ケモナーの新ボス邂逅!2
「いてて……アリスだいじょーぶ?」
突如出現した砂地獄に飲み込まれた二人は、よく分からない地下遺跡のようなところへ飛ばされることとなった。
「私はだいじょーぶ、それよりフロスは? なんかすごい音したけど大丈夫?」
「私の方も大丈夫だよ、ちょっとお尻打っただけだから。それよりここって……」
「うん……」
周りの景色を見渡し、一つの可能性に行き着いた二人は同時に目を輝かせる。
「「ダンジョンだよ!!」」
そう、二人が発見したのは何もない砂漠の下にひっそりと佇むダンジョンだったのだ。
「ダンジョン……私の装備待ってろよーっ!!」
ダンジョンの発見に二人ともーー特にアリスが意気込み声を大にして叫ぶ。
「それじゃ探索……はどっち行く?」
二人が落ちたのは一本道のど真ん中だった。左右も先が見えないほどに長く、これを見る限りは短時間で探索できる代物ではないことは明白だろう。
「それじゃせーので指さそっか。せーの!」
アリスの合図と同時に二人とも進みたい方向を指さした。アリスは右、フロスは左だ。どうやら見事に分かれたらしい。
「えっ!? なんで! こういう時は左でしょ!? というか私は迷ったら左じゃないと落ち着かないのっ!」
「うん、それ知ってるよ? 左の法則ってやつでしょ?」
ーー左の法則、人は迷った時に意識せず左側を選んでしまうというものだ。例えば一人でレストランに行くと、座る時は無意識に左の席に座ってしまったり、また何の法則もない場所を歩く時は無意識に左側を選択してしまうというものである。
「それなら何で……って何でそんなこと知ってるの?」
アリスははっきり言って成績は悪い。テストの平均はせいぜい40がいいところだ。そんな彼女が何故このような難しいことを知っているのか純粋に気になったらしい。
「ふふふ……私に分からないことなんてないんだよっ! 後は……もしフロスがゲームの作成者でこの法則を知ってたらダンジョンではどっちに当たりを置く?」
「それなら……右かな」
「そゆことよ。わかった?」
少しフロスに向かってドヤ顔をするアリス。絶妙にムカつくドヤ顔である。
「アリスが冴えてる……! ああ、そういえば明日って降水確率100%だったね」
「ちょっとフロス、私のことバカにしてるでしょ!?」
「うん、してるよ」
「そこは否定しろっ! まあ右でいいね?」
「オッケーっ!」
アリスの話で納得したフロスも左を諦めて右に行くことを了承した。
◆
「アーリースーっ! 遠いからリルに乗っていきたいんだけどー」
今フロスたちは、アリスの指示によってなぜだかリルもバスクもポチも使わずにただひたすら歩いていた。
行っても行っても先が見えないこのダンジョンはもはや床と壁が動いていて自分たちは進んでいないのでは? と錯覚すら覚えるものだった。
「ダメよ、リルちゃんだと早すぎてギミックあっても見逃しちゃうよ」
「それならバスクは?」
バスクはアリスの弱点である。アリスの意見を変えたければ彼女にメリットを差し出せばいいのだとフロスはよくよく分かっていた。
「バ、バスクちゃん……うぅ……だ、ダメよっ! 理由はリルちゃんと同じこと!」
「えっ!? アリスがバスクの誘惑を断るなんて……」
フロス敗れたり。アリスがバスクに乗ることすら拒否した。これ即ちこの長いダンジョンを歩く必要が出てきたことに他ならない。つまりはフロスの敗北だ。
「ほら、多分もう少しだから行くよっ!」
この後もうしばらく歩かされ、フロスアリスともにヘトヘトになったらしい。