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ごめんよヒロイン!メインヒーローは渡せない!〜気づいたら溺愛されていました

作者:

思いつきの衝動で書き上げました。

ーーーーーーーーー

2020.08.13 日間 異世界転生/転移 15位!

2020.08.14 日間 異世界転生/転移 9位!

2020.08.15 日間 異世界転生/転移 7位!


ありがとうございます!

「まーじーかー」


ご機嫌よう、皆さま。

わたし、先ほど階段で足を踏み外して転げ落ちた侯爵令嬢のルルディ・アゴスティーノです。とても、とても強く身体をぶつけたみたいで痛い。そりゃぁもう、とーーーーっても痛い!でもそれ以上に、ショックを受けているの。



異 世 界 転 生



物語の中だけのお話だと思っていたのに、それが現実としてあるなんてっ!!頭の中は大混乱。目覚めてから、あれ?ここ現実?と思ったから、可笑しな事を言う前に侍女や侍医を下がらせて寝台の中で一人、考えているのだけど、やっぱり現実みたい。


鏡を見て自分の姿を確認すると、そこには前世のわたしが知っている今の私の姿。


『蝶の恋と華の毒』のヒロインに立ちはだかる悪役令嬢、それが私。


孤児院で育てられたヒロインが男爵家に引き取られて、十七歳の時に王立学園へ編入して、王子やその側近達を虜にしていく。


王子や側近達の周りを蝶のように美しく舞い蜜を吸う、貴族らしくない無邪気で愛らく、皆に好かれるヒロイン。


お決まりのピンクブロンドにエメラルドのように澄んだ瞳、線の細い身体で可愛いヒロイン。


私の容姿はブロンドの髪に吊り目の大きな瞳は青い色。侯爵令嬢で第一王子の婚約者の立場からヒロインに嫉妬して実家の権力を笠に虐め、最後には愛する王子に嫌われて断罪される。


愛する人に断罪されるなんて、最後の最後で絶望を味わい死んでいくのね……あ、でも、愛する人に死ねと言われるのは最後の幸福かも?



……んな訳ないか。



今は十七歳で既に王立学園の二年生。今年、ヒロインであるファラーシャ・フライが編入する。婚約者のいる男に擦り寄り次々と籠絡していく魔性の女。



……その手腕、是非とも教えて頂きたいわ。



じゃなくてっ!!



えーと、現状を確認すると、私は第一王子であるギルバート・フルールの婚約者、他の攻略対象は未来の宰相候補に近衛騎士団長の息子に魔術師長の息子、王子の乳兄弟の護衛、私の義弟のノエル。隠しキャラは誰だっけ?


確かゲームでは全員に嫌われていて手が付けられないくらいの我儘娘で……



あれ?なんだかゲームと私は違うのでは?



王子に嫌われてはいないと思う。ゲームだと避けられていた印象だけど、現実では常に近寄ってくるのは王子の方だ。恐らく。

この前のお茶会では何故か膝に乗せられた。

きっと私で暖をとっていたのだろう。寒いならサロンでお茶すればいいのに。


弟にも嫌われていたはずなのに、現実ではシスコン気味だ。

学園でも私が一人でいると心配して一緒にいてくれる心優しい弟だ。

そうか、ゲームでは養子に入った義弟にいい感情がなく虐めていたんだった。


他の攻略対象とも良好……いや、私がそう思っているだけで実は嫌われているのかもしれないわ。



うーーーーーん。



よし、ゲームに関わらずに生活するのが賢い選択ね。あったまいい!!ゲームの悪役令嬢ルルディはお勉強が大嫌いで、オシャレ大好き、いつもお茶会で自慢するのは宝飾品と王子のことばかり。


現実の私はお勉強が好きで成績優秀!!王子の婚約者であることも自慢せず、学園でも目立たないように生活していたし品行方正!!これなら、今からでもゲームに関わらず生活できるわ。



そうと決まれば即行動!!!



私は急いで夜着のまま、お父様の執務室へと向かった。さっきまで寝台で横になっていた私が現れた事で、お父様は驚いていたけど気にしてられないわ。


「お父様、わたし留学します。卒業式くらいに帰国しますね」


「は?」


「ですから、留学します。フロンティア王国は魔道具の開発が進んでいるようですし、私も勉強したいのです」


「ルル、強く頭をぶつけたようだけど大丈夫か?もう少し休みなさい」


「いいえ、ぶつけたからこそ閃いたのです!!フルール王国で甘やかされて生活したままでは私の成長は見込めません!いざゆかん!フロンティア王国へ!!手続きを進めておいてくださいね。あ、あと、私、面倒事を起こしてご迷惑をおかけする可能性がひっじょーーに高いので、ギルバート殿下との婚約も解消しちゃってくださいね!」


その言葉を残して私は足早にお父様の執務室を後にした。お父様のいた場所より奥に人影があったように思うけど、執事のセンドリックよね、きっと。センドリックがいたなら直ぐに手続きが済みそうね。私は荷物でも纏めましょう。



ルンルン気分で部屋へ戻り旅行鞄に荷物を詰めていく。

あぁ、楽しい!!

旅行前の準備が一番楽しいのよね。今世では領地と王都以外には出掛けたことないけど。


フロンティア王国は魔道具の他に海産物が美味しいと聞いたことがあるわ。海鮮丼とかあるかしら。他国だから人の目を気にせず食べ歩きもできそうね。


カレンダーを見て今気づいたのだけど、もしかしたら今日はヒロインが編入する日じゃない!?


良かったぁ〜。ヒロインに遭遇する前に留学を決めた自分の決断の速さを褒めてあげたいわ。


今頃ヒロインは職員室がわからず廊下で迷っているところをメインヒーローであるギルバート殿下に助けられて……少しお話をして愛らしい笑顔でお礼を伝えたヒロインにギルバート殿下が微笑み返す……そんな出逢いイベントをこなしているはず。


その出逢いの場面を見たルルディが嫉妬してギルバートに詰め寄る……うんうん。


あれ?嫉妬するはずの私が邸にいたら出逢いイベントどうなるんだ?私に嫌悪感を抱いて、その前に出逢ったヒロインに対して芽生えた恋心に気づいていくストーリーだったような……まぁ、いいか!ヒロイン力で頑張れ!!世界は君の味方だ!たぶん。



ヒロインごめんね、私に悪役令嬢なんて役は無理だわ。虐めるなんてできないもの。荷が重すぎる!その辺は強制力でどーにかしてちょうだい。


ついでにお妃教育もお任せしちゃおう!

大変なのよ、自分の時間はないし笑顔を保たなくちゃいけないし、でも、ギルとのお茶の時間は幸せだったなぁ。


おおっといけない。

もう、ギル……ううん、ギルバート殿下のことは思い出にしないとね。


「あぁっ!この先、ギルと会えなくなるのは寂しいけど、ギルの幸せと私の身の破滅を防ぐためには仕方がないわよね。生きていれば遠目にでもギルを見ることが出来るし、嫌われる前にお別れすれば、良い思い出として彼の心に残るはずだわ」


うぅ……声にすると悲しくなってきたわ。ギルと婚約して五年だもの。辛いお妃教育もギルが支えてくれたから頑張れた。


でもこれからは、あの微笑みや優しさは全てヒロインに向けられる。そう考えると……うん、やっぱりギルの近くにいると嫉妬に狂ってヒロインに嫌がらせをしちゃうかも。


本格的なイジメは無理でも、チクッと言ったりクスクス笑ったり……それをギルに告げ口されてヒロインはヒーローからの愛を得るのよ。そんな私は当て馬咬ませ犬。


「ギル……やっぱり嫌いになれないよぉ」


涙がこぼれ落ちた。言葉にするって凄い。ボロボロと涙が零れ落ちる。


「なら嫌いにならなければいいだろ」


へ?

ここで聞こえるはずのない声が……


「ふふ……悲しすぎてギルの声が聞こえたわ。幻聴だなんて……」


幻聴……そう、幻聴よ。

だってギルは学園にいる時間だもの。


「おい、聞こえているんだろ。なーにしてんだよ」


げ……幻聴ではない?

私は恐る恐る後ろを振り返った。そこにはいるはずのないギルの姿……!



なーんーでー?!



「ルディ、何をしているんだ?」


私がいるのは衣装室。寝室とリビングの間にある少し小さめの衣装室なのよ。あれ?部屋に入ってきて、ここにいるのよね……。


ギルは衣装室の壁に背を預け腕を組みながら私を見下ろしている。とても素敵な黒い笑顔で……圧を感じるのは気のせいかしら。


「えーーと、宿泊の準備?」


「何処へ行くんだ?」


「ちょっとそこまで?というより、いつからそこに?」


「ルディが二着目のドレスを詰めている頃から」


って割と最初からじゃない!!!

え?いつから邸にいたの?!


「ルディ、いくら父親の前でも邸を夜着で歩き回るのは感心しないな」


へ?何で知っているの?

そういった能力あるの??

わぉ!王族ってばすごーい!!


「んな能力あるわけないだろっ!心の声がだだ漏れなんだよ!」


「あれ?いつから漏れてたかしら?」


「嫉妬してどうとかヒロインがどうとか」


「ほぼ全部を声に出していたの?!」


がぁーん!

私ってば阿保の子みたいじゃない!!

落ち着きがないと阿保の子になるのね。

お勉強が出来る阿保の子ってダメ子じゃない!


「ルディは思い込んで周りが見えなくなると声に出していることが多いからな。で、俺と婚約を解消したいと?」


あぁ……さっきよりも美しい微笑みだわ。

倍以上の圧を感じるのだけど。


「えぇと……お父様がお話ししてくださったのですね!」


「違う。俺が侯爵の執務室に居たことに気付いていなかったのか?」


あーーあの人影は執事のセンドリックではなくギルだったのかー。



え?全部聞かれてた?



「登校前に階段を踏み外して転げ落ちたと聞いて驚いた。ぼうっとしている事が多いから、いつかはやらかすだろうと思っていたが、まさか、本当に踏み外すとは思わなかったよ。ノエルはいなかったのか?」


え?私ってば、そんなに心配かける阿保の子認識だったの?!


「今朝、ノエルはクラスの係りで早くに行く用事があったの……」


「いいか、誰の手も借りずに一人で階段を降りるな。明日からは俺が迎えに来るまで部屋で待っていろ」


「あ……はい」


「留学の件は考えておく。ルディが一人で行くと心配で夜も眠れないしな。行くなら俺が付き添う」


「はい?」


第一王子って気軽に留学できるの!?

いやいや、ヒロインの相手しなくてどうするのよ!!


「不服か?」


「えーーと、いや……その……あぁ!学園は??」


「早退した。婚約者が怪我をしたのだから当然だ」


「いやいやいやいや、あの!えーーと、編入生はっ?!」


出逢いイベントこなさないと物語が始まりませんよー!!!


「編入生?あぁ、いたな。道に迷っていたから、近くにいた侍従に相手をさせた。それがどうかしたか?」


「可愛かったですか?」


心奪われて物語スタート!!

なんて言ったって、ギルの好みど真ん中!!なはずなんだけど。


「いいや。馴れ馴れしい女だったな。腕を絡めてきたから驚いた」


「え?」


「ない胸を押し付けられてもなぁ……詰めて大きく見せる努力は感じられた」


「は?」


「俺はルディの胸の大きさが好みだ」


「はい?」


何言ってんの、コイツ。

と思いつつ自分の胸に目線を落とすと、うん、立派です。小ぶりのメロンサイズといったところかしら。


思わず下から持ち上げたわ。

うん、いいサイズ感ね。


いやいやいやいや、出逢いイベントをぶち壊してんじゃないわよ!!ゲーム始まらないじゃない!!


「あの〜……」


「なんだ?」


「婚約解消は?」


「する訳ないだろ、お前は馬鹿か。お妃教育だってしてんのに解消したら無駄になるだろ。ルディは抜けているところはあるが優秀なんだから王妃できるって」


「いやぁ〜、ご迷惑をお掛けしちゃうから辞退しようかと」


「無理、諦めろ。好きで婚約者にしたのに逃す訳ないだろ」


はぁぁ……と、ギルが大きな溜息を……え?好き?私を?


「ルディは政略だと思っているだろうけど、婚約者を選定するお茶会で一目惚れして婚約したいと陛下に頼んだ。だから、ルディが何をどうしようと婚約は解消しない」


「でぇええええ!?ギルって私のことが好きだったの?!」


「やっぱり気付いていなかったのか。そうだろうとは思っていたよ」


あわわわわわ。

知らなかったー!!

でも、これからヒロインを好きになるんじゃ……??


「お前、変なこと考えているだろ。信じられないのか?」


床に座っていた私の目線に合わせるために、ギルも床に片膝をつくようにしゃがんで、ものすごい目の前に綺麗なギルの黒い瞳が……。その瞳に、間抜けな私の顔が……映って……



ちゅっ



へ?



「もう遠慮するのはやめた。ルディ、気付いてないんだもんな。これからは遠慮しないし、余計なことを考えられないようにしてやる。俺は他の女に心が移ることはない。わかったか?」


「は……い」


あれって……わたしの……


「ファーストキスもらっちゃった」


ギルの言葉を理解する前に、また、唇に柔らかい感触がして……ペロって舐められたーーーーーー!!!


口をパクパクとするだけで声にならない。きっと私は耳まで真っ赤だ。


「ルディの唇は柔らかくて甘いな」


口の端を上げてニヤリとしたギルが……私を見つめていて……動けない。

悪戯が成功したように笑うギルが可愛すぎる!!


「卒業したら気軽に他国へは行けないだろうから二人で留学するか。半年くらいなら予定もつくだろうし。フロンティア王国以外でもいいだろ?」


「いいの?」


「二人で行くなら問題ない。二年の終わりか三年の中頃までには行けるように準備する」


「ありがとーーー!!!」


思わずギルに抱きついたら、勢いがありすぎたのか、そのまま後ろに倒れちゃって、なんだか私が押し倒したみたいになった。離れようとしたけど腰を抑えられて逃げられない。


「ルディ……暫くこのままで。その服で抱きつくの反則だから」


衣装室の奥で押し倒した私は薄い夜着で、スカート部分は少しめくれている。


ついさっきファーストキスをしたのに、今、ギルに後頭部を抑えられて何度もキスをしている。衣装室に響くリップ音は私には刺激が強すぎる。



恥ずかしすぎて、そのまま私は意識を手放した。本日二度目の気絶だ。


ギルの色香にあてられた。きっとそのせいだ。



ごめんよヒロイン、乙女ゲームは他の攻略対象者をあたってくれ。やっぱりギルのことは諦められない!!

お月様では「僕は婚約者を溺愛する」を連載しています。第二章まで完結!

他にも短編を公開しているので、よろしければ作者マイページからご覧ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] すれ違う前に捕まえる事が出来て何より。 馴れ馴れしく腕を絡ませてくるあたり、ピンクも転生者の可能性大? もとからそういうハンター気質なだけなのかな? ともあれ、少なくとも王太子はピンクの…
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