ケモナーの初発見!
「街だ! 二人とも街だよ!」
およそ10分ほど歩いた頃、巨大な門が三人の視界に徐に入り込んできた。先程不貞腐れていたはずのフロスは、いつの間にやら先頭に立って二人を先導するような形になっている。
どうやら本当に10分足らずですっかり機嫌を直したらしい。扱いやすい限りである。
「……入るなだってさ」
いざ門の前まで来てみると、そこには立ち入り禁止の立て札がそれは堂々と立っていた。
「二人ともどする?」
先頭にいたフロスが後ろを歩いている二人に問いかける。その問いかけに対し二人はただ頷くだけだった。
「入るなって言われるとさ……入りたくなるよね?」
そう告げるとすぐさま扉に手をかけて、力を込める。しかし扉は開かず、それどころか数体のモンスターが湧き出てきて、フロスに襲いかかる。ちなみにタイプは獣、つまりもふもふである。
「「フロス! 一旦離れて!」」
モンスターが沸いた瞬間、二人は同時に後退して距離を取る。そして未だ扉の前にいるフロスに下がるよう指示を出した。
「大丈夫だよー! この子達もふもふだから!」
しかし相手がもふもふである以上はフロスに一切の効果を示さない。彼女にもふもふの攻撃は効かないのだ。
さらに10秒ほど力をこめているとようやく扉が開く。
「二人ともー! 開いたよー!」
本来は数人で凌ぎつつなんとか開けるというイベントなのだが、相手が悪かった。実質的に一人で突破してしまったのだ。
◆
「もし、そこのお方々! もしや冒険者の方であられますか?」
街に入りしばらく歩いていると、何やら貴族らしき人物から声をかけられた。
「「「冒険者?」」」
聞きなれない単語に、思わず三人揃って聞き返す。
「二人とも、冒険者って何?」
「んー……ファンタジー小説なんかではよく聞く単語だけど……ここ平安とかその辺が舞台だよね?」
「んー……よく分かんない」
リーフは言葉自体に心当たりはあるらしい。アリスは何がなんやらという感じである。
「とりあえず話合わせとく?」
「そうだね、なんか情報貰えるかもしれないし」
「おっけー、それじゃあと任せた!」
そう言って先程まで先導していたフロスはいつのまにか後ろに下がってポチと戯れていた。
「はぁ……仕方ないなぁ……そうです、私たちは冒険者ですよ」
「おお! やはりそうだったか! 冒険者の方々へ頼みたいんだが……わたしの出している依頼が誰にも受注されんくてな……頼む! 私の依頼を受けてはくれぬか!」
やはりイベントフラグだったらしい。三人の目の前に
『クエスト【冒険者の心得】が発生しました。引き受けますか? 【はい】【いいえ】』という選択肢が出現した。どうせやることも無いので三人は迷わずに「はい」を選択する。
「おお! 引き受けてくれるか! それでは冒険者組合まで共に来てくれ」
冒険者組合、おそらくはプレイヤーが依頼を受けるために設置されている場所だろう。組合に着くとまずは登録するところかららしい。
「冒険者組合はようこそ! 冒険者制度の説明は必要ですか?」
再び選択肢が出てきたので「はい」を選択する。
「はい、分かりました! 冒険者になると依頼者からの依頼を受けることができます、また、冒険者には位階があり、下から銅、銀、金、白金、金剛石そして最上級が青生生魂となっています。皆様の場合は銅からですね。そして位階が上がると、より難易度の高い依頼を受けることができます! 以上で説明を終了させていただきます。それではようこそ、冒険者組合へ!」




