97・タイターナ
「だ、誰だそなた達は。」
カルナに似た女性が声を上げた。確か、ファーラとか・・・・・・。
「本当にカルナさんそっくりだねー。」
「にしちゃあこっちのが大人っぽくないか?」
その言葉にルルスがぴくりと反応する。
まわりがおかしいと思ったからだ。
「そんなことよりこの空間はおかしいのでは?まわりの方々がどんどん歳をとっていかれます。」
「・・・・・・おまえ達が私が呼んだ・・・・・・戦士?」
「え?やだなあ。戦士なんて大それたものはしてないよ。」
メイアがヘニャと間が抜ける笑顔をすると、ファーラから事情を簡単に教えてもらった。
「・・・・・・そんなことが・・・・・・。」
ルルスちゃんの言ったとおりだ・・・・・・私利私欲のために使われた私達の力。
何より・・・・・・。
「メイアちゃん。1人で背負わないでくださいね?今、一瞬カードさえ飛び散らなければ・・・・・・と思ったでしょう?」
メイアは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニコッと笑った。
「・・・・・・そうだったね。そうだよね。」
二人の考えが重なる。
〔私達の考えは繋がっている。〕
ふっとルルスは考え込んだ。
でも、常時つながっていたらへたな事考えられませんね・・・・・・セタのことや、メイアちゃんのことも・・・・・・。
じっとメイアを見るが、メイアは作業に没頭していてルルスの考えに気付いた様子はない。
それはそうですわね。
考えが常に伝えられていたらプライバシーも何もあったもんじゃありませんし・・・・・・。
ルルスはなんとなく本をめくった。
そこには音の魔法がのっていた。
その魔法は歌。
歌いはじめたルルスの声は複数の周波になり、たくさんの人が歌っているように空間に反響していく。
何語で何を言っているのかルルス自身、よくわかってはいない。
ただ、そこの中心にカードが浮き上がってきた。
光のつぶのようなものが集まり、完璧な一枚のカードになると、ただ皆シンとしてルルスを見ていた。
「何・・・・・・したんだ?」
セタが茫然とし、カードはメイアの中に入り込んだ。
そのとたんにそこに元々いた人達の姿が元に戻ったのか、歳が幾分若返った。
「あ・・・・・・の、これは・・・・・・何かを無効化させる音を使った魔法です・・・・・・。」
ルルスは本とセタを行き交いするように眺めながら言った。
「へえ。お前にもすげえ能力があったんだな。」
のんきにミョンハクが言うと、ミョンハクはいきなり剣を抜き出し、扉の近くにいたルルスに刃先を向けた。
「え・・・・・・?」
一瞬何かに重なった映像にルルスは驚き、立ち尽くしてしまった。
そんなルルスを横目にミョンハクは剣を振り下ろした。
ルルスは強く目を閉じた。
ああ・・・・・・私、死んじゃうんですかね・・・・・・。
でも何かが思いっきり壊れた音以外特に何もない。
ルルスはそっと目を開けた。
「ミョンハク君!危ないでしょ!人がいる方向には剣を振り回さないの!」
「出口確保しただけじゃねぇか。」
「むくれないの!」
メイアがミョンハクを怒っているという不思議な光景を目のあたりにしながらセタがルルスの腕を取った。
「キャッ!?」
「腕に傷ついてないか?ああ・・・・・・掠り傷だな。血も出てないみたいだし。」
「え・・・・・・?」
ルルスは自分の腕を見ると確かに少しだけ皮が向けている部分がある。
「え?って・・・・・・あいつが壊した扉の一部があたっただろ?」
「心配・・・・・・・してくださったんですか?」
ルルスは頬を赤らめた。
「仲間・・・・・・だからな。」
セタはすぐにルルスの腕を離すと顔を少しそらした。
「ありがとう・・・・・・・ございます。」
最後まで言い切る前に無性に恥ずかしくなったルルスは下を向いた。
この章と関連小説の『その先に』です↓
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興味がある方は除いてみてください。
ですが、ベタ甘恋愛小説っていう感じなので……少女マンガ風?が苦手な方は見ないほうがいいかもしれません。