ケモナーの第二層解放!3
物語の根幹を揺るがすほどのミスを発見したので一旦消去させていただきました。申し訳ないです
「これまた不気味な……」
第二層への最後の砦である部屋は、前に挑戦した試練の塔かの如き不気味さと異質さを放っていた。そんな異質で無機質な部屋に、四人は揃って恐怖する。
「ボスは……ねぇ、あれってボスなの? ただの生首に見えるんだけど」
誰が言ったのか、最初に気がついたのは誰だったのか、異質なら気配を放つ部屋のその奥には、数本の日本刀と、その中心に落武者のような生首が浮かんでいた。
「殺す……我、新皇也」
生首だけの男がゆっくりとそう発する。
「新皇……生首……ねぇ、あれってさ……平清道じゃない?」
無駄に博識なフロスだからこそわかったのだろう。一つのワードからボスの正体に彼女は辿り着くことができた。最も、たどり着けたところでなんだと言う話ではあるが。
「平清道? それってあの首塚の?」
平清道の首塚、平清道の怨霊が化けて、さまざまな霊障を引き起こしたことで知られる、有名な日本の怨霊である。日本三大怨霊として名高い、力の強い怨霊である。
「ねぇ、平清道って何?」
どうやら知らない人物もいたらしい。ウィズは直接聞き、後ろにいたレインも首を傾げ、わからないと言うことをアピールしている。
「お化けです」
「ええ、それは分かるわよ、生首だもの」
「怨霊です」
「ええ、それも分かるわ、すごい目をしてるもの」
「危険なやつです」
「ええ、それも分かるわ、だってボスだもの」
どうやらフロスの回答では、ウィズの質問に対して適切ではなかったようで、彼女の頭には未だはてなマークが浮かんでいる。
「フロス、代わりに私が説明する」
こう言う時のためにいるのがリーフだ。彼女であれば、フロスよりも丁寧に教えてくれるだろう。
「えーっと……平清道っていうのは危ない怨霊です。その昔に処刑された恨みで今も飛び回っている……とかだった気がします」
どうやらリーフはそもそも大した知識を有していなかったらしい。豆知識を覚える以前に、数学の公式を覚えなければならないため、そんな余裕はないのだろう。もちろんウィズが求めていた回答を得られるはずもなく……彼女は依然としてその頭上にはてなマークを浮かべることとなった。のちに調べることによって、彼女が平清道の人生に感動し、何故だかファンになったのはまた別のお話。
「とりあえず今はこれ、倒しちゃいましょ」
そういうとウィズは、彼女の得物であろう盾、それから矛を構えて生首に向けて突進する。あまりに突然の出来事であったため、二人は茫然自失状態に陥り、しばらくポカンとしていた。
「二人とも! サポート!」
彼女らの硬直を打ち破ったのは、先程からウィズの後ろに隠れこちらの様子を窺っていたレインであった。先程とは人が変わったかのように戦い始め、ウィズを必死にサポートしていた。
「……あっ、フロス! 私がサポートするから前線でお願い!」
その言葉にフロスは強く頷き、そしてつい先日仲間にしたばかりのニスカをその場に召喚し、ニスクと共に地面へと別れを告げて、生首へと向かっていった。攻撃、回復、移動、癒しとなんでもござれな万能型のもふもふである。
もちろん攻撃担当のリル、デバフ担当のバスク、癒し担当のポチ、それぞれの得意分野ではニスクは到底敵わないが、何よりも注目すべき点はやはり回復力だろう。ニスクが流す涙には、莫大な回復エネルギーが込められており仮にHPが1であったとしても一気に全快まで持って行ってくれる優れたもの。1日に3回と言う制限はあるものの、十分に使える……それだからかとてつもなく優秀な性能だろう。つまりニスクに役割を振るとするのなら回復担当ということである。
「フロスちゃん! なんか回復できるものある?」
どうやら早速出番が来たようだ。フロスにヘイトが向かないよう、ずっとデコイスキルを使いながら攻撃を一身に受けていたウィズのHPは、すでにレッドゾーンギリギリにまで差し迫っていた。仮にポーションでも使って回復しようものなら6本ほどかかる減少量だ。
「任せて下さい! ニスクお願い、【不死鳥の涙】!」
すると、ニスクの瞳から一筋の涙が流れて、ウィズの指先に触れる。その瞬間、彼女の体を光が覆い、次の瞬間にはHPがグリーンゾーンのトップ、つまりは満タンまで回復していた。
「何これすっご……フロスちゃんありがとう!」
不死鳥の凄さを最初に体感したウィズは、礼を言い、素早く前線へと戻り再びデコイを発動する。
「あと二回までなら行けます! また声かけて下さい!」
そう呼びかけるフロスの言葉に、一瞬だけ手を上げて返事をし、すぐさま戦闘に戻るウィズ。フロスはまたデコイスキルで攻撃を引きつけてくれているウィズに一度声をかけて、退いてもらう。そして上空から強力な炎攻撃を生首に向けて叩き込んだ!




