ケモナーの第二層解放!2
「んんー……これどうなってんの!?」
彼女らは道に迷っていた。第二層に行くための道は迷路になっていたのだ。名をイルジアム・ラビリンスもちろん近道をしようと、ニスクで飛ぼうとしたりはしたのだが、見えない壁に弾かれてしまい、結果、迷子になっているのである。余談だが、フロスは進路という人生でも迷ったりしている。
「ねぇ……これ同じところぐるぐる回ってない?」
「そ、そんなわけ……そんなわけない!」
リーフが言うことに、もちろんフロスも気がついていた。彼女らが同じ場所をぐるぐる回っていることなど百も承知なのだ。
しかし彼女は認めたくなかった。彼女のプライドが許さなかったのだ。下らないプライドである。
「……フロスごめん!」
そう言って、彼女はフロスを壁の方へと突き飛ばした。このまま回っていても埒が明かないとい考え、いっそ壁に向けて進んだ方がいいのではと思ったためである。ちなみに威力が足りなかったため、ろくにノックバックせず、ただただ攻撃した形になった。
「ちょっと!? 何してんの!? もしや謀反か!」
もちろんリーフの考えなんて知る由もない彼女はリーフの行動を理解もできない。
「敵は本能寺にあり! ……って謀叛じゃないからね!? というか誰が臣下だ! このまま回ってても意味ないでしょ? だから早く壁の中に入りなさい!」
リーフの言葉を聞き、フロスはすぐに納得した。というのも、彼女はすでに、同じようなギミックを、VSニスクの時に体験していたのである。
「そういうことね、それならバッチ来い!」
「妙に納得が早い!? まあそれなら……覚悟!」
納得が早いフロスに戸惑いながらも、すぐに切り替えて全力をもって彼女を殴打する。リーフの手加減なしの殴打に、彼女は耐え切れずに壁の中へと吹っ飛んでいった。
「いったー……あ、あったよリーフ!」
痛みに、思いっきり殴られた頭をさすりながら、壁の中に別の道を発見したことをリーフに報告する。
「ホントに!? よし、私もすぐ行くね!」
フロスの声を聴いたリーフがすぐさま壁に潜り込み、彼女のもとへと向かった。普通に壁の中へ潜り込んできたリーフを見て、フロスはあることに気が付いた。
「……ねえ、これ私が殴られる必要あったかな?」
そう、フロスはただの殴られ損である。
「まあ気にしないで、過ぎたことなんだからさ。それより早く探索しよ?」
ちなみにリーフは最初から気が付いていた。それならなぜ殴ったのか? 答えはただただ殴りたかったからである。
「そうだね、早くいこっか!」
リーフの言葉に、彼女はさっさと探索を始める。殴られたことなどもう忘れているのかもしれない。ちょろい女である。
「一本道だね、罠とかあるかな?」
正面を向いた二人の視線の先にあったのは、明らかなボス部屋へとつながる扉であった。その両隣にある頭蓋骨が、扉の不気味さを増加させていた。
「……どうする? 行く?」
正直気が進まないようだ。二人とも長い顔をする。
「ねえ、お二人さん?」
二人が渋っていると、後ろから声が聞こえた。聞き覚えのない声だ。その声に振り向くと、声を発したであろう人物のシルエットには、見覚えがあった。先の大会で、5位だったレインとウィズである。
「もしかしてこれから二層へのボスに挑むの?」
ウィズの質問にフロスが答える。ちなみにリーフはフロスの後ろに隠れて、顔だけのぞかせていた。
「それなら一緒に討伐しない? 人数は多い方がやりやすいだろうし……どう? あ、私はウィズって言います、こっちはレイン」
ウィズの提案は、フロスにとってうれしい誤算だった。二人だけでは心細かったが、四人となると一気に心強くなる。二層ボス、みんなで挑めば怖くない、というものだ。
「あ、私はフロスです、こっちの隠れてる方はリーフって言います、よろしくお願いします。ところで、私は大丈夫ですが……あの……レインさんは大丈夫なんですか?」
見ると、レインもリーフと同じようにウィズを盾にして後ろに隠れていた。
「ああ、こっちは大丈夫よ、リーフさん? は大丈夫なの?」
「リーフ、大丈夫?」
リーフに聞くと、彼女は黙って頷く。どうやら人見知りらしい。何故フロスとアリスが大会で近づいた時は大丈夫だったのか、フロスは今初めて疑問に思った。
「大丈夫みたいです。それじゃあ……いきましょうか」
リーフの許可も得たことで、四人でボス部屋へと向かっていった。
お久しぶりです、リアルが忙しく、また書き溜めも行っていないためこんなに遅くなりました……
ブクマ、感想、評価は励みになりますので是非お願いします