98・未来・幸せ
「ほら、外出るぞ。」
そんな二人を寂しそうに眺めるメイア、そしてそんなメイアに気付いたミョンハクは寂しそうに笑うとメイアの頭をかきなぜた。
「どうしたんだよ!しけた顔して!」
「あ、ううん!あの二人仲いいなって・・・・・・でも、ルルスちゃんが変わってくれなきゃ私達の未来は・・・・・・暗やみに包まれちゃうよ。」
「は?暗やみ?なんだそりゃ。」
「気にしないで!ただ、ルルスちゃんの未来が・・・・・・幸せであるといいなって・・・・・・思っただけだから。」
「メイア・・・・・・?」
何をそんなにルルスにこだわって、何をそんなに未来にこだわるんだ?
大体、前々から闇、闇って。なんのことなんだよ。
そういいかけた瞬間メイアはファーラの元へ駆け出した。
「カルナさんから話は聞いてます!えっと・・・・・・ファーラさん・・・・・・だよね?あれ?でも他の三人は?」
「ああ、先見をしてくれた占い師と、夢渡用の道を作ってくれたカリア、そしてこいつが、私の幼なじみのナハスだ。」
順々に名前を教えてくれた。
「えっと・・・・・・それで・・・・・・私達初めてこの国に来てわからないことだらけで。」
「そうだな。何から教えればいい?」
「先見とか夢渡とか道とか・・・・・・。」
「それは未来を見ることのできる能力だ。夢渡は夢の中を渡る人間のことでこちらの意志を伝えるためには夢渡をするための道が必要なんだ。それより、助けてくれてありがとな。」
「あれ?少しさっきより幼くなった?」
メイアが目を擦る。
「力があるべきところに戻ったから私達の力も消えたんだろうな。」
ファーラがあたりを見渡した。
「メイア!行くぞ!」
ミョンハクがメイアを呼んだ。
三人はすでに外に出ていたのだ。
「置いていくなんて酷いなあ!」
「だから呼んだだろ!」
「ムゥ・・・・・・!」
むくれたメイアを見たミョンハクはわざとらしく怒ってみせた。
「何が不満なんだ!」
「私だけのけ者って酷いよお。」
「わかったわかった。な?別に一人にしたわけじゃねえから。」
「・・・・・・うん!」
ニパッと笑って城内をファーラ達に案内してもらうことになった。
が、しかし、すぐに囲まれた。
「そこまでだ!」
周囲を見渡すかぎり、男男男・・・・・・。
「な!こんな男集いったいどこから!」
ファーラが驚きの声をあげるとルルスが自分の唇に人差し指をあて、シッ!とやった。
「これは・・・・・・幻術・・・・・・でしょうか?すべて無効化させてみます。」
さっそく歌うと数人消えたが、ちょっとしかたたないうちに数人が回り込み、ルルスの歌を無理やり中止させることになった。
「キャッ・・・・・・!」
小さな悲鳴をあげ、剣で降りかかられそうになった瞬間、メイアが飛び出した。
ギィイイン!
そして次々にセタ、ミョンハクがルルス三人の中心にして守った。
あちこちで金属のこすれあう音が響く。
「メイアちゃん!セタやミョンハクまで!」
ルルスがおろおろしているところでメイアは叫んだ。
「歌って!」
「え?」
「続けるの!」
「でも・・・・・・。」
ルルスは戸惑っていた。
「私達は大丈夫だから!」
「は、はい!」
ルルスが歌うたびに人が消えては増え、力も増していた。
「ふっ・・・・・・うぬぅ・・・・・・!」
メイアはそろそろ力の増した男の人達とまともに戦い会うのはきつかった。
攻撃を受けたときにこの場から吹っ飛ばないようにするのがいっぱいいっぱいだったのだ。
メイアは剣から弓矢に変えるとたくさんの敵を射た。
するとセタ、ミョンハク側から・・・・・・つまり、メイアの後ろから真上に敵が飛んできたのを感じた。
「させるかっ・・・・・・!」
メイアは上にとんだ男二人を射ると二人はルルスの横に落ちた。
ルルスの体がビクリと震える。
〔メイアちゃん・・・・・・彼らをあまり攻撃しないでください・・・・・・!〕
いきなり脳内に聞こえた声にメイアま戦いながら返事を返した。
〔何で?〕
〔これはまだ予測で確かめようもないことですが、彼らは一人倒されるたびにその倒された人数の数だけ強くなっていきます。〕
〔通りで戦いづらいわけだよ。〕
〔ミョンハクやセタにも伝えたいのですが、御覧のとおり、私はまだ歌っていますし・・・・・・。〕
〔わかった。やってみる。〕
そのやりとりが二人の脳内で一瞬にして成立した。
一対大量の男集を相手にしているセタとミョンハクは今にも押し切られそうに体が仰け反りつつあった。
メイアは弓矢を瞬時にブーメランに変え、一周するようにブーメランを放った。
放った隙に敵はメイアに向けて剣をメイアに突き刺した。
メキメキっという音とともにメイアが息をみだしながらニッと笑った。
剣が確実に突き刺さった・・・・・・はずなのにその場所には手があり、手には透明な壁とヒビがあった。
その間にもブーメランはセタとミョンハクの敵をなぎ倒していた。
セタとミョンハクは驚いて、ほぼ後ろのメイアを振り返った。
メイアは片手を盾にしたまたまもう片手で戻ってきたブーメランをキャッチすると二人がこちらを見たのを感じ、振り返らずに言った。
「ふたりとも!倒さないで!その人達は消えれば消えるほど多分力が増えるの!これからルルスちゃんのあたりによって!」
二人は言われたとおりに動く。
するとメイアはまたもや二人を振り返らずに確認し、敵の不意をつくとバリアを張った。
男たちはバリアを破ろうと様々な攻撃をしてくる中、四人はやっと一息突いた。
そんな戦闘シーンを見ながらちゃんと避難していたファーラ達はただ、「すげえな」とナハスがつぶやいただけだった。
一方で敵にまだまだ囲まれ危機を脱していない四人は話し合いをしていた。
ルルスは歌を止め、これまでに自分が思ったことを洗い浚い四人に報告し、どうすればいいかを考え込んでいた。
「とにかく、彼らは幻でもあるのでまともに戦ったところでムダでしょう。なんとか逃げ切って王の部屋に行かなくてはならないでしょうね。」
「そんな・・・・・・あそこの四人はどうするの?この城の事私たちは知らないんだよ?」
「飛ぶわけにも行きませんし、四人には走ってもらって私達は先頭で戦いながら走るのはいかがでしょう?早くしないとこのバリアも食い破られてしまいますよ?」
ルルスがくいっと顔をあげた先にはバリバリにヒビが入っているバリアがあった。
「仕方ないよね・・・・・・それじゃ、それでいこう!」
行くよ!と合図があると四人は一斉に夢渡達のファーラの元へ駆け出し、軽く事情を説明すると無理やり納得していない人も含め8人で走りだした。
曲がり角を曲がると敵は消え、8人は息を荒く吐き出しながらそれぞれに安堵のため息をついた。
「でも、変ですね・・・・・・急に敵が追ってこなくなるなんてこと、あるんでしょうか?」
ルルスがつぶやくとファーラが顔を上げた。
「多分後宮に近いからだ。そこを右に曲がると後宮に突き当たって、そこの屋上に王の部屋があるという。後宮の屋上は全て王の部屋。さらに後宮以外の場所も王の所有地、露天風呂なとがあるとダリアに聞いた。」
「ダリアさん・・・・・・?」
ルルスが聞き覚えのない言葉に反応した。
「なんでもない!ここには・・・・・・いないからな。さあ行くぞ!王の部屋はあと少しだ!」
と言って走りだしたものの、後宮の階段をかれこれ30分以上は上り続けている。
「お、おい・・・・・・王の部屋ってのはまだかよ?」
ミョンハクがファーラに聞くとファーラも首をかしげた。
「おかしいな。確かに後宮は王や王子達のお気に入りがたくさんいるが・・・・・・後宮事態はそんなに高くないはずだ・・・・・・。」
八人は息を切らしながら一度休憩をした。
「な、んで僕まで・・・・・・。」
占い師がつぶやくとカリアが「それは私もですから言っちゃダメですよ?姫さまと出会った時点でアウトなのです。」と笑うと今度はそれにファーラが反応した。
「それはどういうことだ?カリア。」
「いーえ。何も。」
「本当に会った時点でアウトだよなあ。」
とナハスと言う青年がため息を吐くとカリアは目を丸くしてからクスリと笑った。
「こら!二人とも!失礼じゃないか!?」
「あの、お取り込み中すみません、無効化できるか試してみますので、できましたらお静かに。」
ルルスが片目をつぶってかすかにほほ笑みながらシーッと人差し指を自分の唇にあてた。
その時、ファーラは二人の頭を拳でグリグリしているところだった。
「わ、わかった。」
ファーラがぎこちなくうなずくとルルスが歌いだした。
が、歌声はまわりに馴染むどころか帰ってくる。
「なんででしょう。歌が効きません。」
「なら俺が・・・・・・。」
そういって出てきたのはセタだった。
指で見えない決壊を描くと決壊をこぶしでたたいた。
ドワンッ!
空間が歪んだような音と何かが爆発したような音が鳴り響き、8人の目の前に屋上への出口があった。
「セタ・・・・・・今のは何ですか?」
「あれは以前にも使った。確か・・・・・・ルミアだったか?あの端末を体内に入れた不思議な国だ。あそこのまた別世界で俺が決壊を書いただろ。それで道ができた。今回も同じ。空間が歪んで道がないなら、歪みを直し、道を作る。」
「え、決壊ってただあの変な魔除けみたいなのをするものだとばかり・・・・・・。」
セタが説明し終わるとすぐにメイアがきょとんとして言葉を発する。
「まあ、それもあるけどな。それだけじゃないってことだよ。」
そういって王の部屋に乗り込んだ。
「く、くるな!」
王は自らのまわりを風を使って守っていた。
つまり、近づけば傷つく竜巻で360度守っていて風の鎧をまとっているのだ。
「何故だ!何故突破できた!」
「私達の力だからです。」
ルルスが冷静に答えた。
「ならなおさら何故突破できた!同じ力なら攻撃しても跳ね返すはずだろう!」
ルルスはそこでやっと歌が跳ね返った意味を知った。
つまり、今王が持っている力はルルスのカードなのだ。
だから自分の攻撃は自分の力には通用しなかった。
「それは私の力です。私が探してきたもの・・・・・・返していただけませんか?」
ルルスが近づくと王は更に大きな声を張り上げた。
「くるなぁぁあああ!!」
そして王の意志と疎通しているかのように竜巻も大きくなり、軽くルルスの頬に触れた風はルルスの頬に傷を付けた。
「ルルスちゃん!」
「ルルス!」
ミョンハクとメイアが叫ぶ中、セタはルルスを後ろ側に引いていた。
いきなり引っ張られたルルスはバランスを崩し、そのまま倒れこむ・・・・・・かと思ったがセタが支え、ルルスを見下ろしていた。
「セ・・・・・・?」
「危ないだろ。」
「な、なに言ってるんですか?いきなり引っ張るほうが危ないですよ。でも・・・・・・心配してくれて・・・・・・ありがとうございます・・・・・・。」
ルルスはそういうとこ顔を背けた。
するとさっきまでワナワナと震えていたファーラがもうたえきれぬとばかりに叫んだ。
「己の力でなく他者の力で王という地位と権力を手に入れ、さらにその権力で人を傷つけて、それでも尚この卑しい権力と地位を得たいというのか!!この卑怯者!!」
「ファーラ!」
ナハスが今にも竜巻に向かって突っ走って行こうとするファーラを押さえつけた。
「卑怯者!!卑怯者!!出てこい!己の力で戦え!」
すると竜巻から声が帰ってきた。
「煩いわ!じゃじゃ馬姫が!この力があればすべてがそろうのだ!全てが我手の内にそろうのだぞ!もはや一国にはとどまらぬ!世界征服だって可能なのだ!」
「他者の力でか!」
「よもや我力同然だ!」
まだ何か言いたげなファーラをルルスは首を振って黙らせると四人で話し合いに戻った。
「私の無効化は効きません。あの竜巻なら中心部分に空間があるでしょうが、上も下も壁ですから、おそらくこれを実行できるのはメイアちゃんしかいないかと・・・・・・。」
「わかった。私、頑張るよ!何をすればいい?」
「中心部分にいる人物を下から植物か何かで押さえ付けてください。可能なら縄でもかまいませんよ。」
「あ・・・・・・あれは・・・・・・怖かったからあまりやりたくないけど・・・・・・頑張ってみるね。」
そういってメイアは竜巻に向かって立つと影の呪文を唱えた。
「うわぁああ!」
いきなり悲鳴が聞こえ、竜巻がとまり、ポロリと床に何かが落ちた。
そこには自分の影に縛られている王の姿が会った。
「これが・・・・・・カード?」
ルルスが水晶のような紺色に近い球体を拾い上げるとそれはだんだんルルスの手の中で形を変えた。
「う、うわぁああ!」