救う親父の仕事である『祓魔師』、いわゆるエクソシストに憧れたが、今の俺には王国全体を警護し、『悪魔』に恐れる国民全員を救済するエリート魔法使い集団『魔法騎士』になると言う目標がある。
ま、『アレイス』によって訪れた今の平和な魔法界に存在する『悪魔』は魔法戦争で逃亡した敵意の無い下級悪魔の残党位しか残っておらず、今後また悪魔が現われかねない。
そう、__王国の完全平和の為にも、俺も早く力を学院で付けて『悪魔』完全撲滅に参戦したい__勿論ソフィーも俺と同じ『魔法騎士』志願の身だ……一緒にソフィーとこの魔法界を守って行ききたい。
『 エクソシスト』である親父の血を継ぎ、学院でも賢才の道を行く俺はきっと、最高の『魔法騎士』になれる。
__と、自分が見すえる人生の目標を再度自覚し、ユキトは奮起する。
「よし、行くぞアリア……俺が求める、いや『好敵手』が求める『レボルアイテマ』はこの先だ」
「はぁいッス!! 付いてきますともユキトサマー!!」
ユキトは生きる屍であるゾンビの魂を天へ救済し、その先に待つ封印された『レボルアイテマ』を手に入れる為に__前へ進む。
◇
__そう。自分の為にそして、幼馴染のソフィーを見返す為に。
次の更新は月曜までにします。