ケモナーと……沢山のもふもふと……
専門学校ってきついんですね……なかなか執筆時間が取れない……
いつも通りの日常なんてものは突然壊れるものだ。霞は今日、それを強く実感したのだった。
彼女はいつも通りに学校へ行って、そしていつも通りに授業を受けて、いつも通りに帰ってきて、そしていつも通りに家にいるもふもふをもふる予定だった。
「お……おかあさん……? こ、これは……」
その予定だったのだが、何やらいつもとは違う。おそらく大半の人は気がつかない小さな変化なのだろう。しかし彼女には分かった。分かってしまった。
「これって……なに?」
「これだよこれ!」
そう言って彼女は地面に落ちていたそのブツを摘み、母に見せつけた。
「これ! 今までなかった毛でしょ!? どういうこと!?」
そう、この家に見慣れない、おそらくはもふもふのものであろう毛が落ちていたのだ。それになにやらもふもふしたくなるような匂いが家に溢れているのが、まだ玄関ではあるがわかる。廊下を通ってその先に……ナニカがいると。
「霞……あんたどんだけ……そうよ、新しい子をお迎えしたの。全く……驚かそうと思ったんだけどね……」
その言葉を聞いた瞬間、霞の心に稲妻が落ちた。新しいもふもふをお迎えした……つまりはもふる時間がいつもの倍は必要になる……これでは勉強が追いつかないではないか。ASOにいる四もふも家にいるニもふ、合計六もふである。仮に一もふ三十分で考えても三時間はかかる。そして学校に行ってる時間で八時間。……ああ、奏も入れて七もふだ。しかし奏に関しては学校で十分事足りるので問題はない。学校とモフモフで14時間、ご飯、お風呂、で三時間、睡眠で六時間。……ああ、勉強する時間が二時間しかない。何という過密スケジュールなのか……
「ふっふっふ……なんて言うとでも思ったか!」
霞にとってこんなことはなんの問題にもならない。なぜなら既に今年履修予定の数学、化学、物理は予習済みなのだ。
つまり必要なのは英語と国語、科目の関係で社会科は現在取っていないので、1日二時間の勉強でも事足りるのだ。むしろ今抱えている問題としては、先程急に「なんて言うとでも思ったか!」などと大声で言い、そして落ちている毛で新しいもふもふの存在を突き止めたとこで母に引かれていることだ。
「そ、それじゃあ……私はご飯作りに戻るね?」
「あ、待ってお母さん! 引かないで!」
霞も急いで母を追いかける。早く誤解を解かなければ。毛で判別できたのは、毎日もふもふしているからなのだ。消して変なことではないということを。しかし次の瞬間、彼女の頭からはそんなことは消えていた。目が合ってしまったのである。何と? もちろんもふもふと、である。
ケージに入れられながら、こちらをつぶらな瞳で見ているもふもふを見つけたその直後、すでに彼女は動き出していた。とても人間とは思えない速さで、彼女は新たなるもふもふをもふりに行ったのだ。
ひとつだけ注釈させてもらうと、ここに彼女の意思は一切関与していない。考える前には既に体が、手が、そのもふもふをもふっていたのだ。そしてその数秒後、彼女は新たなもふもふをもふっていることに気がつき、そして抱いたまま倒れた。
もう一度だけ言わせていただく、彼女がもふった段階では、彼女の意思は一切介在していない。倒れた霞の顔がとても幸せそうだった、というのは後に母親が語っていた。
◆
「あれ? 霞、なんか機嫌良さそうじゃん!」
翌日、家でもふもふ二もふを同時にもふり、とてもご満悦なところ、第七のもふもふこと奏に声をかけられた。他の人から見ても、今の彼女はとてもるんるんなのだ。
「うん! お母さんが内緒で新しいもふもふを家に迎えてたの! 帰ったら私の知らない毛が玄関に落ちてるんだよ!? 興奮しちゃうよね!」
「うん、待って? 今なんて言った?」
「新しいもふもふがーー」
「その次」
「玄関に私の知らない毛が落ちてたーー」
「毛でわかるもんなのかな!?」
どこがおかしいというのか。すこしもふもふをかじった程度であっても、毛で判別くらいはできるというのに……
「はぁ……全く、奏はわかってないね。そんなの基本だよ? 基本もできてないような奏は罰として……私にもふられてもらいます!」
「え? ちょ、待って? 私もその対象なの!?」
「今までは軽く撫でる程度に留めといたんだけど……もう無理……! 欲が……もふもふ欲が抑えられないのっ! と言うわけで犠牲になってね……!」
「え、あ、ちょっとまっ……いやぁああああ!!!」
奏の悲鳴が、学校に響き渡った。もふるにつれて段々と恍惚とした表情になっていくのがとても面白かった、とのちに霞は語ったらしい。
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