ケモナーの新たな仲間!
ーーあれは二人だけじゃ勝てない
全力を尽くして戦った上、アリスが導き出した結論はーー諦めることだった。
◆
「フロス! サポートお願いっ!」
「まっかせて!」
フロスの攻撃……というよりはフロスが従えているリルとバスクの攻撃が通用しないことを察知したアリスはフロスにサポートを任せることにした。もともと魔法職であり、後衛だったフロスは魔法スキルに関しては多く所有しているのでスキル的にも丁度いいだろう。
「それじゃ改めてーー行くよっ! 【スラッシュ】!」
掛け声と同時に駆け出してブリリアントフェニックスにスラッシュを叩き込む。
「まだまだっ! 【ダブルスラッシュ】!」
そのまま空中で体制を立て直して、続けてダブルスラッシュを喰らわせる。アリス十八番……というよりは近接攻撃主体、特に片手用直剣を使うプレイヤーの基本的なコンボだ。
しかし大したダメージにはならなかった。それどころか反撃を許してしまい、至近距離で魔法を放たれてしまったのだ。
ーー当たるっ……! そう思った瞬間、フロスの方から二つの魔法が放たれた。
「【クリスタルショット】! 【ロックシールド】!」
クリスタルショットで、ブリリアントフェニックスが放った炎の威力を軽減しロックシールドでアリスを保護する。
どうやらフロスの放つ魔法は問題なく扱えて、ボスに吸収されてしまう、なんていうことも起こらないようだった。
「助かったよっ! ナイス!」
フロスに一言礼を言うと、アリスは再び不死鳥に向けて速攻を仕掛ける。
「【ウィンド・オブ・スラッシュ】!」
未だクールタイムは溜まっていない。よってアリスはあまり相性が良くないであろうウィンド・オブ・スラッシュを使うことにした。まだ九州される恐れのあるフレイム・オブ・スラッシュよりはマシであろうという考えである。
「フロス! 任せた!」
スキルを使い過ぎたアリスは一度退いて場をフロスへと一任する。
「【ロックバレット】! リル、行くよ!」
いつの間にやらバスクからリルに変えていたフロスはアリスと入れ替わるように前へと出る。アリスが後ろに下がる以上はフロスが前に出なければまずいだろうと、ゲーム初心者ながら陣形を考えた結果の行動だ。
「よーし! リル、ひっかけ、噛みつけ、噛み砕けーっ!」
怒涛の3連撃だ。後どうやら物理攻撃の類は吸収されないらしい。どんなギミックがあるからまるで分からないが、わからなかったところで大した問題でもないため放置である。
「この距離ならいけるかな……【クリスタルショット】!」
再びリルが魔法を放つ。今度は遠距離ではなく至近距離でだ。至近距離ならばギミックが発動暇すらないのでは? というか浅ましい思考である。
もちろんそんなことはなく、普通にギミックが発動してしまい、結果として上に構えられている火球が膨張しただけであった。
「アリスーっ! リルの魔法もバスクの魔法も効かないっぽいよーっ!」
至近距離で放った魔法が、放った瞬間に吸い込まれたことで、フロスはリルとバスクの魔法は完全に使用不可だということを理解しショックを受けつつも、すぐさまアリスに報告した。
「んー……おっけー! それじゃあ物理攻撃オンリーになるかな?」
最も、物理攻撃は依然として効果的であるがために大した問題とはなっていない。
「それじゃあアリス、前出れる?」
「オッケーっ! もう大丈夫! まっかせなさい!」
自分にヒールでもかけていたのだろうか、後ろでしゃがみ込んでいたアリスがようやく復活し、剣を手に敵に向かって突撃していく。
そこに合わせてフロスも己の魔法を飛ばす。
「「いっけぇーーっ!!」」
フロスとアリスの攻撃が交わり、一つとなってブリリアントフェニックスへと向かっていく。どうやら今回はギミックの発動はないらしい。そのまま一直線に不死鳥の頭部を撃ち貫いた!
「まだまだーっ!!」
頭部に着地したアリスはそのまま、連続でスキルを発動させてどんどんとブリリアントフェニックスのHPを削っていく。そしてHPバーが残り3割になったときーー不死鳥は静かに炎となり消えていった。
「勝った……?」
空間を静寂が包み込む。
「……まだ分からない、ただ……勝ったら宝箱がなにかが出てくるはず……それがないってことはーー」
フロスが最後まで言おうときた瞬間、不死鳥の燃えた後に発生した灰より不死鳥が再び舞い上がってきた。おそらくはスキルの一つだろう。
「……はは、全回復か……フロス、これ二人じゃ無理だと思うの」
ここで冒頭へと戻る。
「んー……もう少し、もう少しだけやってみよっ!」
諦めムードのアリスを横目に、フロスの頭にはある考えが思いつく。
ーーそうだ、テイムしよう
彼女の奥の手であるきびだんごだ。ブリリアントフェニックス、一見フロスのツボを刺激するような姿ではないかもしれない。しかしながらポテンシャルはあるのだ。うまくやればモフれるかもというか一抹の希望があった。最近は1モフずつしか出せないこともあり、モフモフレスになってしまっていた。したがって別の欲求であり、人類の夢である飛行を可能とする飛べるモフモフが欲しかったのだ。もちろんポチやリル、バスクを蔑ろにする気はないのでそこは安心していいだろう。
「そうと決まれば……アリス! ちょっと協力して!」
今度はフロスが目的達成のため、アリスに声をかけた。




