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ケモナーの月例大会!3

「フハハハハーっ! 我、最強なり! 我、不滅なり! 我、モフモフなりーっ!」


リルに乗りその上で何やら魔王のような口調で叫び続けるフロス。


「ほんっと好きだねその口調……」


その横でバスクに乗りながらフロスを見つめるアリス。


その二人が通る道にいた他の大会参加者達は、もれなく二人の……正確には二匹の餌食となっていく。


下から聞こえる大会参加者の悲鳴など、今、心は魔王になりきっているフロスは何処吹く風と聞き流す。


「ねえ、フロス……少しは私たちも戦わない? 全部バスクちゃんとリル君で終わっちゃってるじゃん。いい加減ポチをモフるのやめて降りよ?」

「えー……もう少し魔王気分味わいたいな……んーまあいっか! そうだね、私たちも少しはやろっか、せっかくの大会なんだし!」


アリスの説得が功を奏し、フロスはリルの上から降りる。それに続いてアリスもバスクから降りた。しかしお互い降りてもまだ撫で続けている。


「……ねえ、いつの間にか囲まれてるよ?」


しばらくモフモフに夢中になっているうちに敵に囲まれていた。


「さっきはよくも……俺たちをモブみたいに倒してくれたな! ここに集まった人間は何か分かるか? 魔物事故被害者の会だ!」

「「魔物事故被害者の会??」」


あまりにも聞き慣れない単語にアリスとフロスは同時に首を傾げる。


「ああ、あれを魔物事故と言わずして何という? ……知ってっか? 一度倒されたやつは全員同じ場所にスポーンするんだ。ここにいる奴らは全員お前らが轢き殺した者達だ! お前らを怖がってこなかった奴もいたがここに500人集まっている! 大人しく倒されることだな」


500人の大群にフロスとアリスは息を呑む。


「フロス……どする? 退いた方がいいと思うんだけど……」

「いや、……ここで退いたら魔王気分味わえないわよ! 魔王は敵を轢いても退かないの!」

「残るの!? もう……分かったよ、最後まで付き合う!」


アリスも覚悟を決めたようだ。


「おいおい! この人数相手に戦うって言うのか!? 逃げた方が賢明だぜ? ま、どっちにしても逃がさないけどな! 野郎ども、やっちまえ!」

「リル! お願い!」


彼らは知らない。轢き殺され、まともに戦闘を行っていない彼らには知る由もなかった。目の前にいる轢き逃げ犯の得意分野は対複数殲滅戦だと言うことを。


半数近くの人物の足が凍る。


「お前ら! 炎魔法だ! それか砕け!」


男達は皆冷静だった。しかし砕いている(溶かしている)少し時間が命取りになる。


「やっちゃえ! リルにバスク!」


氷が砕けると今度は足元が毒沼に変わる。その毒沼によって大半の者が倒れた。しかし生き残っている者もいる。毒耐性を獲得していた者達だ。そんな彼らの相手はリル、ある者は氷の礫により、またある者はリルが持つ強靭な顎により次々と倒れる。この間、ポチは何もしていなかった。


「魔物を使うなんて卑怯……だ」


フロス達を囲んでいたおよそ500人。その全てがものの数分で殲滅された。


「ねえ、そういえばさっきからバンバン撃ってるけど制限とかない訳?」


何度も技を使っているのだ。普通は何かしらの制限があるだろう。アリスはフロスに確認を取る。肝心なところで制限のせいで負けるのは困るからだ。


「うーんとね……属性のない【噛み付く】だったりは制限が一切なくて、属性攻撃だとクールタイム10分だってー。使用回数の制限はないっぽいよ」


それぞれのスキルを確認するフロス。


「使用回数の制限ないの!? この子達ちょっと強すぎない……?」

「うん、それは私も思ってたとこ、でも可愛ければなんでもいいの、さあおいでー!」

「そうだね、可愛いは正義! フロス、私もバスクちゃん触りたい!」


二人は再びモフモフし始めた。


「よ、さっきぶりやな」


モフモフしながらホワホワしている二人に声がかけられる。


「あ、アーボさん!」

「それにしてもあの大群をよう切り抜けたな」

「あれ、なんで知ってるんですか?」

「そりゃあ見てたからな」


どうやらアーボ達は襲われてる現場を覗き見していたようだ。


「それなら助けてくれてもよくないですか!?」

「いや、一応ワイら敵やからな? それにあれは自分らが悪いやろ」


実際自分たちが悪いことを自覚していたフロスは何も言い返せない。


「まあせっかく会うたんや……さっきの恨み、晴らさせてもらうで!」


そう言ってアーボ三兄弟は武器を構える。


「ええ……また戦うんですか!?」

「こちとら男としい負けっぱなしじゃいられねぇねん! それにな……魔王は最後には負けるんやで?」

「……そうですね、やりましょう、知ってますか? 魔王は……負けないから魔王なんですよ」


魔王という言葉に火がついたのだろう。フロスも構える。


「ほら、アリス! ぼーっとしてないでやるよ!」

「え? あ、うん!」


話に置いていかれぼーっと空を見ていたアリスがフロスの声で引き戻される。


「あ、そやそや、後ろの奴はしまってくれないか? ボスと戦うのはもう嫌や!」

「え? いやあの……やっぱり本気でやらないと失礼かな……と」

「あんなんされて勝てる訳ないやろ! 勝ち筋残してくれへんか?」

「ええ……まあそれなら直接は戦わせません」


最後まで締まらないアーボだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小物感凄いなアーボくん… でもまあこの殲滅っぷりと最初を思い出せば同情もしますね… 頑張れ、アーボくん!負けるならいい負けっぷりを見せてくれ!! [一言] アーボって聞くとどうしても思い出…
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