ケモナーの初依頼!
「おお! それでは私の依頼を受けてくれるかな?」
一通り説明を受けた私たちは先ほどのおじいさんの元へと向かっていった。最初の依頼はおそらくこの人から受けるのだろう。
「はい! それで依頼は?」
「そうだったな、忘れておった。私の依頼はこれだ」
そのおじいさんが指差した依頼には何やらよくわからない文字が書いてあった。
「……すみません、なんて書いてあるんですか?」
「ん? ヤマタノオロチ討伐だよ。あのクソ蛇……年に一人街の娘を拐って行きやがる……許せんのだ……! しかしわたしには奴を倒すなんていうことはできない……そこで冒険者の皆にお願いしているのだ。最上級の依頼だよ」
まさかのラスボスである。
「あの……まだ受けられません……」
まだ冒険者になりたての最低ランクである彼女らにこの依頼は荷が重い……というよりはそもそも設定上受けられない。
「ぺっ!」
そうわかるや否や、依頼してきた人物はあろうことか彼女たちに向かって唾を吐きかけた。
「……なんか受けよっか」
所詮はNPCだ。いちいちめくじら立てても仕方ない、と自分自身を諌めて、フロスはアリスとリーフに向き直る。
「「……そうだね、気にしても仕方ないよ」」
二人もかなりイラついていたようで、顔をひくつかせながらもなんとか意識を依頼へと向けた。
◆
「えっと……これとかどう? 推奨ランク『銅』で逃げ出したペットの捜索だって」
そう言ってフロスが持ってきた一つの依頼。そこには「タロちゃんが逃げ出したので捜索をお願いします。タロちゃんは見ればわかります」とだけ書かれていた。
「タロちゃんってのが何かわからないと探しようがないし……見ればわかるってどう言うことだろう?」
アリスの言う通り、確かにこの依頼だけでは何をどうすればいいのかまるでわからない。タロちゃんとはどんな動物なのか、どの辺で逃げ出したのか、少なくともこの程度の情報はあって然るべきなのだ。
「でもほら、地味に難易度高いからなのか結構ポイント高いんだよね。依頼期限も無期限だしいいんじゃない?」
ポイントとはクラスを上げるのに必要なものである。銅から銀にするのなら百ポイント、そして銀から金に上げるには五百ポイント、と言った具合でクラスが上がるごとに必要ポイントも多くなってくる。ちなみに、この依頼で得られるポイントは三十、つまり一人頭十ポイントである。
「んー、まあやってみてもいいかな?」
「みんな! いいの見つけてきたよ!」
アリスも賛成したことで賛成多数。つまりは依頼を受けてもいいと判断し、依頼を受付まで持っていった瞬間、後ろから声が聞こえた。
「……ってなんで依頼持ってるの?」
「あの……いや……その……ね?」
事後報告でどうにか誤魔化そうとしていたフロスはとてつもなく焦る。
「まあいいや、それよりこれ受けない?」
リーフが出してきたのはモンスター討伐の依頼だった。討伐対象はゴブリン、明らかに初心者向けの依頼である。難易度も高くない分得られるポイントも15ポイントとそこまで高くはない。
「それならこれも一緒に受けちゃおうよ、無期限でやれるし片手間にちょうどいいかも」
そう言ってフロスは先ほど誤魔化そうとした依頼をリーフにも見せる。隠してたことがやましいだけであって、別に依頼自体にはなんら問題ないのだ。
「ちょうどいい依頼じゃん! それじゃあ二つまとめて受けちゃおっか!」
結果、わたしたちは三人で二つの依頼を受けることにした。
【クエスト受注】
《ゴブリン五匹の討伐》
《逃げ出したペット、タロちゃんの捜索》
リアルが色々落ち着いたらまた投稿します。




