ケモナーのスキル旅!3
「フロス、スキルを集めよう」
試練の塔を攻略した2日後、フロスとアリスは二人でASOへとログインしていた。ちなみにリーフは今日は用事があるらしくインできないそうだ。
「急にどうしたの? もう結構スキルは持ってると思うんだけど……」
そして急に変なことを言い出したアリスにフロスは首を傾げる。
「私思ったの……ああいう特殊な敵が出てきた時の攻撃手段が少なすぎる! というか手段がないに等しい気がするっ! 現に第1層のボス、スカル・センチピードには滅茶苦茶苦戦させられたじゃん?」
そう、先の戦いにてリーフは危機感を感じていたのだ。特殊な敵への圧倒的な手札不足だ。
「私の攻撃手段って言ったら……物理攻撃が【スラッシュ】とそれから【ダブルスラッシュ】で、魔法攻撃が【フレイム・オブ・スラッシュ】とそれから【ウィンド・オブ・スラッシュ】の四つだけだよ? ちょっと少なすぎると思わない? というか少なすぎるの」
「あれ? アリスって心得シリーズ覚えてなかった?」
「え? んー……【炎の心得II】と【水の心得I】と【風の心得III】は
覚えてるよ? それがどうかしたの?」
「いや……その辺って結構攻撃スキル内包してなかった?確か【炎の心得I】は【アンファイア】【ファイアボール】【ファイアスラスト】で【炎の心得II】だとこれの上位スキル……みたいな感じでさ」
「……え? そうなの? 知らなかったんだけど……」
どうやらリーフは知らなかったらしい。顔を朱に染めて少し恥ずかしそうにフロスにしつもんを返す。
「うん、確かそうだったはずだよ? だから私魔法系スキルは結構覚えてるはずだし。確か……炎と氷、それから岩、闇、風の心得シリーズは覚えてて追加で炎獄……だから16個かな。アリスは私より多いだろうし22個くらいかな? は覚えてそうだけど……どう? っていうか知らないならなんで覚えたのさ……」
そう聞かれて、アリスは慌てて己のステータスを確認して、所持しているスキルを一つ一つ見ていく。すると確かにフロスの言う通りだった。心得シリーズはIで3個のスキル、IIだと6個のスキル、IIIともなると9個のスキルが内包されている。決してスキル不足なんてことはないだろう。
「……いや足りない! 足りないのよっ! 私たちには物理スキルが圧倒的にたりてないの! 今回みたいな敵がまた出てこないとも限らないしスキル集めるよ! ほら早く!」
フロスは何かいいたげだったが反論する隙も与えずにさっさとスキルを取りに行かせることにした。フロスとしてもスキルは持っておくに越したことはないので「まあいっか」となり、おとなしくスキル集めに勤しむ事になったのだった。
◆
「まずどこ行くー?」
「やっぱりお店じゃない? 一番手っ取り早く手に入る方法だろうし、お金は試練の塔のおかげで沢山あるんだしさっ!」
アリスもフロスも懐には余裕があった。スカル・センチピードを倒した時の報酬によるものが非常に大きいのである。やはりかなりの高難易度に見合うだけの報酬は用意されていて、経験値、お金共にとてつもない量だったのだ。ちなみにスキルなどはなかった。
つまり今の彼女らは、金にものを言わせてスキルを乱獲するだけの力は持っていたのだ。
「うーん……まあそうだよね、やっぱりお店が一番か! それじゃフロス、早速ショッピングといこっか!」
「何買おっかなー! スキルとー……どうせなら服も買いたいよねーっ!」
フロスもやはり女の子だ。ショッピングが楽しみなようで鼻歌を歌いながらアリスの横を歩いていた。
「フロスなんか随分とテンション高いね」
「あったりまえじゃん! ゲームの中とはいえ久々にアリスとショッピングなんだよ? 楽しみに決まってるじゃない!」
テンション高くそういいきるフロスに、アリスは心なしか少し嬉しそうだった。
「おやおや? アリスさん少し嬉しそうですね? なんだかんだやっぱりアリスも私のこと好きなんだね!」
人の変化には機敏であるフロスはアリスの些細な変化をもちろん見逃さず、軽くからかう姿勢に入る。
「え? 当たり前じゃん、逆に嫌いな人とは一緒にいないしゲームやったりもしないよ? 好きだからこそ一緒にやってるんだから」
「えっ!? あ……うぅ……」
全く照れずに言い切るアリスにフロスは赤面しながらうめく。
「あれあれあーれ? フロスさん? ……さては私にこんなこと言われて嬉しかったなーっ?」
逆にフロスを照れさせたアリスはどうやらフロスをからかう姿勢にシフトしたようだ。
「う、嬉しかったに決まってるじゃんっ! わ、私だって……その……アリスが好きなんだから!」
今度こそアリスを照れさせようと、アリスのいうことをそのまま肯定し、仕返ししようとする。
「うん、ありがとっ! 私も好きだよ!」
照れもせずにそう言うフロスにアリスはまたもや照れて再び赤面してしまった。アリスを赤面させからかうつもりだったフロスはアリスに倍以上で反撃を喰らわされてしまったのだった。
「い、いいから早く行こ!」
照れ隠しをするかのようにアリスから顔を逸らして、さっさとショッピングへと向かおうとするフロス。しかし彼女は何故かつけているケモ耳まで真っ赤であり、それを見たアリスはずっとニヤニヤして、微笑ましい笑顔でフロスを眺めていた。
◆
「アリスはどれにするー?」
歩いているうちに、朱に染まっていた顔もすっかりと元に戻り、フロスは至って自然にアリスと話せるようになっていた。
「んー……私はフロスの持ってる【闇の心得I】と【岩の心得I】と【氷の心得I】にしよっかなーって思ってるよ、フロスはどうするの?」
「私はそうだなー……とりあえず【水の心得】と【魔力弾】と【二重魔力弾】にしよっかなー。あとはフィールドで集める!」
「そっか、決まってるならもう買いに行っちゃお! それでは……この後付き合って欲しいんだけどいいかな?」
少し伺うような、不安を孕んだ表情でフロスに問いかける。断られるかもと心配してるのだろう。
「いいよー! それならさっさと買っちゃおっか! それで、どこ行くの?」
「ありがとっ! いやー……リーフとフロスも装備がいいじゃん? なんかファンタジーって感じでさ、私のは……全身鉄の中世の騎士みたいな感じで……私もフロス達みたいな装備が欲しいからボス探しに行きたいっ!」
「おっけーっ! それじゃあボス退治にレッツゴーっ!」
「「おーっ!!」
次の目標を定めた二人はちゃっちゃと買い物を済まして新しいボスを探し出すためにフィールドへ駆け出していった。