Ep14『古龍出現、発動黒の魔導書』
__ギャオオオ!!!
「なるほどこの洞窟の主、つまりボス登場ってことか」
「ハイっすー!! 私が用意した、上モンっすよー〜!!」
「いや、用意したのお前かよ……?」
「これは善意でやってるんス、勘違いしないで欲しッスー〜!!」
「成程な。今こそ『黒の魔導書』のデモンストレーションの時って事だな」
「そッス、そッスー!!」
__グォオオオ!!!
「ヤバい来るぞ、おいアリア早く魔導書をよこせ!!」
まだ黒の魔導書は契約妖精であるアリアの手の中にありまだユキトの手元にはなかった。
そんな時本能でしか動かない古龍は人間の匂いを放って居る古龍にとっては餌同然の侵入者であるユキトを襲おうと、その巨体がユキトのいる方向へ猪突猛進してくる。
__グルルルルル。
老いても獰猛なその古龍は久しぶりの獲物を前に興奮していた、翼は退化しており使えないがその何年も生きてきた証である肉体と牙は衰えておらず噛まれたら一溜りも無いだろう。
目を光らせ、ヨダレを垂らし強靭な牙を持つ古龍を前にユキトは恐怖と同時にその場でしか味わえない戦闘の臨場感にワクワクを感じていた。
「来るっス!!」
「ああ、分かってる!!」
__ギュオオオン!!
__ボゥン!!
古龍は炎の力を有するタイプの古龍であり、この距離そして一本道でしか無いこの狭い洞窟の中火球を放ってくる。
高速で飛んで来る火球は、みるみるうちにユキトと火球の距離が近ずいてくる。
__そして。
「アクセラ・ドライヴ!!」
__シュタッ!!
火球がユキトに直撃する目前、一瞬でユキトは火球から距離を取り洞窟の上空へと魔法で浮遊した。
魔法式を足に込めて、加速の魔法をピンポイントで当て、素早く跳躍し跳躍した後、足に当てた加速の魔法式を無詠唱で浮遊の魔法「キーパ・スカイ」を結ぶ。
どちらとも学院で学ぶ基本となる下級魔法であったがユキトの応用によりそれらは活躍し、ドラゴンの火球をスマートにかわす。
「ユキト様!! 黒の魔導書を!! ほいッス!!」
__シュッ。
ユキトが古龍の攻撃を見事に回避した所へアリアが、黒の魔導書を投げ渡した。
__……ガシッ。
「……これが黒の魔導書……」
黒の魔導書をユキトは無事キャッチする。
新たなる契約者であるユキトが黒の魔導書を手に取るといきなりそれが光だしユキトはその眩しさに目を覆う。
「ぐっ……あああ!!」
薄暗かった洞窟一体をその光が包み込みその光を見たアリアが驚き思わず言葉を零す。
「……な、なんて『魔法力』……これがユキトサマの持つ、潜在魔法力……」
__フォオオン!!
((……ここは。))
ユキトの目の前に広がるのは暗闇。
そこには何も無くただ闇が広がっていた。
ユキトは魔導書を手にした瞬間空中で気絶し、漂う精神の空間の中に居た。
『はっ!? ……声が聞こえる……』
ユキトの脳内だけに声が聞こえ、暗闇が集まり徐々にその闇が黒の魔導書へとカタチを変える。
『こちらへ……だと、? ……』
ユキトの脳内に語りかけて来るソレの声はとても優しく、綺麗な女性の声で俺を魔導書の前へと誘う。
『ぐっ、ぐああ!! くっ……』
黒の魔導書に手をかざしそれを取ろうとすると激しい痛みが伴い謎の反発力が発生し、磁力のS極とN極の様に黒の魔導書がユキトを拒む様に反発する。
『っぁ……!! ぐ、おぉおお!! っああ!!』
身体全身でかざした左手だけに力と意識を集中させ力技と勢いで黒の魔導書に指の1本がやっと引っかかた。
『よ、よし!! 引っかかった!!』
そのまま、引っかかった指に力を込め__グイっと。引っ張り両の手のひらで本を取る。
『は、はは!! これで『アレイス・マギア・クロウル』の魔導書は俺の物だ!!』
無事それを手に入れたユキト。
両手で黒の魔導書を掲げたその瞬間__左手に激痛が走る。
『ぐっ、ぐあああああ!!!!』
__痛い。
__熱い、熱い。……何だこの痛み……手首がまるで炎、または刃物で深く刻み込まれているかのような痛みに襲われる。
そして、また脳内に謎の声が語りかけて来る。
『魔法の刻印』を刻みますと。
ユキトの手首が光だしリング状に何処の言葉とも分からない刻印が刻まれていく__。
その痛みと刻印と共にユキトの意識は戻り、黒の魔導書を手にする。
「ハァ、ハァ……これで黒の魔導書は俺の物だ」
『覚悟するんだな、古龍……!!』
「ユキトサマ!!」
気を失ったユキトを心配していたアリア、意識が戻ったその姿を見て涙を浮かべながら歓喜する。
ユキトは自分を心配してくれていたアリアへもう大丈夫だと言わんばかりに指でサインを作りもう大丈夫とアリアへ返す。
ユキトは黒の魔導書自体にも確かに選ばれそれを手にした。
六等分された『エデンのカケラ』である黒の魔導書を__……。
※※ ※ ※※ ※ ※ ※ ※※※※※ ※※ ※※
そして準備の整ったユキトが古龍に向け、先制攻撃を仕掛ける__。
宙で浮遊しているユキトはそのまま目を閉じを閉じ、黒の魔導書の能力を解放し発動する。
『解放、黒の魔導書。契約者ユキト・アドモス・フロールンが命じる知恵の象徴たる絶望の魔導書よ、我を誘い、その神秘の力を分け与えよ』
「やりましたね!! ユキトサマ黒の魔導書にも受け入れられたんですね流石ッス!!」
ユキトへ教えた黒の魔導書を使用する際に使う詠唱をユキトが口にしている事からアリアは安堵しユキトを傍から応援する。
「__発動!! 黒の魔導書 _『ウィズダム!!』」
黒の魔導書の有する能力。それは、神秘の知恵の集う場所である『ウィズダム界』と言うこことは違う次元にアクセスし、その情報を黒の魔導書の白紙のページにそれを印す能力である。
そこへアクセスする事に成功したユキトはこの場で最も適切な魔法である『ドラゴンキラー』の魔法情報を複数選択し魔導書のページへそれを刻む。
__グルアアアア!!
ギュアオオオ!!
__ブォオオォオオォオオ!!
古龍は空気を吸い込み、喉元に火球を複数貯めそれを一気に外へと放出する。
古龍の喉の中で溶解した火球がブレスとなって勢いよく火炎がユキト達のいる方向へ先程の火球とは比べられないくらいのスピードで放たれる。
__が、ユキトは動じなかった。
「その行動は読めている!! ……古龍よ、動きが単純だ!! 『魔法式』は黒の魔導書に記されている文章から引用、そして魔導書による自動短縮詠唱の要求……発動条件は俺の発動要求をトリガーに」
「……『魔法力』『マナ』の発現コスト、はユキト・アドモス・フロールンより消費」
「これで行けるはずだ」
『発動__黒の魔導書』
__ブォン!!
黒の魔導書は強い紫の薄暗い光を放つ。ユキトの要求が成立した証だろう。
そして、ユキトは黒の魔導書を手から離す、離した魔導書は宙に停滞しユキトの自動詠唱命令を待つ。
背中の合成した剣を鞘から抜き、高速で目の前に降り注ぐ火炎の中へ素早く突入する。
「そんなユキトサマ無茶ッス!! ブレス攻撃を食らったらいくらユキトサマと言えど一溜りもないッスよ!!」
アリアの心配を背にユキトは火炎へ突入する。
「今だ!! 自動詠唱『シュピーゲル・ドラグ』」
そうすると黒の魔導書がユキトに変わり呪文を詠唱しシュピーゲル・ドラグの呪文を発動させる。
ユキトの前面に魔法の加護が出現し、古龍のブレス攻撃を鏡のようそれにを反射しに跳ね返す。
__ギャオオオオ!!!
「よし、ここまではプラン通り……『魔導書!!さらに発動2番目に選択したスラッシュ・アドラグの付与を発動してくれ!!』」
__ブォン!!
魔導書が光だし呪文詠唱を短縮した形ですぐ様詠唱しユキトの剣にドラゴンに対する強い耐性を能力を付与してくれる。
「これで、終わりだ」
__ズシャアアアッ!!!
ユキトが自分の足に掛けていた加速の魔法式で宙へ、もう一度跳躍しその勢いと引力とともにドラゴンへ対する耐性を持った剣で古龍を頭から間二つへ一刀両断する。
__ギュイヤアアァァアアア!!!!
まさに神速の攻撃__古龍への攻撃は黒の魔導書とユキトの賢才である思考を行使し、古龍は両断されいとも簡単にユキトに討伐される。
「古龍……この程度か。この黒の魔導書のデモンストレーションにもう少し付き合って欲しかったんだが……張合いがない」
「なな、な何言ってるッスか!! 私の用意した古龍は極上品ッスよ!? ケチ付けないで下さいよ!! それに、この古龍の戦闘力は通常の若い龍より何倍もの戦闘力を有してるッス」
「そうか、こんなに手応えも無く死んでしまうもんだから、老いぼれなこの龍の耐久力が貧弱なのかと思ったよアリア」
「そんな事ないッス!! 古龍は歳を重ねる事に動きは鈍くなりますが、外皮は歳と共に進化していき硬度を増していきますッス!!」
(……これはもしや、ユキトサマの『魔法力』と『黒の魔導書』の相性めっちゃピッタリなんじゃ!?)心の中で密かに喜ぶアリア。
「なるほどな。まあいい、黒の魔導書の良い使い方のチュートリアルになった」
「てか、ユキトサマ魔物について『だけ』知識浅くないッスか? 魔法の知識にはあんなに熱心なのに」
「ああ。魔物は『キモイ』からな……興味がわかないんだ。それが幾ら有益な情報だとしてもね」
「でもやっぱりユキトサマ凄いいッスよ!!……あの古龍をいとも簡単に……ユキトサマ……アナタ内にどんな才能を秘めてるッスか!?」」
「うーん才能か、自負してる中で強いて言うなら__『頭脳』かな?」
そう言いながらユキトは頭をちょんちょんと人差し指で叩く。
ユキトは古龍を撃破し、アリアが用意した試練を終え、『深淵の洞窟』を攻略した。
そう、この__『黒の魔導書』と共に。