ケモナーの新ボス邂逅!終
「【水撃】! 喰らえ!」
先制攻撃はアリスだ。ブリリアントフェニックスが地上の降り立った瞬間に、自身の持つメタルブレードに水を纏い遠距離から突きを放つ。何もいない虚空に放たれたはずの突き。しかしそれは一筋の弾丸となって強く輝く不死の鳥を撃ち貫いた。
「リル、こっちも行くよっ! 【クリスタルフォール】! からの【クリスタルショット】!」
アリスに続いてリルが放ったのは基本的なコンボだ。クリスタルフォールにより氷属性攻撃の威力を底上げした上でのクリスタルショット。リルが放ったその氷は不死鳥が持つ圧倒的な熱量にも負ける事はなく一直線に不死鳥の元へと向かっていく。
瞬間、不死鳥が吠えた。その不気味でかつ威圧的な声を前にして二人は思わず耳を塞ぐ。耳を塞ぐ中、フロスとアリスは確かに目にした。リルが放った氷が形状を崩し、そしてブリリアントフェニックスに吸収される姿を。
「ーーっ!」
そしてリルのクリスタルショットが完全に吸収された時、不死鳥の目が輝きを増し、次の瞬間には不死鳥の上部に小さな火球ができていた。
「あれ……どう思う?」
あれ、とは不死鳥が上部に発現させている小さな火球のことである。今のところは大した脅威ではないようにも見えるが、高密度の火球である可能性や、ある条件の下で成長する可能性のあるものである可能性も0ではない。寧ろボス戦で、ボスが発現させたであろうものであるが故に、その方が可能性としては高いのである。
「早めに消したいけど……試しにあれに向かってなんか撃つ?」
「それなら私がやるよ【水撃】」
すでにクールタイムも終わったのだろう、先程不死鳥に向けて放った攻撃を、今度は狙いすまして火球へと放つ。
「……うん、ノータッチで!」
アリスが放った水撃は綺麗な直線を描き、火球へと突進していく。しかしあと少しで当たる、というところまで来た瞬間、軌道が変わり、まるで円を描くかのようにゆっくりと火球に吸い込まれていった。
そして、吸い込んだ火球はというと、本当に僅かであるが確実に膨張していることが見て取れた。つまりは触れては行けないタイプのものだろう。
「オッケー、それじゃ……本体集中狙い! 【召喚バスク】!」
先程攻撃を吸収されてしまったリルは一旦戻ってもらい、次はバスクと戦うことにした。直接攻撃ではなく毒による継続ダメージで倒すためだ。
「バスク! 【ヴェノムフィールド】!」
召喚すると即座にヴェノムフィールドを展開して、攻撃力の強化を図る。
「ちょっ!? これ私喰らわないよね!?」
「大丈夫! 敵じゃなければ効果はないよ!」
毒による広範囲攻撃、アリスも当然心配になるだろう。しかしASOにおいてはフレンドリーファイアはないので何も問題はない。ただしやろうと思えばできる。
「ならいいけど……それよりどうするの? 魔法は少し危ない気もするけど……」
「物は試しよ、毒攻撃します! バスク、【ヴェノムショット】!」
攻撃強化されたバスクの毒攻撃、毒ダメージの効果も相まってそのダメージはとてつもないものとなるだろう。
しかし当ては外れたーー否、ある意味では予想通りだったのかもしれない。バスクの放ったヴェノムショットも先程のリルが放った攻撃と同じように、円形軌道で敵に吸い込まれてしまったのだ。それと同時に上にある火球はさらに膨張していた。
「また魔法禁止なの!?」
魔法がまるで効かない状況にかつてのトラウマ、スカル・センチピードが思い浮かんでくる。
「いや、私の魔法は効いてたから何かしらの条件あるはず!」
そのフロスが放ったネガティブな発言をアリスが真っ向から否定する。事実アリスの攻撃は実際に吸い込まれることもなく効いていたのだ。
「もうちょい試さないとダメかも。頑張ろ!」
アリスの激励に、フロスは気持ちを切り替え大きく返事をした。