閑話 ケモナーの出会い!
この話は読まなくても本編にあまり影響はありません(今のところは)
また、この話にはいじめなどが多少含まれているので苦手な方はブラウザバックを推奨します。
「今日から転校してきました! 清水霞です!」
その日、一人の女の子が転校してきた。清水霞。私の運命を大きく変えた強くてかっこいい女の子だ。
◆
私、春野奏はいじめられていた。たまにきっかけはなんだったのだろう、と思い返すが、今となっては分からない。
カースト上位の女とトラブルが起こってしまい、階段から突き落とされたり、トイレの中でバケツで水をかけられたり、などの肉体的ないじめが始まった。そしていじめられることを恐れたクラスの皆からの精神的ないじめも同時に始まったのだ。無視、仲間外れ、陰口、悪口。上げればキリはない。
(この人も私のことは無視したりするのかな……)
ただひたすらに怖かった、ただ無視するだけならいい、もしも直接的に害をなす人が増えたらどうしよう……と、すごく不安だった。
「霞さんの席は……奏さんの隣でいいね!」
先生が空いている私の席を見て、転校生の席に指定する。
「隣の席だね! よろしく! 名前はなんて言うの?」
「うん、よろしくね……私は春野奏だよ、よろしく」
「あ、私は清水霞だよー! よろしく!」
もしかすると仲良くなれるかもしれない、そんな一抹の期待を込めて転校生に挨拶をする。
転校生はすごく明るい子なのだろう、私の暗い挨拶にも元気に返してくれた。
「それにしても……そのストラップすごいね、可愛いけどどれだけ付けてるの?」
「可愛いよね!? お母さんには置いてけって言われちゃって……これはね……私モフモ……動物が大好きでさ! 特にワンワ……犬が好きなんだけど……こっちの学校来る前にみんなからたくさんプレゼントされてさ、家に置いとくのも忍びないから全部つけてきちゃったんだ」
少し苦笑いしながら答えてくれた。やっぱり人気者だったんだな、私とは大違いだ。
「はい、それじゃあ紹介も済んだことだし授業始めるよ!」
「えー、先生質問タイムとか設けてけれないの?」
質問タイムをよこせ、と先生に多数のクレームが入る。心の内はただサボりたいだけなんだろう。
「それは休み時間に聞きたい人がやって下さい! それじゃ教科書138ページ……ってそっか、霞さんまだ教科書持ってないよね、隣に見せてもらってね」
「はーい!」
先生の言葉に元気よく返事をして、机を近づけてから見せて?と頼んでくる。
「うん、いいよ」
私もそれを承諾し、教科書を少し霞の方に寄せた。
「ありがと!」
もしかしたら仲良くなれるのかな……?仲良くなれたらいいな……
明るい霞の様子、優しそうな表情を見てもしかしたら灰色の学校生活が色付くかも……と淡い期待を抱いた。
「ねぇ、霞ちゃん、その……隣の席の奏さんとはあまり話さない方がいいよ?」
奏はお手洗いから戻ってくるのが早かった、とすごく後悔をした。
「え? なんで?」
「あの子虐められてるからさ……霞ちゃんも目つけられちゃうよ?」
(また一人ぼっちだ……嫌だな……)
自分を犠牲にしてまで私とは関わってくれる人なんていないだろうな……そう思い少しだけ涙を流す。しかし霞の言葉は思っていたものと真逆だった。
「虐められてるから何?」
「え……? 嫌だからさ、目つけられちゃうよ?」
「そうなの?私その辺はよく分からないからさ、気にしなくていいよ!」
嬉しさが込み上げてきた、会って間もないが何故か霞の言葉に嘘はないと信じることができた。
「でも、その……」
「もしかして言わされてるの? 虐めてる人に奏と話さないように仕向けろって」
「ちがっ……!」
「違うならいいけどさ、もしそうなら伝えてもらえる? こそこそしてないで直接言いに来いって」
霞のその言葉に、普段私を虐めている三人が反応して霞の方に近づいていく。
「そう、それじゃあちょっとこっち来てもらえる?」
そしてそのまま教室を出ていった。
(こっちくる……!)
奏は反射的に階段の方へと身を隠し、様子を伺う。
どうやら四人はトイレに向かうようだ。たしかに秘密の話をするのならうってつけの場所だろう。奏もこっそりついて行き、トイレの前で止まる。
「単刀直入に言うわ、春野と話さないでもらえる?」
「ごめん、むり」
「あんた舐めてんの?」
「なんで私が奏と話しちゃいけないの?」
「は? そんなの……せっかくクラスで孤立させるように仕向けたのにあんたが話しかけちゃ全部台無し……って何よ、なんで見つめてきてんの?」
ずっと顔を見つめてきている霞に気がつき、いじめっ子は一旦話を止めた。
「いやーお化粧濃いなーって思って」
「は? 何言ってんの?」
「そんな化粧しまくって外面塗り固める前に内面なおせば? いじめとか下らない」
「な……なんなのよあんた! ……次はあんただから」
「そう、どうぞご自由に。クラスで無視でも、トイレで上からバケツの水をかけるでも、階段から突き落とすでもなんでもすれば? もちろん私は折れるつもりはないよ」
霞はそう言い残してトイレを出て行く。
「あれ、奏!? なんでここに……? もしかして話聞いてた?」
「あ、その……うん……」
「聞いてたなら入ってくれば良かったのにー」
「いやあそこに入れる程肝座ってないからね!?」
「んー、ま、いっか! それじゃこれからよろしくね!」
そう言って私の手を握る霞の笑顔はとても魅力的だった。
転校してきた霞と言う少女は私をいじめから守ってくれただけでなく、一日目にして私の心を奪っていったのである。
この時点での彼女はは中学生です。
2章の作成にはまだ時間がかかるとおまわれますのでしばらくお待ち下さい。